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第20.5幕 二人の卒業式《悠斗side》
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「……質悪っ」
「えっ? なに? でも、違うよ! ネクタイくれって言われて……知らねぇのって……教えてくれたみたいな? ほら、からかわれただけだし!」
おそらくこれはカナちゃんから俺へ対しての、無言の圧力だ。こうなることを予測して、仕掛けてきたに違いない。
「からかう? 瀬菜は鈍いからね」
フーッと耳元に息を吹き掛けると、ビクッと身体を震わせる。
「ンッ……!」
「身体は敏感なのにね? ネクタイくれよ。俺ならお前を泣かさねぇ」
きっとこんな風に、告白でもしたのだろう。いつもの俺ならこんなにも、カナちゃんに対して嫉妬心など湧かない。想像しただけで怒りが湧いてきてしまう。
瀬菜に目隠しをしておいて正解だった。こんな嫉妬心丸出しの顔を見られなくて済んだのだから。
「……好きだ」
腹が立つ。自分で言っておいてなんだが、そんな風に言われて、瀬菜はどんな反応をしたのだろうか。それを見たいがために、自分が発する言葉にイライラするなどなんとも滑稽だ。
「あのさ……悠斗……」
「ん?」
「もしかしなくても、それって由良りんの真似?」
「こんな風に言われたんじゃないの?」
「まさか、それくれ。たったひと言だよ。なぜか聞いたらさ、大切な人にあげるものだって教えてくれて。だから……それじゃもう、予約済だよって言ったんだ」
そう呟きながら、口元を緩めて頬を紅く染める瀬菜。
「だいたいさ、悠斗の声でモノマネされても、悠斗に言われてるとしか思えなくて……なんだかこそばゆいよ。へへっ……」
これだから溜まったものじゃない。無自覚で天然タラシは、天性のものなのだろうか。
俺の怒りなど、些細な言葉で跳ね除けてしまうのだ。
「んむっ──ッ! ンッ……ふぁっンッ……」
気づけば唇を貪るように塞いでいた。鼻を抜ける甘い鳴き声に誘われると、口腔を嬲るように舌を絡め無遠慮に占領する。
触れる舌が熱く、唾液を纏わせ静かに水音を弾ませていく。最初こそ両腕に力を込めて拒んでいたが、次第にくたりと緩み出す。
まだ堪能していたいと思いながらも、ゆっくりと交わりを解いていった。
瞼を開けると、ふっくらとした唇がテラリと潤い、グロスを塗ったような濃いピンク色をしている。快感に痺れているのか、唇は閉じることなく震え、いやらしく舌先を覗かせていた。
「……これ、俺がもらっていいの?」
腕を解放し腰を抱き寄せると、ネクタイの上から瞼にキスを落とす。探るような腕が俺の首に巻かれると、瀬菜もまた肩に顔を埋めながらスリスリと、子猫のように擦り寄ってきた。
「……いいけど……今は取らないで」
「どうして?」
「だって…………俺、きっとエロイ顔してる」
「えっ? なに? でも、違うよ! ネクタイくれって言われて……知らねぇのって……教えてくれたみたいな? ほら、からかわれただけだし!」
おそらくこれはカナちゃんから俺へ対しての、無言の圧力だ。こうなることを予測して、仕掛けてきたに違いない。
「からかう? 瀬菜は鈍いからね」
フーッと耳元に息を吹き掛けると、ビクッと身体を震わせる。
「ンッ……!」
「身体は敏感なのにね? ネクタイくれよ。俺ならお前を泣かさねぇ」
きっとこんな風に、告白でもしたのだろう。いつもの俺ならこんなにも、カナちゃんに対して嫉妬心など湧かない。想像しただけで怒りが湧いてきてしまう。
瀬菜に目隠しをしておいて正解だった。こんな嫉妬心丸出しの顔を見られなくて済んだのだから。
「……好きだ」
腹が立つ。自分で言っておいてなんだが、そんな風に言われて、瀬菜はどんな反応をしたのだろうか。それを見たいがために、自分が発する言葉にイライラするなどなんとも滑稽だ。
「あのさ……悠斗……」
「ん?」
「もしかしなくても、それって由良りんの真似?」
「こんな風に言われたんじゃないの?」
「まさか、それくれ。たったひと言だよ。なぜか聞いたらさ、大切な人にあげるものだって教えてくれて。だから……それじゃもう、予約済だよって言ったんだ」
そう呟きながら、口元を緩めて頬を紅く染める瀬菜。
「だいたいさ、悠斗の声でモノマネされても、悠斗に言われてるとしか思えなくて……なんだかこそばゆいよ。へへっ……」
これだから溜まったものじゃない。無自覚で天然タラシは、天性のものなのだろうか。
俺の怒りなど、些細な言葉で跳ね除けてしまうのだ。
「んむっ──ッ! ンッ……ふぁっンッ……」
気づけば唇を貪るように塞いでいた。鼻を抜ける甘い鳴き声に誘われると、口腔を嬲るように舌を絡め無遠慮に占領する。
触れる舌が熱く、唾液を纏わせ静かに水音を弾ませていく。最初こそ両腕に力を込めて拒んでいたが、次第にくたりと緩み出す。
まだ堪能していたいと思いながらも、ゆっくりと交わりを解いていった。
瞼を開けると、ふっくらとした唇がテラリと潤い、グロスを塗ったような濃いピンク色をしている。快感に痺れているのか、唇は閉じることなく震え、いやらしく舌先を覗かせていた。
「……これ、俺がもらっていいの?」
腕を解放し腰を抱き寄せると、ネクタイの上から瞼にキスを落とす。探るような腕が俺の首に巻かれると、瀬菜もまた肩に顔を埋めながらスリスリと、子猫のように擦り寄ってきた。
「……いいけど……今は取らないで」
「どうして?」
「だって…………俺、きっとエロイ顔してる」
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