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第13幕 ひとりぼっち
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期末テストが終わるとあっという間に夏休みに突入だ。最近の俺は勉強も好調だった。教えてくれる悠斗先生の指導の賜物である。あとは俺自身が少しでも悠斗に近付きたいと、積極的だからかもしれない。
そのおかげでテストは手応えを感じ、いつも以上にスラスラ解くことができた。今から返却される結果が楽しみである。
生徒会も慌ただしく昨年同様に夕涼み会が開催される。今年は去年のスケジュールが生徒会メンバーがテストに打ち込めないと、環樹先輩へのクレームの嵐だったようで、期末テスト明けの夏休み前に開催をずらしていた。
今回は俺達も裏方に徹するため、浴衣でゆっくり花火を見ることはできなそうだ。丁度去年の今頃、悠斗と色々一悶着あった頃だ。まだ幼馴染でまさか恋愛に発展するとは思っていなかった。
今思うとたった一年前のことなのに、懐かしくて自分が右往左往している姿がおかしくて堪らない。
「なーに? 姫乃ちゃんってばニヤケちゃって」
「へへっ、一年ってあっという間だなって。去年の夕涼み会は俺、浴衣着るの大変だったんだ。誰がこんなの開催したんだって思ってた」
「あはは。それはね。僕だよ~♪ 勉強ばかりだと嫌になっちゃうでしょ? お祭り騒ぎも必要かな~ってね」
「それはそうだけど、生徒会のメンバーは大変だ」
「まぁね~。去年はブーイング酷かったな~。でもね、生徒会には取っておきがそのあとあるんだよ?」
「取っておき?」
「うん。それは後のお楽しみ~♪」
環樹先輩はニヤッと笑うと勿体ぶって、なにがあるのか教えてはくれなかった。
きっとどうしようもないことだ……。
期待しないほうがいいに違いない……。
「ヤナこれ終わった。ほかに手伝えることあるか?」
「えっと……それじゃこれよろしく」
「姫乃ちゃんは結構やり手だね~。いつの間に狼くん手懐けたの?」
ジロッと働かない先輩を睨みつけ、誰のせいだと訴える。由良りんは生徒会には所属していないが、今ではすっかり働き者で大助かりだ。
時間が空いているときは俺達に放課後ついてきて、なんとなく仕事を一緒にしている。由良りん曰く暇潰しらしい。但し、なぜか俺のお願いしか聞かない。
「先輩ってここぞっていうときしか動かないんだから。由良りんのが全然生徒会メンバーっぽい」
「ここぞというときに動くのが僕の役目なの。姫乃ちゃんにはマスコットで女装して欲しいな」
「ヤナの女装? 俺も見たい」
うしろを向いて作業をしていたはずの由良りんは、パッと振り返りながら目を輝かせていた。
「しないよ! 俺、女装は封印したんだ!」
「浴衣の女装見たい。ヤナなら絶対可愛い」
「おお、由良君分かっているね~♪ 滅茶苦茶可愛いんだよ♪」
「瀬菜が可愛いなんて当たり前。女装はなしです。勿体ない」
悠斗が割って入ると、ピシャリと駄目だと断言する。その言葉にでかしたとパーっと笑顔になる俺。由良りんと先輩は舌打ちしていた。
夕涼み会が終われば翌日にはテスト休みに入り、そのまま夏休みに突入する。慌ただしくも平穏に時間は過ぎていく。夏休みはプールに花火大会、今年は海にも行こうと話していた。
夏はなぜだかワクワクすることがいっぱいだ。満喫するぞと意気込んで、手元の業務をこなしていった。
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