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第20幕 最後の一日
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ホームルームが終わり、教室内は一気にザワザワと揺れる。二年間一緒に過ごした仲間にひと通り挨拶を済ますと、悠斗に連れられ教室をあとにした。
「立花先輩!」
「えっと……ごめん、急いでて……」
「あっ、あの! これだけでも受け取ってください!」
一体コレで何度目だろうか。
その光景に仕方ないと思いつつも、ため息を自然に零してしまう。悠斗が俺に付き合って欲しかったのは、告白タイムの抑制だったのだろうか。そう思えるほど教室を出てから呼び止めてくる同級生や下級生の女の子があとを絶たない。贈りものもラブレターであろう手紙も、悠斗は丁重に断っていく。ボタンをくださいと頬を染める女子生徒を見ながら、こんなことなら俺が先に全部もらっておけばよかったかと、悠斗の胸元をブスッとしながら睨んでいた。
「……瀬菜、顔が怖いよ?」
「……付き合って欲しいって、俺、告白避けじゃないぞ」
「そんな訳ないでしょ? 意地悪言わないでよ」
眉根を下げ申し訳なさそうにしばらく考え込む悠斗は、ニコッと俺に笑い掛けた。
「なっ、なんだよ」
「ううん、可愛いなって」
「その笑顔、怪しいぞ!」
「そうかな? ねぇ、もう今日で卒業だし、堂々と手を繋ごうよ」
爽やかに微笑む悠斗は、俺に手を差し伸べてくる。要はこの際だからカミングアウトしようよ……ということなのだろう。その申し出に両手を広げ、「いや、いい! 遠慮しとく!」とバタバタと、腕を左右に振りながら拒否を示す。
そんな俺の態度にムッとしたのか、腕を掴むとグッと引き寄せられ、視界が傾きフワリと身体が宙に浮いた。
……えっ……なぜ床が見える……。
「遠慮しないで? さっ、行こうか」
「ば、ちょっ! ふざけんな!」
「ふざけてもない。あんまり暴れると危ないよ?」
軽々と肩に担がれてました……。
姫抱っこでないだけましだけど、コレはコレでおかしいだろ‼︎
──と、悠斗の背中をパスンパスンと叩くが、お構いなしに廊下を進んでいく。
「あ、あの! 立花君! 受け取って欲しいものが……」
「あっ、ごめん。今手が離せなくて。また今度ね」
今度などない訳で……。こんな状況で声を掛けてくる女子も凄いが、悠斗の交わしかたも年季が入っている。自分が担がれ見世物状態だが、なぜかおかしくて堪らない。
「ぷはっ! 酷えヤツ!」
「あーそうやって笑って! お尻ペンペンするよ?」
「やめろ! それでなくても頭に血が上って苦しいんだよ~」
「ふふっ、ほら、無事到着」
「無事なモノか……」
「立花先輩!」
「えっと……ごめん、急いでて……」
「あっ、あの! これだけでも受け取ってください!」
一体コレで何度目だろうか。
その光景に仕方ないと思いつつも、ため息を自然に零してしまう。悠斗が俺に付き合って欲しかったのは、告白タイムの抑制だったのだろうか。そう思えるほど教室を出てから呼び止めてくる同級生や下級生の女の子があとを絶たない。贈りものもラブレターであろう手紙も、悠斗は丁重に断っていく。ボタンをくださいと頬を染める女子生徒を見ながら、こんなことなら俺が先に全部もらっておけばよかったかと、悠斗の胸元をブスッとしながら睨んでいた。
「……瀬菜、顔が怖いよ?」
「……付き合って欲しいって、俺、告白避けじゃないぞ」
「そんな訳ないでしょ? 意地悪言わないでよ」
眉根を下げ申し訳なさそうにしばらく考え込む悠斗は、ニコッと俺に笑い掛けた。
「なっ、なんだよ」
「ううん、可愛いなって」
「その笑顔、怪しいぞ!」
「そうかな? ねぇ、もう今日で卒業だし、堂々と手を繋ごうよ」
爽やかに微笑む悠斗は、俺に手を差し伸べてくる。要はこの際だからカミングアウトしようよ……ということなのだろう。その申し出に両手を広げ、「いや、いい! 遠慮しとく!」とバタバタと、腕を左右に振りながら拒否を示す。
そんな俺の態度にムッとしたのか、腕を掴むとグッと引き寄せられ、視界が傾きフワリと身体が宙に浮いた。
……えっ……なぜ床が見える……。
「遠慮しないで? さっ、行こうか」
「ば、ちょっ! ふざけんな!」
「ふざけてもない。あんまり暴れると危ないよ?」
軽々と肩に担がれてました……。
姫抱っこでないだけましだけど、コレはコレでおかしいだろ‼︎
──と、悠斗の背中をパスンパスンと叩くが、お構いなしに廊下を進んでいく。
「あ、あの! 立花君! 受け取って欲しいものが……」
「あっ、ごめん。今手が離せなくて。また今度ね」
今度などない訳で……。こんな状況で声を掛けてくる女子も凄いが、悠斗の交わしかたも年季が入っている。自分が担がれ見世物状態だが、なぜかおかしくて堪らない。
「ぷはっ! 酷えヤツ!」
「あーそうやって笑って! お尻ペンペンするよ?」
「やめろ! それでなくても頭に血が上って苦しいんだよ~」
「ふふっ、ほら、無事到着」
「無事なモノか……」
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