王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
582 / 716
第20.5幕 二人の卒業式《悠斗side》

03

しおりを挟む
「……質悪っ」
「えっ? なに? でも、違うよ! ネクタイくれって言われて……知らねぇのって……教えてくれたみたいな? ほら、からかわれただけだし!」

 おそらくこれはカナちゃんから俺へ対しての、無言の圧力だ。こうなることを予測して、仕掛けてきたに違いない。

「からかう? 瀬菜は鈍いからね」

 フーッと耳元に息を吹き掛けると、ビクッと身体を震わせる。

「ンッ……!」
「身体は敏感なのにね? ネクタイくれよ。俺ならお前を泣かさねぇ」

 きっとこんな風に、告白でもしたのだろう。いつもの俺ならこんなにも、カナちゃんに対して嫉妬心など湧かない。想像しただけで怒りが湧いてきてしまう。
 瀬菜に目隠しをしておいて正解だった。こんな嫉妬心丸出しの顔を見られなくて済んだのだから。

「……好きだ」

 腹が立つ。自分で言っておいてなんだが、そんな風に言われて、瀬菜はどんな反応をしたのだろうか。それを見たいがために、自分が発する言葉にイライラするなどなんとも滑稽だ。

「あのさ……悠斗……」
「ん?」
「もしかしなくても、それって由良りんの真似?」
「こんな風に言われたんじゃないの?」
「まさか、それくれ。たったひと言だよ。なぜか聞いたらさ、大切な人にあげるものだって教えてくれて。だから……それじゃもう、予約済だよって言ったんだ」

 そう呟きながら、口元を緩めて頬を紅く染める瀬菜。

「だいたいさ、悠斗の声でモノマネされても、悠斗に言われてるとしか思えなくて……なんだかこそばゆいよ。へへっ……」

 これだから溜まったものじゃない。無自覚で天然タラシは、天性のものなのだろうか。
 俺の怒りなど、些細な言葉で跳ね除けてしまうのだ。

「んむっ──ッ! ンッ……ふぁっンッ……」

 気づけば唇を貪るように塞いでいた。鼻を抜ける甘い鳴き声に誘われると、口腔を嬲るように舌を絡め無遠慮に占領する。
 触れる舌が熱く、唾液を纏わせ静かに水音を弾ませていく。最初こそ両腕に力を込めて拒んでいたが、次第にくたりと緩み出す。
 まだ堪能していたいと思いながらも、ゆっくりと交わりを解いていった。
 瞼を開けると、ふっくらとした唇がテラリと潤い、グロスを塗ったような濃いピンク色をしている。快感に痺れているのか、唇は閉じることなく震え、いやらしく舌先を覗かせていた。

「……これ、俺がもらっていいの?」

 腕を解放し腰を抱き寄せると、ネクタイの上から瞼にキスを落とす。探るような腕が俺の首に巻かれると、瀬菜もまた肩に顔を埋めながらスリスリと、子猫のように擦り寄ってきた。

「……いいけど……今は取らないで」
「どうして?」
「だって…………俺、きっとエロイ顔してる」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...