440 / 716
第13幕 ひとりぼっち
18
しおりを挟む
テーブルにお誕生日のお祝いのメッセージカードも置かれており、自分の誕生日を改めて実感する。着替えもせずに食べる優雅な夕食は、贅沢以外に当てはまるものはない。
「妖精さんでも居るのかって思っちゃった」
「ふふっ、素敵な妖精さんだね。お誕生日おめでとう。瀬菜の一年が今年も幸せでありますように」
「へへっ、ありがとう♪」
チンッとグラスを合わせ、炭酸水でそれっぽく乾杯をする。冷えた炭酸が口の中でシュワシュワと弾け、お風呂上がりで火照った身体に丁度良く染み込んでいく。
「それで悠斗……取り引きって?」
「爺様は渋々だったけど、俺が将来リッカに携わること。但し条件は祐一さんが社長になるのが前提。それ以外は知りませんってね」
「それで納得するのか? だってジャイ○ンみたいな爺ちゃんだろ?」
「爺様が横暴なら、俺も相当横暴だよ。俺がリッカに入るんだ。それぐらい譲歩してくれないと。だいたいファミリー経営していたら、ゆくゆくは経営が立ち回らなくなる。新しい風を取り入れるのも必要だよ」
悠斗はそう言い、グラスを傾ける。その堂々とした姿に、俺は呆れてしまう。
「お前は高校生なのか? 悠斗はほかに、やりたいことあったの?」
「大きな夢はないけど、同族経営で経験は積めないかなって。あっ、でも経営には興味ある。小さい会社でもいいんだ。それでね、いずれ歳をとったら、瀬菜と話し合って小さなお店を開きたい。海か山の自然に囲まれて、時間に追われず二人でゆっくり過ごしたいんだ。ふんわりとした細やかな夢だよ」
悠斗の言葉に俺はしばらくキョトンとしながら固まると、どんどん赤く顔を火照らせてしまう。今日は一体何度プロポーズみたいなことを言われるのだろう。
一緒に居たいと俺も確かに思っていたが、悠斗ほど現実味はなかった。悠斗の話で目の前に自分達の未来の光景が、パッと広がったのだ。
「……瀬菜?」
首をブンブンと振り目の前の食事に視線を彷徨わせ、ガツガツと食べ始める俺に、悠斗はスッと手を伸ばしてくる。頰に触れた悠斗の指先にビクッとなり、視線を合わせると唇を舐めながら俺を見つめていた。
「……な、なんだよ……」
「ん?」
「……お前も早く食べろ」
「うん。いつも思うけど、瀬菜が美味しそうに食べている姿って、凄くいいよね。俺も食べたくなっちゃう」
なっ、なんだ‼
食べるのにその変な色気はいらねぇだろ‼
しばらく会っていない間に、俺の免疫落ちているのか⁉
「だ、だから食えばいいだろ?」
「あ~ん♡」
「あ~ん? って! それは俺のだぞ‼ 最後に取っておいたのにぃ~~‼」
俺がフォークに刺していたクレソンが、悠斗の口の中に無残にも消えていく。クレソン? って思うかもしれないが、苦味があって意外と美味しい付け合わせなのだ。
恨めしそうにフルフル震え悠斗にクレソンの存在を伝えれば、肩を震わせながら大爆笑している。
「妖精さんでも居るのかって思っちゃった」
「ふふっ、素敵な妖精さんだね。お誕生日おめでとう。瀬菜の一年が今年も幸せでありますように」
「へへっ、ありがとう♪」
チンッとグラスを合わせ、炭酸水でそれっぽく乾杯をする。冷えた炭酸が口の中でシュワシュワと弾け、お風呂上がりで火照った身体に丁度良く染み込んでいく。
「それで悠斗……取り引きって?」
「爺様は渋々だったけど、俺が将来リッカに携わること。但し条件は祐一さんが社長になるのが前提。それ以外は知りませんってね」
「それで納得するのか? だってジャイ○ンみたいな爺ちゃんだろ?」
「爺様が横暴なら、俺も相当横暴だよ。俺がリッカに入るんだ。それぐらい譲歩してくれないと。だいたいファミリー経営していたら、ゆくゆくは経営が立ち回らなくなる。新しい風を取り入れるのも必要だよ」
悠斗はそう言い、グラスを傾ける。その堂々とした姿に、俺は呆れてしまう。
「お前は高校生なのか? 悠斗はほかに、やりたいことあったの?」
「大きな夢はないけど、同族経営で経験は積めないかなって。あっ、でも経営には興味ある。小さい会社でもいいんだ。それでね、いずれ歳をとったら、瀬菜と話し合って小さなお店を開きたい。海か山の自然に囲まれて、時間に追われず二人でゆっくり過ごしたいんだ。ふんわりとした細やかな夢だよ」
悠斗の言葉に俺はしばらくキョトンとしながら固まると、どんどん赤く顔を火照らせてしまう。今日は一体何度プロポーズみたいなことを言われるのだろう。
一緒に居たいと俺も確かに思っていたが、悠斗ほど現実味はなかった。悠斗の話で目の前に自分達の未来の光景が、パッと広がったのだ。
「……瀬菜?」
首をブンブンと振り目の前の食事に視線を彷徨わせ、ガツガツと食べ始める俺に、悠斗はスッと手を伸ばしてくる。頰に触れた悠斗の指先にビクッとなり、視線を合わせると唇を舐めながら俺を見つめていた。
「……な、なんだよ……」
「ん?」
「……お前も早く食べろ」
「うん。いつも思うけど、瀬菜が美味しそうに食べている姿って、凄くいいよね。俺も食べたくなっちゃう」
なっ、なんだ‼
食べるのにその変な色気はいらねぇだろ‼
しばらく会っていない間に、俺の免疫落ちているのか⁉
「だ、だから食えばいいだろ?」
「あ~ん♡」
「あ~ん? って! それは俺のだぞ‼ 最後に取っておいたのにぃ~~‼」
俺がフォークに刺していたクレソンが、悠斗の口の中に無残にも消えていく。クレソン? って思うかもしれないが、苦味があって意外と美味しい付け合わせなのだ。
恨めしそうにフルフル震え悠斗にクレソンの存在を伝えれば、肩を震わせながら大爆笑している。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる