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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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いつも人を待たせてしまう俺だが、待ち合わせの時間より早めに到着していた。
なぜかって……?
遅刻でもしてみろ……。
罵声を浴びせられ、きっと遅刻した罰として「フルコースよ!」と、おこずかいがすっからかんになるのが目に見えている。
女の子と二人で出掛ける事自体、初体験なのだ。緊張のあまり昨夜は眠れなかった。
こんなことなら悠斗のエッチのお誘い受ければ良かったかな?
でも、昨日の悠斗はたがが外れそうだったしな……ははは……。
今日動けなくなったら困るからと、仲直りエッチは丁重に断った。悠斗も「それもそうか……」とちょっぴり残念そうにしながら、「襲いたくなるから自分の家に帰るね?」と、キラキラスマイルで不純なこと呟き帰っていった。
白桜駅前は休日のせいか賑わっている。季節の変わり目だからか、服装もまばらだ。半袖や長袖姿の人が、待ち合わせによく使われる謎のオブジェの前に、スマホを弄りながら時間潰しをしている。
俺もスマホで悠斗に「駅に着いた」とメッセージを送り、どこで昼食を取ろうかと口コミを閲覧していた。
……女の子ってやっぱイタリアン?
でも、普段いい美味いもん食ってそうだよなー。
懐石料理とか強請られたらどうしよう……。
……いや、デートでもあるまいし、そもそも奢る必要あるのか?
ないな……むしろ助けようとしていた俺と由良りんに、ご馳走するのが筋じゃね?
黒天使め……ありゃ天使つーか……。
俺からしたら地球外生物にしか思えない。今まで出会った女子達は三浦さんや矢田さんのように、濃いキャラだが皆常識のある女子だった。
環樹先輩も若干宇宙人だが、アレはおちゃらけてるだけだ。ここぞというときにはピシッと決める、意外と頼りになる人だ。
「お待たせ」
俺に声を掛けたと思ったがどうやら違うらしい。時間になっても来ない斎賀さんを、キョロキョロとして探すが見当たらない。昨日の誘いは俺の聞き間違えなのだろうか。それはそれでいいのだが、連絡先ぐらい聞いておけばよかったと小さなため息を吐いた。
例えばお嬢様なフリフリがいっぱいの短めスカートで車から降り、日傘でも差して優然とこちらへ向かってくる。そんなイメージがぴったりだ。
「寝坊助で遅刻魔って聞いていたのに。ずいぶん早いんじゃない?」
「……えっ?」
「えっ? じゃないし。早く来るほど楽しみだった?」
イメージとはときに恐ろしく人を混乱させるものらしい。制服のイメージが強いから余計にだが、想像とは真逆の、ボーイッシュな格好はとても待ち人とは思えなかった。
スラリとした細身のダメージジーンズに、ダボっとした長袖ロングTシャツ。おまけに深々と頭にキャップを被っている。よく見れば本人だが、パッと見ただけでは天使のような姿からは掛け離れていた。
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