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第21幕 卒業旅行は終わりで始まり
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「ヤナ……その、大丈夫か?」
「大丈夫なように見える?」
「悠斗は黙ってろ! 別に由良りんが悪い訳じゃないよ。俺が無闇に行動したから……心配掛けてごめんな?」
「いや……元はといえば俺が変なこと言ったせいだろ? 危ないことに巻き込みたかった訳じゃないけどよ。……マジでどう謝罪したら……。ユウも……すまん!」
深々と身体を折り頭を下げる由良りん。切っ掛けにはなったにせよ、自分の不注意が大半を占めているのだ。
「ちょっと由良りん、頭を上げてよ。俺がいけないんだ。由良りんは悪くない。それに勘違いしていたのも俺だし。由良りんが海に飛び込む訳ないのに勘違いしちゃって。早とちりもいいところだよな。へへっ……へ?」
顔を上げる由良りんは、気不味そうにしながら目を泳がせていた。
「聞いてよ瀬菜。カナちゃん頭冷やしたかったんだって。海開きも始まっていないのに飛び込むなんて馬鹿だよね?」
「馬鹿で悪かったな! ちょっと潜っただけだ! まさかヤナが追いかけて来るなんて思わねぇだろ!」
ジロっと悠斗に睨まれると、由良りんはバツが悪そうに、それ以上なにも言わず眉根を下げていた。
「……もういいでしょ瀬菜。手当早くしないと。カナちゃんは反省文の続き書いていて」
由良りんは悠斗に視線を移すとなにも言わず素直に頷いた。まさか反省文を書かせているとは思っても居らず、二人のやり取りにポカンとする俺だった。
俺は背負われたまま直接浴室へと連れて行かれた。
ヴィラの浴室は部屋にはなく、共同の浴室だけだった。その分温泉のように広々とし、常にお湯が張られている。
白を基調にした清潔感のある空間に、埃や砂が排水口に流れていった。
「──うッ」
「染みる? 少し我慢して? 傷は小さいけど結構深いね。お風呂出たら消毒もしないと」
「……うん。悠斗、シャツ……ごめん」
「シャツは洗えば落ちるよ。瀬菜に傷が残るほうが問題。出血が多かったから心配だったけど、もう止血しているし大丈夫そうだね?」
「ありがとう……ございます」
「クスッ、なんで敬語? けど謝ったからっておしまいじゃないけど」
「うん……反省はちゃんとする」
「反省? それで済むはずないでしょ? お仕置きはちゃんと受けてもらうからね」
全身を汲まなく清められると浴槽まで抱え上げられる。縁すれすれのお湯が溢れ床に広がり流れだす。適度な温度にやっとこ身体の緊張が解れていく。あの小さな壊れそうな小屋でのことが現実だとは思えなくなりそうだ。
「大丈夫なように見える?」
「悠斗は黙ってろ! 別に由良りんが悪い訳じゃないよ。俺が無闇に行動したから……心配掛けてごめんな?」
「いや……元はといえば俺が変なこと言ったせいだろ? 危ないことに巻き込みたかった訳じゃないけどよ。……マジでどう謝罪したら……。ユウも……すまん!」
深々と身体を折り頭を下げる由良りん。切っ掛けにはなったにせよ、自分の不注意が大半を占めているのだ。
「ちょっと由良りん、頭を上げてよ。俺がいけないんだ。由良りんは悪くない。それに勘違いしていたのも俺だし。由良りんが海に飛び込む訳ないのに勘違いしちゃって。早とちりもいいところだよな。へへっ……へ?」
顔を上げる由良りんは、気不味そうにしながら目を泳がせていた。
「聞いてよ瀬菜。カナちゃん頭冷やしたかったんだって。海開きも始まっていないのに飛び込むなんて馬鹿だよね?」
「馬鹿で悪かったな! ちょっと潜っただけだ! まさかヤナが追いかけて来るなんて思わねぇだろ!」
ジロっと悠斗に睨まれると、由良りんはバツが悪そうに、それ以上なにも言わず眉根を下げていた。
「……もういいでしょ瀬菜。手当早くしないと。カナちゃんは反省文の続き書いていて」
由良りんは悠斗に視線を移すとなにも言わず素直に頷いた。まさか反省文を書かせているとは思っても居らず、二人のやり取りにポカンとする俺だった。
俺は背負われたまま直接浴室へと連れて行かれた。
ヴィラの浴室は部屋にはなく、共同の浴室だけだった。その分温泉のように広々とし、常にお湯が張られている。
白を基調にした清潔感のある空間に、埃や砂が排水口に流れていった。
「──うッ」
「染みる? 少し我慢して? 傷は小さいけど結構深いね。お風呂出たら消毒もしないと」
「……うん。悠斗、シャツ……ごめん」
「シャツは洗えば落ちるよ。瀬菜に傷が残るほうが問題。出血が多かったから心配だったけど、もう止血しているし大丈夫そうだね?」
「ありがとう……ございます」
「クスッ、なんで敬語? けど謝ったからっておしまいじゃないけど」
「うん……反省はちゃんとする」
「反省? それで済むはずないでしょ? お仕置きはちゃんと受けてもらうからね」
全身を汲まなく清められると浴槽まで抱え上げられる。縁すれすれのお湯が溢れ床に広がり流れだす。適度な温度にやっとこ身体の緊張が解れていく。あの小さな壊れそうな小屋でのことが現実だとは思えなくなりそうだ。
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