王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
465 / 716
第14幕 季節外れの天使ちゃん

16

しおりを挟む
「あのさ、俺……環樹先輩は俺のこと、好きとかじゃなくて、弟みたいに接してるんだと思うんだ」
「そうかな?」
「冗談で好き好き言ってくるけど、前に俺がレイプされそうになったときの負い目……みたいな?」
「……レイプって……ごめん。嫌なこと……」
「ううん。未遂だったし、みんなが助けてくれたから! 丁度去年の今頃の文化祭のときにね。斎賀さんみたいに、女装して自分で言うのもなんだけど……人気出ちゃって。常習犯捕まえるためにだったけど、先輩ってば俺を囮に使ったんだよ? だからかな? 先輩が俺を気遣ってくれるのは」

 その後のフォローを先輩なりにしているに過ぎない。
 だから悠斗も生徒会に付き合ってくれたのだ。

「……そっか……知らないとは言え、色々虐めてごめん……」
「へへっ……そりゃチクチク痛かったし、悠斗とは険悪になるし大変だった。けど、先輩が好きで転校って凄いな!」
「……凄くなんかない。けど、無駄に考えたくなかった。結局環樹には怒られっぱなしだよ」
「先輩って人に興味なさそうだし、あんまり怒る感じじゃないのにな。……ツンデレなのかな?」
「え? 俺会う度に怒られる。それと……瀬菜。図々しいのは分かってる……けど、俺のこと許してくれるかな……」

 斎賀さんの謝罪に「むぅ~~……」っと唸りながら、考える振りをする。そんな俺を不安そうにチラチラと見てくる斎賀さんは、あの意地悪な黒天使ちゃんとは到底程遠い。
 素直で真っ直ぐ。黒色は白色へと浄化されて、ふわふわな綿毛のように心を撫でてくれる。

「ん~~そうだなぁ~~。まぁ、ムカついた……けど話したらスッキリした! 俺ね、斎賀さん。えっと違うか……実千流と友達になりたい!」
「──瀬菜っ! 仕返ししたでしょ⁉︎ でも、ありがとう……。俺、瀬菜になにかあったら絶対助けるから!」

 屈託無い笑顔は、自然でとても穏やかだ。いつもそのほうがいいのになと、女装姿の実千流を思い浮かべる。

「ねぇ、女装……まだ続けるの?」
「そのつもり。文化祭終わるまではね♪」

 なぜそこに拘るのか謎な俺は首を傾げてしまう。

「だって、文化祭でカップルみたいに腕組んだり、手繋いだりしたいじゃん」
「……それだけ?」
「そうだけど? 文句ある?」
「……いえ……ないです……」

 よろしいとでもいうように頷くと、スッと手を差し伸べてくる。

「改めてよろしくね。瀬菜!」
「うん。よろしくな。実千流! あ~、あとさ……カップルみたいなことする前に、先ずは告白じゃね?」

 ウッと息を詰まらせる実千流は「まだ文化祭まで時間あるし」と小さく呟きごまかしていた。

 最初は絶対仲良くなれないし、感じの悪い天使だと苛立ちも半端なかった。俺たちは似ていないようで、似ている部分が沢山あった。悠斗が仲良くなれると言った意味が、なんとなく分かった気がする。
 すっかり打ち解けたあとも、お互いの恋愛話や、価値観を話したり、あっという間に時間が過ぎていった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...