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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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いい加減にしてくれと泣きそうになると、文化祭の神様は俺を不憫に思ったらしい。
「──‼︎ ゆっ、由良りんっ‼︎」
少し離れた場所に由良りんの姿があり、俺は叫んで助けを求めた。由良りんは眉間に皺を寄せ、怪訝な顔で目を細めてこちらを見てきた。こんな姿で気付いてもらえないかもしれないと思ったが、目を見開きしばらく凝視すると、ため息を吐いて歩み寄ってきた。
「……お前なにしてんの?」
「えへへ……」
「あっ、不良で有名な由良君じゃん。知り合い? 超意外。てかてか~紹介して♡」
「……いつから知り合いになった。そいつから手離せ」
「えーじゃぁ、今から三人は知り合い~ってことで良くない?」
「はぁ?」
由良りんの寒々とした今にも噛みつくような雰囲気に気圧されたのか、「冗談だよ」と歩く下半身男は苦笑い気味に俺との距離をとる。流石由良りん。場数を踏んでいらっしゃいます。
「……ほら、行くぞ……」
ヘラリと笑顔で頷き由良りんの腕に飛びつくと、下半身男はつまらなそうにしていた。俺はこの場を回避でき、ルンルン気分で由良りんに擦り寄って鼻歌交じりだ。由良りんは超絶不機嫌そうにムスッとしながら、俺にチラチラと鋭い視線を投げてくる。
中庭のベンチに座り、取り敢えず気分を落ち着かせる。
「へへ……由良りんありがとう」
「斎賀はどうした。そんな格好でひとりでプラプラしてんじゃねぇ」
「実千流は先輩が連れ去ったんだ。着替えに行こうとしたら下半身君に捕まった」
「言ったよな? あの顔見たら逃げろって」
「逃げようとしたんだよ。でもさ、人目が多いとこのが安全じゃん?」
とはいえ、まもなくスカートに手を突っ込まれそうになっていた訳だが。
「無理矢理連れて行かれたらどうすんだ。早く連絡してこいよ」
「だって、みんな忙しそうだしさ、人多過ぎで近寄れなかったんだもん。ガン無視してたらどっか行くかなって……思ってて」
「ヤナは──っ……」
シュンとする俺に、由良りんは言いかけていた言葉を飲み込むと、小さく「……ムカつくな」と呟き、舌打ちしたあと電話を掛け始めた。
「……ユウ? ちょっと出て来い。……中庭にある奥のベンチ。……はぁ? そんなもん多澤に押し付けろ! 俺の理性がもたねぇんだよ! ヤナになにかしてもぜってぇー怒んなよ! じゃあな!」
おぉぉー……怒ってる……。
超こえぇ……巻き舌ってる。
「……お前はユウにあとでみっちり説教されろ」
「俺、悪いことしていないじゃん! そんなに怒らないでよ……」
「可愛過ぎか⁉︎ 助けたお礼ぐらい寄越せ」
「うん、いいよ? なにがいい?」
「だぁ~~、凶器か⁉︎」
「いや、なんだよさっきから」
頬に手のひらがそっと触れると、由良りんのほうへ顔を向けさせられる。
「……ユウには伝えた。目閉じろ」
由良りんの顔がどんどん近づいてくる。
「へっ? まっ、待て待て‼︎」
「黙れ。キスのひとつや二つ構わねぇだろ。あと、パンツ見えてるぞ」
「──えっ⁉︎」
スカートなど普段履かないので、由良りんの押しにジタバタと足を開いてしまっていた。流石にボクサーパンツだが、見られるのは恥ずかしい。膝をつけると力が上手く入らず、ベンチに背中がくっつきそうなほど体重を掛けられた。
「ゆ、由良りんっ! おぉぉ落ち着こ~~っ‼︎」
「──‼︎ ゆっ、由良りんっ‼︎」
少し離れた場所に由良りんの姿があり、俺は叫んで助けを求めた。由良りんは眉間に皺を寄せ、怪訝な顔で目を細めてこちらを見てきた。こんな姿で気付いてもらえないかもしれないと思ったが、目を見開きしばらく凝視すると、ため息を吐いて歩み寄ってきた。
「……お前なにしてんの?」
「えへへ……」
「あっ、不良で有名な由良君じゃん。知り合い? 超意外。てかてか~紹介して♡」
「……いつから知り合いになった。そいつから手離せ」
「えーじゃぁ、今から三人は知り合い~ってことで良くない?」
「はぁ?」
由良りんの寒々とした今にも噛みつくような雰囲気に気圧されたのか、「冗談だよ」と歩く下半身男は苦笑い気味に俺との距離をとる。流石由良りん。場数を踏んでいらっしゃいます。
「……ほら、行くぞ……」
ヘラリと笑顔で頷き由良りんの腕に飛びつくと、下半身男はつまらなそうにしていた。俺はこの場を回避でき、ルンルン気分で由良りんに擦り寄って鼻歌交じりだ。由良りんは超絶不機嫌そうにムスッとしながら、俺にチラチラと鋭い視線を投げてくる。
中庭のベンチに座り、取り敢えず気分を落ち着かせる。
「へへ……由良りんありがとう」
「斎賀はどうした。そんな格好でひとりでプラプラしてんじゃねぇ」
「実千流は先輩が連れ去ったんだ。着替えに行こうとしたら下半身君に捕まった」
「言ったよな? あの顔見たら逃げろって」
「逃げようとしたんだよ。でもさ、人目が多いとこのが安全じゃん?」
とはいえ、まもなくスカートに手を突っ込まれそうになっていた訳だが。
「無理矢理連れて行かれたらどうすんだ。早く連絡してこいよ」
「だって、みんな忙しそうだしさ、人多過ぎで近寄れなかったんだもん。ガン無視してたらどっか行くかなって……思ってて」
「ヤナは──っ……」
シュンとする俺に、由良りんは言いかけていた言葉を飲み込むと、小さく「……ムカつくな」と呟き、舌打ちしたあと電話を掛け始めた。
「……ユウ? ちょっと出て来い。……中庭にある奥のベンチ。……はぁ? そんなもん多澤に押し付けろ! 俺の理性がもたねぇんだよ! ヤナになにかしてもぜってぇー怒んなよ! じゃあな!」
おぉぉー……怒ってる……。
超こえぇ……巻き舌ってる。
「……お前はユウにあとでみっちり説教されろ」
「俺、悪いことしていないじゃん! そんなに怒らないでよ……」
「可愛過ぎか⁉︎ 助けたお礼ぐらい寄越せ」
「うん、いいよ? なにがいい?」
「だぁ~~、凶器か⁉︎」
「いや、なんだよさっきから」
頬に手のひらがそっと触れると、由良りんのほうへ顔を向けさせられる。
「……ユウには伝えた。目閉じろ」
由良りんの顔がどんどん近づいてくる。
「へっ? まっ、待て待て‼︎」
「黙れ。キスのひとつや二つ構わねぇだろ。あと、パンツ見えてるぞ」
「──えっ⁉︎」
スカートなど普段履かないので、由良りんの押しにジタバタと足を開いてしまっていた。流石にボクサーパンツだが、見られるのは恥ずかしい。膝をつけると力が上手く入らず、ベンチに背中がくっつきそうなほど体重を掛けられた。
「ゆ、由良りんっ! おぉぉ落ち着こ~~っ‼︎」
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