王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第14幕 季節外れの天使ちゃん

36

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 お疲れ様会が解散すると家でゆっくり過ごしていた。

「ねぇ、瀬菜聞いてる? 無理させたかな? けど、今年はなにもなくて俺はホッとしてる」
「あっ、ああ、聞いてるよ。あの写真はとっとと消せよ……」

 そう答える俺の回答はどうやら間違えていたらしい。
 悠斗は眉を落とすと、俺の手をそっと握ってきた。

「爺様に紹介しないこと……気にしてる?」
「いや、気にしてるって言うか、気になっちゃって。紹介は急がなくてもいいんだ。それに今日少し話もできた。聞いていたより優しそうで、ちょっと悠斗に似てた」

 確かに怖いと思ったのも事実。けれど優しさも確かに感じていた。

「似てる? 複雑なんだけど」
「だってさ、会って早々年の離れた人に、可愛いとか言われると思わなかった。なんだか悠斗みたいで」
「ふふっ、だって瀬菜は可愛いもん。気付いてないのは瀬菜だけ」
「……悠斗。おじいさんってさ、別に同性に対して偏見とかない気がする。悠斗は頭の固い昔の人って言ってたけど、俺実際会ってそう思えなかったんだ」

 俺の呟きに悠斗は少し驚いた顔をすると、ニコッと微笑み俺を抱きしめた。

「瀬菜は優しいから……」
「……なんだよ。ちょっと……擽ったい。こっ、こら‼︎」

 悠斗は俺を抱きしめたと思えば、怪しい手の動きをしていた。スエットを下げられ半分お尻が出てしまう。スースーとする半ケツが心許ない。

「瀬菜……お願いがあるんだ」
「はぁ? お前のお願いはもう昨日聞いただろ!」
「うん……。昨日のね……オプション的な?」
「──ひっ‼︎」

 下半身をTシャツの裾で隠すと、目の前に満面のキラキラスマイルで紐パンツをビヨーンと掲げる悠斗の姿に、俺はゴクリと唾を飲み込み青ざめた。

 それからどうなったかって?

 もちろん……上下セットで下着をキッチリ装着させられ、明け方まで喘がされ、グッタリする俺を楽しそうにしながら、悠斗のスマホに画像を蓄えられたのは言うまでもない……。


***


 文化祭は今年も盛況で終了した。残すは片付けと順位の発表ぐらいだ。月曜日は朝から皆浮き足立っていた。今年は一位だけでなく、三位まで入賞したクラスに賞金が授与される。一位だけでは頑張っている学生に申し訳ないという、理事長の計らいらしい。俺自身今回はあまり役に立って居なかったが、体育館で発表される順位にドキドキしてしまった。
 そしてもう一つ驚きの発表があった。おそらく生徒会メンバーなら誰もが思ったことだろう。なんと、時期生徒会長に実千流が任命されたのだ。てっきり悠斗が任命されると思っていたが、以前環樹先輩が予定が狂うと言っていたことを思い出す。
 環樹会長の凜とした声で引き継ぎが行われ、実千流がハキハキと挨拶を行なっていた。前もって生徒会メンバーには発表されるとばかり思っていたが、どうやら漏洩を避けるため、毎回生徒会長と次期生徒会長にしか知らされないようだ。実千流で大丈夫かな……と、俺としては心配な部分もあったが、きっとそれなりに環樹先輩がフォローしてくれるはずだ。
 文化祭中に仕事があると実千流が連れ去られたのはこのことだったのかと、妙に納得してしまった。この調子ではきっとラブは訪れなかったのだろう。あとで慰めてあげようと苦笑いを浮かべた。
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