王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
480 / 716
第14幕 季節外れの天使ちゃん

31

しおりを挟む
 そこの変態ども……。
 今……なにを渡した。
 俺に見えていないと思うなよ……。

 ガッチリと握手を交わす悠斗と三浦さんの手の中には、ブラと同じ色のものが見える。隠したつもりでも、紐部がたらりと出ているではないか。
 文化祭が終わったあとにも、俺はおかずにされてしまうのだ……と、なにを言っても無駄な変態達を刺激しないように、そっとため息を吐き出し、俺はひとり男子学生に戻るべく仮設更衣室に向かった。

 はぁ……疲れた……俺学校であんな……。
 そういえば……あの画像も消さなきゃだな……。
 本気でエッチするとか……あいつは理性がないのかよ。

 俺の中では猛獣だ。世間では爽やかイケメン王子と名高いが、世の女子達は騙されているにすぎない。何度もため息を漏らしながら、悠斗の私物になったであろう衣装をぞんざいに床に投げ捨てていった。



 着替えをしたあとは、お店に向かった。
 夏子がくねくねとしなを作りながらナース姿で俺と悠斗に声をかけてきた。

「あらぁ~。あらあら~。柳ちゃん武装解除しちゃったのねぇ~」
「ああ……色々あってな……。夏子は今年も綺麗だな」
「色々ねぇ~♪ 真っ赤な顔して可愛いわね~♡ 今年の私は一味違うわよ♡」

 夏子に扮した村上が言うように、今年の彼……いや彼女は気合十分に自分の役目を演じていた。午前中ほどの賑わいはないが、それでも店は繁盛している様子だ。
 着替えをして正解だったかもしれない。盛り上がるのはいいが、悠斗の言うように変な虫がつかないとも限らない。
 こっそりと悠斗と二人で店裏に入り、材料の確認などをして裏方に徹した。

「瀬菜、俺ちょっと買い物行ってくる」
「ん? 足りないものあった?」
「ううん。みんなの休憩用のね?」
「ああ、お前本当に気遣い半端ないな。俺も一緒に……」
「いいよ。瀬菜は身体辛いでしょ?」
「……ははは。俺にも気遣いありがとう」

 パチンとウインクをし、悠斗は買い出しへと行ってしまった。俺は俺で先ほどの乱れた自分を思い出し、煩悩を振り払う作業に没頭していた。

「柳ちゃん生地できたかしら……ってぇ~‼︎ 待ちなさい‼︎」

 夏子が急に悲鳴を上げた。

「……へっ?」
「卵っ! 卵割りすぎよ~!」
「……あっ……本当だ……」
「全く……頭の中お花でも咲いていたのかしら? おませさんなんだから!」

 そう言いながら夏子は違う容器に俺が割り過ぎた卵をオタマで掬い分けていた。
 面倒見のいい看護師長という感じだ。

「……ううっん! 全く仕方のない子ね。でも……女装はもうしないほうがいいかしら。姫乃夏子ペアで今年もタック組みたかったけど、また拉致されたらたまらないもの」
「うん……俺も残念だよ夏子」

 夏子の優しい気遣いに、頰が緩むと笑顔で返してくれる。見た目はゲテ物な姿なのに、なぜだかホッとするのは、やっぱり信頼できる友達だからだろうか。

「夏子ー。あんまり瀬菜とイチャイチャしないで。変なオーラが移るでしょ?」
「なによ! バケモノじゃないわよ! ……って、あら……ありがとう」
「どういたしまして。休憩していないでしょ? 前は俺がやるから休みなよ」
「あ~~ん♡ 王子ってば優しいぃ~。好き……♡」

 夏子は悠斗にしな垂れると頰をスリスリと押し付ける。
 悠斗は「髭っ! 痛いから!」と全力で引き剥がしていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...