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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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そこの変態ども……。
今……なにを渡した。
俺に見えていないと思うなよ……。
ガッチリと握手を交わす悠斗と三浦さんの手の中には、ブラと同じ色のものが見える。隠したつもりでも、紐部がたらりと出ているではないか。
文化祭が終わったあとにも、俺はおかずにされてしまうのだ……と、なにを言っても無駄な変態達を刺激しないように、そっとため息を吐き出し、俺はひとり男子学生に戻るべく仮設更衣室に向かった。
はぁ……疲れた……俺学校であんな……。
そういえば……あの画像も消さなきゃだな……。
本気でエッチするとか……あいつは理性がないのかよ。
俺の中では猛獣だ。世間では爽やかイケメン王子と名高いが、世の女子達は騙されているにすぎない。何度もため息を漏らしながら、悠斗の私物になったであろう衣装をぞんざいに床に投げ捨てていった。
着替えをしたあとは、お店に向かった。
夏子がくねくねとしなを作りながらナース姿で俺と悠斗に声をかけてきた。
「あらぁ~。あらあら~。柳ちゃん武装解除しちゃったのねぇ~」
「ああ……色々あってな……。夏子は今年も綺麗だな」
「色々ねぇ~♪ 真っ赤な顔して可愛いわね~♡ 今年の私は一味違うわよ♡」
夏子に扮した村上が言うように、今年の彼……いや彼女は気合十分に自分の役目を演じていた。午前中ほどの賑わいはないが、それでも店は繁盛している様子だ。
着替えをして正解だったかもしれない。盛り上がるのはいいが、悠斗の言うように変な虫がつかないとも限らない。
こっそりと悠斗と二人で店裏に入り、材料の確認などをして裏方に徹した。
「瀬菜、俺ちょっと買い物行ってくる」
「ん? 足りないものあった?」
「ううん。みんなの休憩用のね?」
「ああ、お前本当に気遣い半端ないな。俺も一緒に……」
「いいよ。瀬菜は身体辛いでしょ?」
「……ははは。俺にも気遣いありがとう」
パチンとウインクをし、悠斗は買い出しへと行ってしまった。俺は俺で先ほどの乱れた自分を思い出し、煩悩を振り払う作業に没頭していた。
「柳ちゃん生地できたかしら……ってぇ~‼︎ 待ちなさい‼︎」
夏子が急に悲鳴を上げた。
「……へっ?」
「卵っ! 卵割りすぎよ~!」
「……あっ……本当だ……」
「全く……頭の中お花でも咲いていたのかしら? おませさんなんだから!」
そう言いながら夏子は違う容器に俺が割り過ぎた卵をオタマで掬い分けていた。
面倒見のいい看護師長という感じだ。
「……ううっん! 全く仕方のない子ね。でも……女装はもうしないほうがいいかしら。姫乃夏子ペアで今年もタック組みたかったけど、また拉致されたらたまらないもの」
「うん……俺も残念だよ夏子」
夏子の優しい気遣いに、頰が緩むと笑顔で返してくれる。見た目はゲテ物な姿なのに、なぜだかホッとするのは、やっぱり信頼できる友達だからだろうか。
「夏子ー。あんまり瀬菜とイチャイチャしないで。変なオーラが移るでしょ?」
「なによ! バケモノじゃないわよ! ……って、あら……ありがとう」
「どういたしまして。休憩していないでしょ? 前は俺がやるから休みなよ」
「あ~~ん♡ 王子ってば優しいぃ~。好き……♡」
夏子は悠斗にしな垂れると頰をスリスリと押し付ける。
悠斗は「髭っ! 痛いから!」と全力で引き剥がしていた。
今……なにを渡した。
俺に見えていないと思うなよ……。
ガッチリと握手を交わす悠斗と三浦さんの手の中には、ブラと同じ色のものが見える。隠したつもりでも、紐部がたらりと出ているではないか。
文化祭が終わったあとにも、俺はおかずにされてしまうのだ……と、なにを言っても無駄な変態達を刺激しないように、そっとため息を吐き出し、俺はひとり男子学生に戻るべく仮設更衣室に向かった。
はぁ……疲れた……俺学校であんな……。
そういえば……あの画像も消さなきゃだな……。
本気でエッチするとか……あいつは理性がないのかよ。
俺の中では猛獣だ。世間では爽やかイケメン王子と名高いが、世の女子達は騙されているにすぎない。何度もため息を漏らしながら、悠斗の私物になったであろう衣装をぞんざいに床に投げ捨てていった。
着替えをしたあとは、お店に向かった。
夏子がくねくねとしなを作りながらナース姿で俺と悠斗に声をかけてきた。
「あらぁ~。あらあら~。柳ちゃん武装解除しちゃったのねぇ~」
「ああ……色々あってな……。夏子は今年も綺麗だな」
「色々ねぇ~♪ 真っ赤な顔して可愛いわね~♡ 今年の私は一味違うわよ♡」
夏子に扮した村上が言うように、今年の彼……いや彼女は気合十分に自分の役目を演じていた。午前中ほどの賑わいはないが、それでも店は繁盛している様子だ。
着替えをして正解だったかもしれない。盛り上がるのはいいが、悠斗の言うように変な虫がつかないとも限らない。
こっそりと悠斗と二人で店裏に入り、材料の確認などをして裏方に徹した。
「瀬菜、俺ちょっと買い物行ってくる」
「ん? 足りないものあった?」
「ううん。みんなの休憩用のね?」
「ああ、お前本当に気遣い半端ないな。俺も一緒に……」
「いいよ。瀬菜は身体辛いでしょ?」
「……ははは。俺にも気遣いありがとう」
パチンとウインクをし、悠斗は買い出しへと行ってしまった。俺は俺で先ほどの乱れた自分を思い出し、煩悩を振り払う作業に没頭していた。
「柳ちゃん生地できたかしら……ってぇ~‼︎ 待ちなさい‼︎」
夏子が急に悲鳴を上げた。
「……へっ?」
「卵っ! 卵割りすぎよ~!」
「……あっ……本当だ……」
「全く……頭の中お花でも咲いていたのかしら? おませさんなんだから!」
そう言いながら夏子は違う容器に俺が割り過ぎた卵をオタマで掬い分けていた。
面倒見のいい看護師長という感じだ。
「……ううっん! 全く仕方のない子ね。でも……女装はもうしないほうがいいかしら。姫乃夏子ペアで今年もタック組みたかったけど、また拉致されたらたまらないもの」
「うん……俺も残念だよ夏子」
夏子の優しい気遣いに、頰が緩むと笑顔で返してくれる。見た目はゲテ物な姿なのに、なぜだかホッとするのは、やっぱり信頼できる友達だからだろうか。
「夏子ー。あんまり瀬菜とイチャイチャしないで。変なオーラが移るでしょ?」
「なによ! バケモノじゃないわよ! ……って、あら……ありがとう」
「どういたしまして。休憩していないでしょ? 前は俺がやるから休みなよ」
「あ~~ん♡ 王子ってば優しいぃ~。好き……♡」
夏子は悠斗にしな垂れると頰をスリスリと押し付ける。
悠斗は「髭っ! 痛いから!」と全力で引き剥がしていた。
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