王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第14幕 季節外れの天使ちゃん

15

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「……姫乃ちゃんって子のことも」

 耳元で小さく呟かれ、俺はキョトンと首を傾げる。

「……それ、俺だけど……」
「……知ってるよ!」
「なんでそこで怒るんだよ……」
「鈍チン! 瀬菜って鈍感過ぎ…………好きなんだ……その、従兄弟だけど……環樹のこと」

 んん? 嫉妬って……環樹先輩が俺と仲いいから?
 あぁ……なんだ、そういうことか……。
 やっと話が繋がったぞ。

 頰を真っ赤にしモジモジと手遊びをしながら、ボソリと環樹先輩が好きだと吐露する斎賀さん。
 同性ということもあるが、従兄弟同士ということでも相当悩んだのかもしれない。

「……引くよね?」
「ううん。ビックリはしたけど、ちょっと嬉しいかも」
「俺も今は瀬菜と話して、そんな感じかも。こういうことって、あんまり話せる人居ないし」
「うん。いっぱい悩んだ? 俺も一緒だよ。良かったら、もっと聞かせてよ」
「ふふっ……ありがとう。環樹に会う度に良く話題に出てた。普段愛想笑いだけなのに、環樹ってば凄く楽しそうで、恋愛として姫乃ちゃんが心に居るのかなって。気付いたときは、正直凄くシンドかった~。見えない敵と戦ってる気分で、毎日モヤモヤしてた」

 そう心の内を呟く斎賀さんは、笑顔を作りながらも思い出したように瞳を潤ませた。

「もう諦めようって思っていたときに、丁度悠斗さんと会ったんだ。まさか同じ学校だと思わなかったけど、俺の知らない環樹のこといっぱい聞けて、諦めるの無理かもって。悠斗さんがね、諦めるのはいつでもできるよって、励ましてくれたんだ」
「へへっ……言いそう~!」

 悠斗が優しく微笑みながらそう言っている姿が目に浮かぶ。

「悠斗さんの恋人が姫乃ちゃんって聞いて、会ってみたくなった。実際瀬菜を目の前にして、腹が立った。環樹と瀬菜の距離に嫉妬したし、もっと虐めたくなった。悠斗さんの恋人だって知っていても、黒い感情が先に出ちゃうんだ。それに……瀬菜、意外と素直で可愛いし。転校初日から実は、凄く焦ってた!」
「それで俺にあんな態度だったのかよ。俺、凄い変な想像して暴走しちゃったじゃん」
「あはは……、瀬菜ってば必死なんだもん。恋人も居て、環樹からも愛されてるのに、俺の言葉に踊らされる姿見て、心の底からざま~みろって爽快だった♪」
「ひっどぉ~~‼︎」

 ケラケラと笑うと、はぁ~……っと深く息を吐き出し、斎賀さんはシュンとしてしまった。

 俺と同じ……。
 好きって気持ちが爆発すると、ツンケンしちゃうかな?
 こっちを向いて欲しいって、良くないこと平気でしちゃう。
 そんで、最後は……。

「気分が爽快だったのに、そんなの一瞬で……凄く後悔した。……瀬菜は全然悪くないのに。女装したことで違う自分になれたって、勘違いしていたんだ。余計に嫌われるって分かっていたのにさ」

 斎賀さんの中では先輩は、イコール俺が好きとなっているようだが、実際そうだろうか?
 本気かもと確かに思ったこともある。でも、それは俺と悠斗がトラブルにあったときだけだ。
 俺の中では弄りがいのある後輩で、放っておけない存在にしか思われていない気がしてしまう。
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