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第21幕 卒業旅行は終わりで始まり
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「由良りーん! ……本当にどこ行っちゃったのかな……」
最後に見た場所辺りまで駆け寄るが、見渡しても居らずキョロキョロと視線を彷徨わせる。さらに先へと歩きながら名前を呼ぶが、返事はなく闇だけが広がる。
黒い波がザザーっと風に煽られ荒く音を立てている。もしかして海にでも……と嫌な予感が頭を過っていく。
不安を抱えている俺に追い打ちを掛けるように、ポツリと頬に空から水滴が落ちてきた。
「……なんでだよ。さっきまで晴れていたのに……」
空は星がすっかり姿を隠し、ボトボトと大粒の雨が降り注いでくる。ドライバーさんが、沖縄の天気は急に変わると話していたのを思い出す。
振り返り戻ろうとするが、ヴィラの灯りは見えず暗い風景が広がるばかり。方向をすっかり見失い、激しくなっていく雨と暗闇にサーッと青くなってしまう。
気付けばかなり歩を進めてしまっていたようだ。ひとまず雨宿りと、視線を向けると小さな小屋がぼんやりと見え、上着で雨を遮りながら走りそこへ向かった。
ギーギーと軋むドアを開け中に入ると、網や釣り竿などの道具が置かれた作業小屋のようだった。
鍵が掛けられていなくてよかった。不法侵入になってしまうが、雨が止むまで雨宿りさせてもらおうと、濡れた上着を頭から取り水気を払った。
曇った窓ガラスが風でガタガタと音を立てる。外は時折強い風が吹き、横殴りの雨が小屋のあちこちを叩いていた。
「……どうしよう……」
由良りんのことも気掛かりだが、自分のことも問題だ。飛び出して来てしまったことで、悠斗たちも心配しているに違いない。
スマホを取り出し連絡を入れようとすると、明るい画面が電池のマークを点滅させながらプツリと消えてしまった。
「わっ! 最後の灯火がぁぁーー!」
へにゃへにゃと床に尻をつき、ガクリと項垂れる。
こんなに不運が続くなど思ってもいなかった。灯りがない状況では下手に動けば余計に危険だ。
せめて雨が止むまではここに居ようと、震える身体を抱き寄せ小さく丸まった。
……由良りんはどこに行ったんだ。
戻っていればいいけど……。
けど……自分が戻れなくなるとか迷子の子供かよ。
雨で濡れた衣服が身体に張りつき体温を奪っていく。寒くて寒くて溜らない。
手のひらで肌を擦り誤魔化すと、ほんのり体温が戻ったような気もしないでもない。大丈夫、大丈夫と何度も心で呟き、今にも折れそうな自分自身を励ました。
最後に見た場所辺りまで駆け寄るが、見渡しても居らずキョロキョロと視線を彷徨わせる。さらに先へと歩きながら名前を呼ぶが、返事はなく闇だけが広がる。
黒い波がザザーっと風に煽られ荒く音を立てている。もしかして海にでも……と嫌な予感が頭を過っていく。
不安を抱えている俺に追い打ちを掛けるように、ポツリと頬に空から水滴が落ちてきた。
「……なんでだよ。さっきまで晴れていたのに……」
空は星がすっかり姿を隠し、ボトボトと大粒の雨が降り注いでくる。ドライバーさんが、沖縄の天気は急に変わると話していたのを思い出す。
振り返り戻ろうとするが、ヴィラの灯りは見えず暗い風景が広がるばかり。方向をすっかり見失い、激しくなっていく雨と暗闇にサーッと青くなってしまう。
気付けばかなり歩を進めてしまっていたようだ。ひとまず雨宿りと、視線を向けると小さな小屋がぼんやりと見え、上着で雨を遮りながら走りそこへ向かった。
ギーギーと軋むドアを開け中に入ると、網や釣り竿などの道具が置かれた作業小屋のようだった。
鍵が掛けられていなくてよかった。不法侵入になってしまうが、雨が止むまで雨宿りさせてもらおうと、濡れた上着を頭から取り水気を払った。
曇った窓ガラスが風でガタガタと音を立てる。外は時折強い風が吹き、横殴りの雨が小屋のあちこちを叩いていた。
「……どうしよう……」
由良りんのことも気掛かりだが、自分のことも問題だ。飛び出して来てしまったことで、悠斗たちも心配しているに違いない。
スマホを取り出し連絡を入れようとすると、明るい画面が電池のマークを点滅させながらプツリと消えてしまった。
「わっ! 最後の灯火がぁぁーー!」
へにゃへにゃと床に尻をつき、ガクリと項垂れる。
こんなに不運が続くなど思ってもいなかった。灯りがない状況では下手に動けば余計に危険だ。
せめて雨が止むまではここに居ようと、震える身体を抱き寄せ小さく丸まった。
……由良りんはどこに行ったんだ。
戻っていればいいけど……。
けど……自分が戻れなくなるとか迷子の子供かよ。
雨で濡れた衣服が身体に張りつき体温を奪っていく。寒くて寒くて溜らない。
手のひらで肌を擦り誤魔化すと、ほんのり体温が戻ったような気もしないでもない。大丈夫、大丈夫と何度も心で呟き、今にも折れそうな自分自身を励ました。
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