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第17幕 上級生と下級生 〜高校三年生編〜
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「柳先輩、普段どういったケアをしているんです? 赤ちゃん顔負けですね」
「……普通に食べて普通に生きているだけだ」
「瀬菜の場合、フェロモンじゃない? ほら、なんせ毎日毎日エキス注がれているし♪」
「実千流さん、そういう言い方誤解が生まれるでしょが……。あーー! もう‼ いい加減にしろよ‼」
俺は今、両側から頬をムニムニと弄られている。お尻や胸を揉まれる訳ではないので、俺も好きなようにさせているのだが……この微妙な触り具合は、なんとも眠気を誘う。
通川君が生徒会に入り会長を引き継ぐ代わりの要望は、俺の柔らかな部位を好きな時に触らせて欲しい……という、なんのメリットもないものだった。
もっと酷い要望をされると思っていた実千流は、悠斗の静止も無視しサラリとその要望を飲んだらしい。仲間だと親友だと思っていた俺は、こうして自身の部位を売られ、実千流に裏切られた気分だった。
そして森山君と悠斗も、なにか言いたそうにしながら静かに見守るだけだった。
……イヤ……触られてるの俺なんだが……。
なぜ本人不在でこんなことを決めているんだ。
俺ってなんなん……。
そんな訳で暇さえあればこうしてフニフニとされてしまう始末。ストレス解消のアイテムではないのだが。まぁ、後継者ができたのは喜ばしい。
「柳先輩……ごめんなさい……俺のせいで……」
「いや、森山のせいじゃないだろ。お前、この間から謝ってばかりだな」
「僕が勝手に……本当にごめんなさい。先輩を困らせるはずじゃ……」
「へへっ、まぁこれで俺と実千流は通い妻を卒業できたんだ。悪いことばかりじゃないよ」
「でも、先輩……生贄みたいに……」
「えっ⁉ 俺、生贄なの?」
俺の両手をギュッと握りながら、シュンと項垂れ謝る森山君。こうなったのは彼のせいではないのだ。「減るもんじゃやいし、大丈夫だよ」と笑い掛けると、「本当に嫌だったら言ってくださいね」とペコリとお辞儀をしていた。
森山君が頭を下げると、身長差で見えなかったワイシャツの襟の辺りに目がいってしまう。うなじの辺りに傷のようなものがチラリ。
「……森山、お前ここどうした?」
「えっ? どこです?」
「ここだよ。なんか怪我でもしたのか?」
自分の首でここら辺と指差すと、森山君の顔が真っ青になっていく。もしや怪我に気づいていなかったのか? と手を伸ばすと、今度は真っ赤になって俺から距離をとってしまった。
「ここここっ! これは! 犬に噛まれて‼」
「えっ! 犬って! 大事件じゃんか!」
騒ぐ俺達に、背後から悠斗と通川君が忍び寄る。
「犬って……お前もっとまともな嘘をつけよ」
「あっ、イヤ……本当のことだろ!」
「瀬菜、森山君は大丈夫だから、あっちでお茶にしよ?」
「えっ? 犬に噛まれて血出てるかもしれないのに?」
「柳先輩、保健室に行くんで俺たち今日は帰ります」
「あっ、うん! それがいい! 森山、お大事にな!」
「えっ、やっ俺……、通川! は、離せッ!」
「よく見てもらいなね。通川君、森山君のこと頼んだよ」
通川君が森山君を襟元を掴み、引きずるように生徒会室を出て行った。
「大丈夫かな……」
「まぁ、ああ見えて同級生同士仲がいいのかもよ?」
「ならいいけど……」
「うん、今日は紅茶なににする?」
「んーー、アップルティーかなー。毒は入れるなよ!」
「ふふっ、愛情だけを注ぐよ」
いつも通りの生徒会室は、今日もこうして平和に過ぎていく。一時はどうなるかと冷や冷やだったが、取り敢えず一件落着と言っていいだろうか。波乱を巻き込みながら新たな風がまた今年も吹き始めた。
「……普通に食べて普通に生きているだけだ」
「瀬菜の場合、フェロモンじゃない? ほら、なんせ毎日毎日エキス注がれているし♪」
「実千流さん、そういう言い方誤解が生まれるでしょが……。あーー! もう‼ いい加減にしろよ‼」
俺は今、両側から頬をムニムニと弄られている。お尻や胸を揉まれる訳ではないので、俺も好きなようにさせているのだが……この微妙な触り具合は、なんとも眠気を誘う。
通川君が生徒会に入り会長を引き継ぐ代わりの要望は、俺の柔らかな部位を好きな時に触らせて欲しい……という、なんのメリットもないものだった。
もっと酷い要望をされると思っていた実千流は、悠斗の静止も無視しサラリとその要望を飲んだらしい。仲間だと親友だと思っていた俺は、こうして自身の部位を売られ、実千流に裏切られた気分だった。
そして森山君と悠斗も、なにか言いたそうにしながら静かに見守るだけだった。
……イヤ……触られてるの俺なんだが……。
なぜ本人不在でこんなことを決めているんだ。
俺ってなんなん……。
そんな訳で暇さえあればこうしてフニフニとされてしまう始末。ストレス解消のアイテムではないのだが。まぁ、後継者ができたのは喜ばしい。
「柳先輩……ごめんなさい……俺のせいで……」
「いや、森山のせいじゃないだろ。お前、この間から謝ってばかりだな」
「僕が勝手に……本当にごめんなさい。先輩を困らせるはずじゃ……」
「へへっ、まぁこれで俺と実千流は通い妻を卒業できたんだ。悪いことばかりじゃないよ」
「でも、先輩……生贄みたいに……」
「えっ⁉ 俺、生贄なの?」
俺の両手をギュッと握りながら、シュンと項垂れ謝る森山君。こうなったのは彼のせいではないのだ。「減るもんじゃやいし、大丈夫だよ」と笑い掛けると、「本当に嫌だったら言ってくださいね」とペコリとお辞儀をしていた。
森山君が頭を下げると、身長差で見えなかったワイシャツの襟の辺りに目がいってしまう。うなじの辺りに傷のようなものがチラリ。
「……森山、お前ここどうした?」
「えっ? どこです?」
「ここだよ。なんか怪我でもしたのか?」
自分の首でここら辺と指差すと、森山君の顔が真っ青になっていく。もしや怪我に気づいていなかったのか? と手を伸ばすと、今度は真っ赤になって俺から距離をとってしまった。
「ここここっ! これは! 犬に噛まれて‼」
「えっ! 犬って! 大事件じゃんか!」
騒ぐ俺達に、背後から悠斗と通川君が忍び寄る。
「犬って……お前もっとまともな嘘をつけよ」
「あっ、イヤ……本当のことだろ!」
「瀬菜、森山君は大丈夫だから、あっちでお茶にしよ?」
「えっ? 犬に噛まれて血出てるかもしれないのに?」
「柳先輩、保健室に行くんで俺たち今日は帰ります」
「あっ、うん! それがいい! 森山、お大事にな!」
「えっ、やっ俺……、通川! は、離せッ!」
「よく見てもらいなね。通川君、森山君のこと頼んだよ」
通川君が森山君を襟元を掴み、引きずるように生徒会室を出て行った。
「大丈夫かな……」
「まぁ、ああ見えて同級生同士仲がいいのかもよ?」
「ならいいけど……」
「うん、今日は紅茶なににする?」
「んーー、アップルティーかなー。毒は入れるなよ!」
「ふふっ、愛情だけを注ぐよ」
いつも通りの生徒会室は、今日もこうして平和に過ぎていく。一時はどうなるかと冷や冷やだったが、取り敢えず一件落着と言っていいだろうか。波乱を巻き込みながら新たな風がまた今年も吹き始めた。
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