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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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今頃きっと露店は賑わっているだろう。なぜなら初日は種まきだと、クラスのイケメンを配置しているからだ。もちろん悠斗達も早速駆り出され、開店から間もないがお客さんが押し寄せているらしい。
「俺達、はっきり言ってビラ配り必要なくね?」
「何言ってるの。もっと宣伝して売り上げ伸ばさないと」
ただ歩いているだけだというのに、他校の女子校生が珍しいのか男子に何度か声を掛けられていた。実千流は二言三言話をすると、最後は「ここ一押しだよ~♪ うちの兄がやってるの。あとで手伝いに行くから、また会えたらいいね♡」と、チラシを見事に捌いていた。
「……実千流ってよくそんなにツラツラと……」
「だって半分は本当じゃん? 武器は最大限に使わないとね♪」
あんまり人気出ると、悠斗が店にずっと居なきゃならないんだけどな……。
一緒に回れるかな……。
店が繁盛するのはクラスはいいことだ。ただ、悠斗の人気がこれ以上出てしまうのは喜ばしくはない。
「これ配ったら悠斗さんのところ行こ?」
「……えっ?」
「えっ、じゃないの。この格好見せてメロメロにしないとね♡」
「……メロメロって」
「やだなぁ~。もうメロメロとか言わないでよ?」
「そっ、そんなことないし! 実千流だって早く先輩のところ行けよ! そもそもそれが目的だったんだろ? てかさ、気持ち伝えたのか?」
「う、うん? まだ明日もあるし……けど、あの鉄壁顔崩壊させてやる!」
とぼけながら挙動不審になる実千流は、パッと気持ちを切り替え企みモードでイシシ~っと笑う。なにを考えているのやら。素直になれば先輩も怒らないのに……と、心の中で呟き残りのチラシをなくしていった。
手元のチラシは実千流のおかげで早々に配布完了できた。学校中を歩き回った割にローファーだったため、昨年のように足は痛くはなかった。
引っ切りなしに声を掛けられ、(いいかお前ら……俺達……男だぞ)と念を送ったが、念は通じることなく、男子学生のデレデレと鼻の下を伸ばす姿に鳥肌を何度も立たせた。
「あーー……疲れた……」
「しかし凄い人だね。お店の中全然見えないや」
「去年もそうだった。悠斗が居るだけなのにさ」
「悠斗さんが居るだけじゃなくて、居るからでしょ? 折角早く切り上げたのにね」
「まぁ、予想はしてたよ。なにか買って休憩しようぜ」
適当に飲み物を購入すると、近くのベンチで客が引くのを待っていた。
お店でカステラを購入した女子は皆、キャピキャピと黄色い声を上げながらカステラを頬張っている。写真も一緒に撮ってもらえてラッキーだったねと満面の笑みだ。コスプレと合わせて導入された購入者特典。お気に入りの店員さんと写真を撮ることができるらしい。それでこの行列なのかと、納得する反面苛立ってしまう。
眉間にシワを寄せお店の前にできている長い列を睨みつけていると、バイブ音が聞こえてきた。
「……実千流。お前携帯ずっと鳴ってね?」
「あ~いいのいいの! 緊急じゃないし」
実千流は表示を見ることもなく、放置している。チラシを配っているときから気になっていたが、引っ切りなしに鳴っているということは急ぎの連絡ではないだろうか。特に背後に控えている人は、火急の用があるようだ。
「……ほお~~、なにがいいって?」
不敵に笑う環樹先輩のお出ましです。耳にスマホを当てながら、そりゃもう笑ってない笑顔で……。
「俺達、はっきり言ってビラ配り必要なくね?」
「何言ってるの。もっと宣伝して売り上げ伸ばさないと」
ただ歩いているだけだというのに、他校の女子校生が珍しいのか男子に何度か声を掛けられていた。実千流は二言三言話をすると、最後は「ここ一押しだよ~♪ うちの兄がやってるの。あとで手伝いに行くから、また会えたらいいね♡」と、チラシを見事に捌いていた。
「……実千流ってよくそんなにツラツラと……」
「だって半分は本当じゃん? 武器は最大限に使わないとね♪」
あんまり人気出ると、悠斗が店にずっと居なきゃならないんだけどな……。
一緒に回れるかな……。
店が繁盛するのはクラスはいいことだ。ただ、悠斗の人気がこれ以上出てしまうのは喜ばしくはない。
「これ配ったら悠斗さんのところ行こ?」
「……えっ?」
「えっ、じゃないの。この格好見せてメロメロにしないとね♡」
「……メロメロって」
「やだなぁ~。もうメロメロとか言わないでよ?」
「そっ、そんなことないし! 実千流だって早く先輩のところ行けよ! そもそもそれが目的だったんだろ? てかさ、気持ち伝えたのか?」
「う、うん? まだ明日もあるし……けど、あの鉄壁顔崩壊させてやる!」
とぼけながら挙動不審になる実千流は、パッと気持ちを切り替え企みモードでイシシ~っと笑う。なにを考えているのやら。素直になれば先輩も怒らないのに……と、心の中で呟き残りのチラシをなくしていった。
手元のチラシは実千流のおかげで早々に配布完了できた。学校中を歩き回った割にローファーだったため、昨年のように足は痛くはなかった。
引っ切りなしに声を掛けられ、(いいかお前ら……俺達……男だぞ)と念を送ったが、念は通じることなく、男子学生のデレデレと鼻の下を伸ばす姿に鳥肌を何度も立たせた。
「あーー……疲れた……」
「しかし凄い人だね。お店の中全然見えないや」
「去年もそうだった。悠斗が居るだけなのにさ」
「悠斗さんが居るだけじゃなくて、居るからでしょ? 折角早く切り上げたのにね」
「まぁ、予想はしてたよ。なにか買って休憩しようぜ」
適当に飲み物を購入すると、近くのベンチで客が引くのを待っていた。
お店でカステラを購入した女子は皆、キャピキャピと黄色い声を上げながらカステラを頬張っている。写真も一緒に撮ってもらえてラッキーだったねと満面の笑みだ。コスプレと合わせて導入された購入者特典。お気に入りの店員さんと写真を撮ることができるらしい。それでこの行列なのかと、納得する反面苛立ってしまう。
眉間にシワを寄せお店の前にできている長い列を睨みつけていると、バイブ音が聞こえてきた。
「……実千流。お前携帯ずっと鳴ってね?」
「あ~いいのいいの! 緊急じゃないし」
実千流は表示を見ることもなく、放置している。チラシを配っているときから気になっていたが、引っ切りなしに鳴っているということは急ぎの連絡ではないだろうか。特に背後に控えている人は、火急の用があるようだ。
「……ほお~~、なにがいいって?」
不敵に笑う環樹先輩のお出ましです。耳にスマホを当てながら、そりゃもう笑ってない笑顔で……。
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