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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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「あのさ、俺……環樹先輩は俺のこと、好きとかじゃなくて、弟みたいに接してるんだと思うんだ」
「そうかな?」
「冗談で好き好き言ってくるけど、前に俺がレイプされそうになったときの負い目……みたいな?」
「……レイプって……ごめん。嫌なこと……」
「ううん。未遂だったし、みんなが助けてくれたから! 丁度去年の今頃の文化祭のときにね。斎賀さんみたいに、女装して自分で言うのもなんだけど……人気出ちゃって。常習犯捕まえるためにだったけど、先輩ってば俺を囮に使ったんだよ? だからかな? 先輩が俺を気遣ってくれるのは」
その後のフォローを先輩なりにしているに過ぎない。
だから悠斗も生徒会に付き合ってくれたのだ。
「……そっか……知らないとは言え、色々虐めてごめん……」
「へへっ……そりゃチクチク痛かったし、悠斗とは険悪になるし大変だった。けど、先輩が好きで転校って凄いな!」
「……凄くなんかない。けど、無駄に考えたくなかった。結局環樹には怒られっぱなしだよ」
「先輩って人に興味なさそうだし、あんまり怒る感じじゃないのにな。……ツンデレなのかな?」
「え? 俺会う度に怒られる。それと……瀬菜。図々しいのは分かってる……けど、俺のこと許してくれるかな……」
斎賀さんの謝罪に「むぅ~~……」っと唸りながら、考える振りをする。そんな俺を不安そうにチラチラと見てくる斎賀さんは、あの意地悪な黒天使ちゃんとは到底程遠い。
素直で真っ直ぐ。黒色は白色へと浄化されて、ふわふわな綿毛のように心を撫でてくれる。
「ん~~そうだなぁ~~。まぁ、ムカついた……けど話したらスッキリした! 俺ね、斎賀さん。えっと違うか……実千流と友達になりたい!」
「──瀬菜っ! 仕返ししたでしょ⁉︎ でも、ありがとう……。俺、瀬菜になにかあったら絶対助けるから!」
屈託無い笑顔は、自然でとても穏やかだ。いつもそのほうがいいのになと、女装姿の実千流を思い浮かべる。
「ねぇ、女装……まだ続けるの?」
「そのつもり。文化祭終わるまではね♪」
なぜそこに拘るのか謎な俺は首を傾げてしまう。
「だって、文化祭でカップルみたいに腕組んだり、手繋いだりしたいじゃん」
「……それだけ?」
「そうだけど? 文句ある?」
「……いえ……ないです……」
よろしいとでもいうように頷くと、スッと手を差し伸べてくる。
「改めてよろしくね。瀬菜!」
「うん。よろしくな。実千流! あ~、あとさ……カップルみたいなことする前に、先ずは告白じゃね?」
ウッと息を詰まらせる実千流は「まだ文化祭まで時間あるし」と小さく呟きごまかしていた。
最初は絶対仲良くなれないし、感じの悪い天使だと苛立ちも半端なかった。俺たちは似ていないようで、似ている部分が沢山あった。悠斗が仲良くなれると言った意味が、なんとなく分かった気がする。
すっかり打ち解けたあとも、お互いの恋愛話や、価値観を話したり、あっという間に時間が過ぎていった。
「そうかな?」
「冗談で好き好き言ってくるけど、前に俺がレイプされそうになったときの負い目……みたいな?」
「……レイプって……ごめん。嫌なこと……」
「ううん。未遂だったし、みんなが助けてくれたから! 丁度去年の今頃の文化祭のときにね。斎賀さんみたいに、女装して自分で言うのもなんだけど……人気出ちゃって。常習犯捕まえるためにだったけど、先輩ってば俺を囮に使ったんだよ? だからかな? 先輩が俺を気遣ってくれるのは」
その後のフォローを先輩なりにしているに過ぎない。
だから悠斗も生徒会に付き合ってくれたのだ。
「……そっか……知らないとは言え、色々虐めてごめん……」
「へへっ……そりゃチクチク痛かったし、悠斗とは険悪になるし大変だった。けど、先輩が好きで転校って凄いな!」
「……凄くなんかない。けど、無駄に考えたくなかった。結局環樹には怒られっぱなしだよ」
「先輩って人に興味なさそうだし、あんまり怒る感じじゃないのにな。……ツンデレなのかな?」
「え? 俺会う度に怒られる。それと……瀬菜。図々しいのは分かってる……けど、俺のこと許してくれるかな……」
斎賀さんの謝罪に「むぅ~~……」っと唸りながら、考える振りをする。そんな俺を不安そうにチラチラと見てくる斎賀さんは、あの意地悪な黒天使ちゃんとは到底程遠い。
素直で真っ直ぐ。黒色は白色へと浄化されて、ふわふわな綿毛のように心を撫でてくれる。
「ん~~そうだなぁ~~。まぁ、ムカついた……けど話したらスッキリした! 俺ね、斎賀さん。えっと違うか……実千流と友達になりたい!」
「──瀬菜っ! 仕返ししたでしょ⁉︎ でも、ありがとう……。俺、瀬菜になにかあったら絶対助けるから!」
屈託無い笑顔は、自然でとても穏やかだ。いつもそのほうがいいのになと、女装姿の実千流を思い浮かべる。
「ねぇ、女装……まだ続けるの?」
「そのつもり。文化祭終わるまではね♪」
なぜそこに拘るのか謎な俺は首を傾げてしまう。
「だって、文化祭でカップルみたいに腕組んだり、手繋いだりしたいじゃん」
「……それだけ?」
「そうだけど? 文句ある?」
「……いえ……ないです……」
よろしいとでもいうように頷くと、スッと手を差し伸べてくる。
「改めてよろしくね。瀬菜!」
「うん。よろしくな。実千流! あ~、あとさ……カップルみたいなことする前に、先ずは告白じゃね?」
ウッと息を詰まらせる実千流は「まだ文化祭まで時間あるし」と小さく呟きごまかしていた。
最初は絶対仲良くなれないし、感じの悪い天使だと苛立ちも半端なかった。俺たちは似ていないようで、似ている部分が沢山あった。悠斗が仲良くなれると言った意味が、なんとなく分かった気がする。
すっかり打ち解けたあとも、お互いの恋愛話や、価値観を話したり、あっという間に時間が過ぎていった。
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