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第13幕 ひとりぼっち
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光が一気に目の中へ飛び込んでくる。
水面が太陽の光を浴びてキラキラと宝石のように輝き、ゴツゴツとした岩壁は波紋を浮かべ、映像を映すように揺らめいていた。眩しいほどに鮮やかな色彩が広がっていた。
「…………うわぁ~~!」
「言葉も出ないね。凄く綺麗」
洞窟から異世界へ飛ばされてしまったのでは……そう錯覚させられる景色に、息を飲み固まってしまう。ファンタジー映画でも観ているのかと思うほど幻想的だ。
中心には大きな水溜りがあり、自然の吹き抜けが太陽を燦々と受け、青々とした木の葉が揺らめいている。木々の隙間の向こうには真っ青な空が広がり、空と緑が水溜りに反射している。周りには苔が茂り、所々に草花が生えまるでオアシスのようだ。
「雨水が溜まったのかな? 不思議な場所だね。海水も混ざっているはずなのに、植物がこんなに育っているなんて。いい穴場を教えてもらった」
「うん、普通海水だと枯れちゃうよね? この水入っても平気かな……」
足先をチョンと浸してみると、太陽で十分温められ丁度いい。特に害はないようで、泳げるのではと膝辺りまで浸かってみた。
「ん~~気持ちいい~♪ 波もないし水も透き通ってる」
「うん。瀬菜あそこ、ほら小岩のところ」
「小ちゃい。可愛いなぁ」
小岩の近くで列をなし、小さな尾ひれをパタパタと振る小魚。静かな空間は人の出入りも少なく、生き物にとっては楽園なのかもしれない。
小魚を脅かさないように中心までゆっくりと向かうと、ムニッとした物体に足を取られた。なにかいけないものを踏んでしまったのだろうか。恐る恐る足元に顔を向けると、その場に相応しくない大声をあげていた。
「ぎゃぁっっ~~‼︎ 悠斗っキモイッ‼︎ なんだよこれ‼︎」
片足をあげその物体から逃げると、もう片方の足でもそれを踏んでしまい身体がうしろに傾く。俺の声に驚いた悠斗がすかさず支えてくれる。ガクガクと震えながら悠斗にしがみつくと、足首付近に妙な白い粘りが糸を引いてべったりと絡みついていた。
「この白いのなに⁉︎ 気持ち悪いしベタベタしてるよ~」
「ああ、これは……瀬菜に踏まれて感じちゃったんだね」
悠斗は黒いブヨブヨのそれを持ち上げると、そいつはピューっと水を吐き出し縮こまり棒状に固まった。
な、なんか……卑猥だ。
これは……あれだ……。
悠斗の手の中のそれと、悠斗の股間辺りを交互に見つめてしまう。
「……瀬菜どんな想像しているの? 見比べないでよ」
「だって、まんまじゃん‼︎」
「瀬菜も持ってるでしょ。カチカチでビュービュー昨日も出してた。それにこいつより、俺のほうが大きい」
「……お前……なに張り合っているんだよ。なぁこれなんなんだ?」
「ナマコだよ。種類までは分からないけど、身を守るために白い液体を出すんだ」
「へぇ~……てか、これ粘着力凄いんだけど……取れない」
水中で足を揺らし洗うが、余計に絡まってくる。焦る俺を悠斗は抱き上げ、水からあがり大きな岩の上に俺を下ろすと、その横に寝転んだ。
「なぁ、これ……どうしたらいいんだ?」
ちょんちょんと突いてみても、網のように貼り付き動かない。
「んー、そのうち取れるよ。瀬菜も横になりなよ。凄く気持ちいい……」
悠斗は他人事に欠伸をすると瞳を閉じてしまう。
「悠斗~~! 俺は気持ち悪い」
「瀬菜、諦めることも時には必要だよ」
そう言われ、もしやこれは一生取れないのでは? ……と、この世の終わりのように青ざめる俺。悠斗はそんな俺をチラリと横目で見ると、フッと笑い空を見上げる。風がそよぎ、吹き抜けを覆う木々が葉を揺らし、丁度いい日陰になっている。
心地良さそうにする悠斗に習って渋々横に寝転ぶ。自然の音に包まれ、雑音のない空間は安らぎ、暑さも感じない。無駄なことを考えずぼんやりするのも悪くはない。急に大人しくなった俺を窺うように悠斗が抱きしめ、額にキスをちゅっとしてくる。猫のように二人でくっつきながら、微睡みの世界に浸っていた。
水面が太陽の光を浴びてキラキラと宝石のように輝き、ゴツゴツとした岩壁は波紋を浮かべ、映像を映すように揺らめいていた。眩しいほどに鮮やかな色彩が広がっていた。
「…………うわぁ~~!」
「言葉も出ないね。凄く綺麗」
洞窟から異世界へ飛ばされてしまったのでは……そう錯覚させられる景色に、息を飲み固まってしまう。ファンタジー映画でも観ているのかと思うほど幻想的だ。
中心には大きな水溜りがあり、自然の吹き抜けが太陽を燦々と受け、青々とした木の葉が揺らめいている。木々の隙間の向こうには真っ青な空が広がり、空と緑が水溜りに反射している。周りには苔が茂り、所々に草花が生えまるでオアシスのようだ。
「雨水が溜まったのかな? 不思議な場所だね。海水も混ざっているはずなのに、植物がこんなに育っているなんて。いい穴場を教えてもらった」
「うん、普通海水だと枯れちゃうよね? この水入っても平気かな……」
足先をチョンと浸してみると、太陽で十分温められ丁度いい。特に害はないようで、泳げるのではと膝辺りまで浸かってみた。
「ん~~気持ちいい~♪ 波もないし水も透き通ってる」
「うん。瀬菜あそこ、ほら小岩のところ」
「小ちゃい。可愛いなぁ」
小岩の近くで列をなし、小さな尾ひれをパタパタと振る小魚。静かな空間は人の出入りも少なく、生き物にとっては楽園なのかもしれない。
小魚を脅かさないように中心までゆっくりと向かうと、ムニッとした物体に足を取られた。なにかいけないものを踏んでしまったのだろうか。恐る恐る足元に顔を向けると、その場に相応しくない大声をあげていた。
「ぎゃぁっっ~~‼︎ 悠斗っキモイッ‼︎ なんだよこれ‼︎」
片足をあげその物体から逃げると、もう片方の足でもそれを踏んでしまい身体がうしろに傾く。俺の声に驚いた悠斗がすかさず支えてくれる。ガクガクと震えながら悠斗にしがみつくと、足首付近に妙な白い粘りが糸を引いてべったりと絡みついていた。
「この白いのなに⁉︎ 気持ち悪いしベタベタしてるよ~」
「ああ、これは……瀬菜に踏まれて感じちゃったんだね」
悠斗は黒いブヨブヨのそれを持ち上げると、そいつはピューっと水を吐き出し縮こまり棒状に固まった。
な、なんか……卑猥だ。
これは……あれだ……。
悠斗の手の中のそれと、悠斗の股間辺りを交互に見つめてしまう。
「……瀬菜どんな想像しているの? 見比べないでよ」
「だって、まんまじゃん‼︎」
「瀬菜も持ってるでしょ。カチカチでビュービュー昨日も出してた。それにこいつより、俺のほうが大きい」
「……お前……なに張り合っているんだよ。なぁこれなんなんだ?」
「ナマコだよ。種類までは分からないけど、身を守るために白い液体を出すんだ」
「へぇ~……てか、これ粘着力凄いんだけど……取れない」
水中で足を揺らし洗うが、余計に絡まってくる。焦る俺を悠斗は抱き上げ、水からあがり大きな岩の上に俺を下ろすと、その横に寝転んだ。
「なぁ、これ……どうしたらいいんだ?」
ちょんちょんと突いてみても、網のように貼り付き動かない。
「んー、そのうち取れるよ。瀬菜も横になりなよ。凄く気持ちいい……」
悠斗は他人事に欠伸をすると瞳を閉じてしまう。
「悠斗~~! 俺は気持ち悪い」
「瀬菜、諦めることも時には必要だよ」
そう言われ、もしやこれは一生取れないのでは? ……と、この世の終わりのように青ざめる俺。悠斗はそんな俺をチラリと横目で見ると、フッと笑い空を見上げる。風がそよぎ、吹き抜けを覆う木々が葉を揺らし、丁度いい日陰になっている。
心地良さそうにする悠斗に習って渋々横に寝転ぶ。自然の音に包まれ、雑音のない空間は安らぎ、暑さも感じない。無駄なことを考えずぼんやりするのも悪くはない。急に大人しくなった俺を窺うように悠斗が抱きしめ、額にキスをちゅっとしてくる。猫のように二人でくっつきながら、微睡みの世界に浸っていた。
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