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第15幕 変わりゆく日常
08
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くだらない言い合いをしていると、扉がトントンとノックされた。
「悠くん、せっちゃん来てるんでしょ?」
部屋に入ってきたのは悠斗のお姉さんの美久さんだった。
「姉さん。来てるよ。勘違いして怒ってるんだ。姉さんから言ってあげて」
「うふふっ、せっちゃんらしいわね」
美久さんは俺の前に座ると、恥ずかしそうに言った。
「もっと早くに伝えれば良かったんだけど……。せっちゃん。私、結婚するの。順番は逆になっちゃったけど、子供を授かったの。産まれてきたら仲良くしてあげてね?」
美久さんはとても幸せそうな笑顔で、そう教えてくれた。
「……お、おめでとう‼」
「うん。ありがとう♪ それとこれ、参列してもらえたら嬉しいな。おじさんとおばさんの分もお願いしていい?」
差し出された清楚な白い封筒には、綺麗な文字で『柳瀬菜様』と書かれていた。
「わぁー! 俺、絶対行く!」
「お腹が大きくなる前にって、段取りに悠くんも巻き込んじゃって、最近せっちゃんとの時間取っちゃったから、実はちょっと気が引けてたの。ごめんね?」
どうやら悠斗がゆっくりできなかったのは、美久さんの妊娠が原因だったようだ。
めでたいことだ。理由が分かればなんの不満も湧かない。
「姉さん……それは言わなくていいよ」
「あら、ずっとそわそわしてたじゃない。早くお隣へ行きたがっていたのは誰?」
いずれ自分から説明をしようとしていたらしい悠斗は、不要なことまで言われてしまい、耳を真っ赤にして美久さんの言葉を遮った。
「ちょっと、もういいでしょ? そう思うなら早く二人にしてよ」
悠斗は美久さんの背中を気遣いながら押し、部屋の外へと見送った。
美久さんも成人済みで、いつ結婚してもおかしくはない。きっとおばさんに似て暖かい家庭を築くはずだ。
家族か……。
俺は……悠斗に……そんなぬくもりを……。
分かっていたことだが、目の前の封筒を見ていると嫌でも現実を突き付けられる。
そんなことを考えていると、戻った悠斗に腕を取られ膝の上に乗せられた。腰に腕を回されホールドされると、逃がさないとばかりに不適な笑顔を向けられた。
「瀬菜。今日は実千流ちゃんとご飯だったよね? どこで美久の話を聞いたの?」
「……ん? えっと……」
タラリと冷や汗をかいてしまう。口をへの字にして黙りを決める俺に、悠斗は無表情に目を細めた。
おじいさんに内緒と言われていたことを、すっかり失念していたのだ。無言を貫く俺に、悠斗はなおも尋ねてくる。
「まだ、安定期に入っていないから、身内にしか話してないんだよ? なんで瀬菜が知っているの?」
「……それは……その……えへへ♡」
「……そんな可愛くしてもダメだよ? 言わないなら……」
「わっ! ちょっ、擽ったいッよ~‼︎」
背中にひやりと悠斗の手のひらが忍び込むと、脇をすっと擽られる。仰け反る身体の隙間から、前側にもう片方の手が忍び込む。
くにゃりと乳首をつねられ、「ひゃんッ!」と高い声を上げてしまい、口を手のひらで覆った。
「エッチな声でどうしたの? ちょっと触っただけなのに。ああ、そうか……最近してなかったよね? お仕置きされたいから黙っているの?」
フルフルと横に首を振り、これ以上声を上げまいと、唇を噛み締める。それでも悠斗の愛撫はやまず、どんどん煽られる一方だ。
「気持ち良くて白状できない? 瀬菜は快感に弱いからな」
「ッ……弱く……ないもん」
「へぇー、そうなんだ。知らなかったな」
「──ひィッ! いたっ!」
乳首の先端をぎゅっとされ、痛みが身体中に響き渡る。それでも俺が口を割らないと感じ取った悠斗は、回した腕を緩め俺を解放した。
「……悠斗のいじめッ子!」
「瀬菜が強情だからでしょ?」
「悠くん、せっちゃん来てるんでしょ?」
部屋に入ってきたのは悠斗のお姉さんの美久さんだった。
「姉さん。来てるよ。勘違いして怒ってるんだ。姉さんから言ってあげて」
「うふふっ、せっちゃんらしいわね」
美久さんは俺の前に座ると、恥ずかしそうに言った。
「もっと早くに伝えれば良かったんだけど……。せっちゃん。私、結婚するの。順番は逆になっちゃったけど、子供を授かったの。産まれてきたら仲良くしてあげてね?」
美久さんはとても幸せそうな笑顔で、そう教えてくれた。
「……お、おめでとう‼」
「うん。ありがとう♪ それとこれ、参列してもらえたら嬉しいな。おじさんとおばさんの分もお願いしていい?」
差し出された清楚な白い封筒には、綺麗な文字で『柳瀬菜様』と書かれていた。
「わぁー! 俺、絶対行く!」
「お腹が大きくなる前にって、段取りに悠くんも巻き込んじゃって、最近せっちゃんとの時間取っちゃったから、実はちょっと気が引けてたの。ごめんね?」
どうやら悠斗がゆっくりできなかったのは、美久さんの妊娠が原因だったようだ。
めでたいことだ。理由が分かればなんの不満も湧かない。
「姉さん……それは言わなくていいよ」
「あら、ずっとそわそわしてたじゃない。早くお隣へ行きたがっていたのは誰?」
いずれ自分から説明をしようとしていたらしい悠斗は、不要なことまで言われてしまい、耳を真っ赤にして美久さんの言葉を遮った。
「ちょっと、もういいでしょ? そう思うなら早く二人にしてよ」
悠斗は美久さんの背中を気遣いながら押し、部屋の外へと見送った。
美久さんも成人済みで、いつ結婚してもおかしくはない。きっとおばさんに似て暖かい家庭を築くはずだ。
家族か……。
俺は……悠斗に……そんなぬくもりを……。
分かっていたことだが、目の前の封筒を見ていると嫌でも現実を突き付けられる。
そんなことを考えていると、戻った悠斗に腕を取られ膝の上に乗せられた。腰に腕を回されホールドされると、逃がさないとばかりに不適な笑顔を向けられた。
「瀬菜。今日は実千流ちゃんとご飯だったよね? どこで美久の話を聞いたの?」
「……ん? えっと……」
タラリと冷や汗をかいてしまう。口をへの字にして黙りを決める俺に、悠斗は無表情に目を細めた。
おじいさんに内緒と言われていたことを、すっかり失念していたのだ。無言を貫く俺に、悠斗はなおも尋ねてくる。
「まだ、安定期に入っていないから、身内にしか話してないんだよ? なんで瀬菜が知っているの?」
「……それは……その……えへへ♡」
「……そんな可愛くしてもダメだよ? 言わないなら……」
「わっ! ちょっ、擽ったいッよ~‼︎」
背中にひやりと悠斗の手のひらが忍び込むと、脇をすっと擽られる。仰け反る身体の隙間から、前側にもう片方の手が忍び込む。
くにゃりと乳首をつねられ、「ひゃんッ!」と高い声を上げてしまい、口を手のひらで覆った。
「エッチな声でどうしたの? ちょっと触っただけなのに。ああ、そうか……最近してなかったよね? お仕置きされたいから黙っているの?」
フルフルと横に首を振り、これ以上声を上げまいと、唇を噛み締める。それでも悠斗の愛撫はやまず、どんどん煽られる一方だ。
「気持ち良くて白状できない? 瀬菜は快感に弱いからな」
「ッ……弱く……ないもん」
「へぇー、そうなんだ。知らなかったな」
「──ひィッ! いたっ!」
乳首の先端をぎゅっとされ、痛みが身体中に響き渡る。それでも俺が口を割らないと感じ取った悠斗は、回した腕を緩め俺を解放した。
「……悠斗のいじめッ子!」
「瀬菜が強情だからでしょ?」
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