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第21幕 卒業旅行は終わりで始まり
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どれぐらい経っただろうか。
相変わらず外は激しい天候だ。暗闇に目が馴れると、辺りがぼんやりと認識できるようになる。
少し埃っぽい小屋の中は大きな網が丸められ、浮きが無造作に置かれている。灯りになりそうなものを手探りで探すが、手に触れるのは散乱した空き缶や瓶といったゴミばかり。
手は埃に塗れ釣り糸が指や足に絡まり、仕舞には釣り針がザクッと刺さってしまう始末。
「──ッ……痛ッ! うぅ……最悪だ」
返し針が皮膚に深く刺さってしまい、痛みで涙腺がジーンと緩んでしまう。脳天にポツッと雫が垂れ、天井を見上げた。
断続的にポツポツと雫は天井から落ち、頬や肩に水滴が滲んでいく。よく見ると木板の床は濡れ雨水が染みを作っていた。
ゴォーーっと風が嵐のように唸り声を上げ、ビクッと身体を竦ませさらに小さく丸まった。ピチャピチャと雨漏りも広がり、入口付近は水浸しになっている。冷静になろうとしても恐怖が増してくる。緊張と不安がピークに達しそうになると、強い風に押されたのか扉がバンッ! と開き激しい雨を室内に迎え入れた。
「わぁーー! 小屋が壊れちゃうよー!」
急いで扉を閉め押さえつけると、よく報道されるニュースがちらりと頭を過ぎる。
『昨夜未明十代の男性が発見され、心肺停止で…………』
──それっ!
俺ーーーー‼︎
「わぁぁーー! こんなところで死にたくない‼︎」
叫んだのと同時に、ドンドンドン‼︎ と強く扉が叩かれ、ザァーーッとバケツをひっくり返したような激しい雨が打ちつけられていた。
「ヒッィィーー! ごめんなさい、ごめんなさい! もう悪いことしないから許してよ~‼︎」
風に震える空に自分を呼ぶような錯覚まで聞こえだし、まるであちらの世界に呼ばれているような気がしてしまう。
「うわぁぁーー! 俺を呼ぶなぁーー!」
ヤバイ……俺、もうダメなのか⁉︎
怖い怖い怖いーーッ‼︎
最初こそ強がっていたが、恐怖しか与えてくれないこの状況に、俺の精神は体力と合わせて極限状態に陥っていた。
ドンドンドン! ドンドンドン! ……っと、大きな音が鳴るたびに心臓が破裂しそうだ。ヒクヒクと声にならない嗚咽をあげ扉を背に縮こまった。
「……うぅ……」
ハッとして耳を塞いでいた手のひらを外す。バサバサとなにかが舞う音と、人が叫ぶような声が一瞬聞こえた。物音を立てないように静止し、雨音と風の音をかき分けるように耳をそばだてた。
「──なッ‼︎」
「……幻聴じゃ……ない⁇」
やはり人の声だ。あの世からの使者ではどうやらないらしい。段々近づいてくる気配に、冷えた心がジワジワと熱くなり、震える身体を鼓舞してゆっくりと立ち上がった。
相変わらず外は激しい天候だ。暗闇に目が馴れると、辺りがぼんやりと認識できるようになる。
少し埃っぽい小屋の中は大きな網が丸められ、浮きが無造作に置かれている。灯りになりそうなものを手探りで探すが、手に触れるのは散乱した空き缶や瓶といったゴミばかり。
手は埃に塗れ釣り糸が指や足に絡まり、仕舞には釣り針がザクッと刺さってしまう始末。
「──ッ……痛ッ! うぅ……最悪だ」
返し針が皮膚に深く刺さってしまい、痛みで涙腺がジーンと緩んでしまう。脳天にポツッと雫が垂れ、天井を見上げた。
断続的にポツポツと雫は天井から落ち、頬や肩に水滴が滲んでいく。よく見ると木板の床は濡れ雨水が染みを作っていた。
ゴォーーっと風が嵐のように唸り声を上げ、ビクッと身体を竦ませさらに小さく丸まった。ピチャピチャと雨漏りも広がり、入口付近は水浸しになっている。冷静になろうとしても恐怖が増してくる。緊張と不安がピークに達しそうになると、強い風に押されたのか扉がバンッ! と開き激しい雨を室内に迎え入れた。
「わぁーー! 小屋が壊れちゃうよー!」
急いで扉を閉め押さえつけると、よく報道されるニュースがちらりと頭を過ぎる。
『昨夜未明十代の男性が発見され、心肺停止で…………』
──それっ!
俺ーーーー‼︎
「わぁぁーー! こんなところで死にたくない‼︎」
叫んだのと同時に、ドンドンドン‼︎ と強く扉が叩かれ、ザァーーッとバケツをひっくり返したような激しい雨が打ちつけられていた。
「ヒッィィーー! ごめんなさい、ごめんなさい! もう悪いことしないから許してよ~‼︎」
風に震える空に自分を呼ぶような錯覚まで聞こえだし、まるであちらの世界に呼ばれているような気がしてしまう。
「うわぁぁーー! 俺を呼ぶなぁーー!」
ヤバイ……俺、もうダメなのか⁉︎
怖い怖い怖いーーッ‼︎
最初こそ強がっていたが、恐怖しか与えてくれないこの状況に、俺の精神は体力と合わせて極限状態に陥っていた。
ドンドンドン! ドンドンドン! ……っと、大きな音が鳴るたびに心臓が破裂しそうだ。ヒクヒクと声にならない嗚咽をあげ扉を背に縮こまった。
「……うぅ……」
ハッとして耳を塞いでいた手のひらを外す。バサバサとなにかが舞う音と、人が叫ぶような声が一瞬聞こえた。物音を立てないように静止し、雨音と風の音をかき分けるように耳をそばだてた。
「──なッ‼︎」
「……幻聴じゃ……ない⁇」
やはり人の声だ。あの世からの使者ではどうやらないらしい。段々近づいてくる気配に、冷えた心がジワジワと熱くなり、震える身体を鼓舞してゆっくりと立ち上がった。
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