王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第14幕 季節外れの天使ちゃん

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「でも、これで実千流ともこうして一緒にご飯とか気兼ねなくできるじゃん! こいつらみんな口悪いけどいい仲間だぞ」
「瀬菜お前またそうやって、ひと言余計なんだよ!」
「しっかし、予想通りかよ。斎賀の手首握ったとき、もしやと思ったけどよ」
「また濃い仲間が増えたよね~♪」
「実千流ちゃん。困ったことがあったらいつでも聞くからね?」

 実千流はみんなの歓迎に恥ずかしそうにしながら、コクりと頷いた。

「でもさ、実千流。これで文化祭の予定狂っちゃったね?」
「あーそれなんだけど……瀬菜に早速お願いがあるんだ!」

 俺の手をパシッと両手で包み握りしめると、瞳をうるうるさせながら上目遣いで強請ってきた。
 嫌な予感しかしない。

「……あのさ、協力はするけど……巻き込まれるのは勘弁な?」
「巻き込むなんて瀬菜ってば酷いなー♪ 瀬菜は優しいから聞いてくれるよね? ねっ!」

 ねっ、って……二回も言った!
 実千流って俺には甘え上手なのにな~。
 それに、俺の性格良く理解してる。

「わ、分かったよ……」
「やったぁ~♪」
「瀬菜……そんなに安請け合いしてもいいの?」
「ははは……取り敢えず話だけ……」
「瀬菜ありがとう~♪ 大好きだよ~♪」

 抱き付きキスをしようとする実千流を遮り、「キスはダメ! 俺死んじゃう!」と注意をしながら二人で戯れる姿に、悠斗と由良りんは「コレいいな……」「そうでしょ?」と不吉な会話を繰り広げていた。

 文化祭まであとわずか。実千流の恋は成就するか……俺は無事過ごせるか……大きくため息を吐き、来たる文化祭に備えたのだった。


***


 高校生になって二度目の文化祭が、今まさに始まろうとしている。
 俺たちのクラスは野外で出店を構え交代制で店番と客引きを行う予定だ。人数もそこまで必要はないので、今年はゆっくり散策することができる。どちらかといえば、生徒会のほうが忙しいのではないだろうか。

 しかし……俺は今年も憂鬱である……。

 話は数日前に戻るが、ここ最近鬱々していた三浦さんが、看板作りや飾りを作っている最中、いきなり声を上げた。「みんな! 普通過ぎるわ! 食券欲しくないの⁉︎」っと……。
 食券というご褒美に、クラス中が「確かに!」となにが間際でもできないかと話し合い、結果……。

「村上君。君はこれね!」
「えっ……なんで⁉︎ 今年もなの⁉︎」
「立花君と多澤君、それから由良君は……うん、コレだな」
「ふふっ、もっとギャグに走ってもいいのに」
「はぁ~……助かったぜ」
「俺、特攻服とかじゃねぇの?」
「瀬菜、瀬菜~~♪ 俺達コレにしよ~♪」
「ちょっ、ヤダよ‼︎ 構内練り歩くんだぞ!」

 ……と、なにをしているかといえば、客引き用の衣装選びです。ロシアン鈴カステラ屋さんだけでは、例の順位も逃してしまうと、急遽三浦さんの機転によりみんなで集められた衣装。今年は普通に過ごせると思っていたのが間違いだった。
 村上はナース服にネームプレートにデカデカと「夏子♡」と書かれたものを渡され、クラス中の笑いを攫い満更でもない様子。
 悠斗と多澤、由良りんはウエイターでロングの黒エプロンのみ白シャツと黒のパンツは自前で対応。きっとビジュアルで十分集客間違いなし。店員さんとしても使えるじゃんと、着用していないというのにすでに女子は大騒ぎだ。
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