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第12幕 修学旅行はお遊びではありません
07
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さぁ出発と足を進めようとすると、うしろから襟を掴まれてしまう。
「お前ら……俺を置いていくつもりか?」
「げっ! 本当に一緒に行くのかよ!」
襟を掴まれた俺は人質です。
「げっ、とはなんだ。抜き打ち同行だ。まぁ、おおかた宮島に向かうから監視も兼ねてだ」
「別に俺達と一緒じゃなくてもいいだろ? てか手離せよー!」
「ビッチちゃんが狼の群れに襲われないように、俺が付き添ってやるんだ。喜べよ」
「俺はビッチじゃない! てか襲う奴こん中に……まぁ居なくはないけど!」
悠斗は佐上先生から俺を救出しながら、呆れた様子で言った。
「はぁ……先生。瀬菜をからかわないでください。早く行きますよ」
悠斗がピシャリと言うと、佐上先生は「王子にお供いたします」と冗談を言いながらついて来る。
いつもの悠斗らしくもあるが、やはり俺達と居るときの悠斗らしくはない。佐上先生に付き合っていたら日が暮れてしまうので、悠斗の進言は間違ってはいないとも思う。
村上のシャツの袖をチョイチョイと引っ張り耳打ちをする。
「ねぇ、村上、悠斗さ昨日からなんか変じゃない?」
「そうかな……。柳ちゃんとイチャイチャするの抑えてるからじゃない? 王子なりに心の中で葛藤してる気もするけど」
「そうか? ならいいんだけど……」
「きっとね。夜も何度か起きてたっぽいし……」
俺はグッスリで気付かなかったが、大人数で眠れなかったのだろうか。
「新幹線で俺が怒ったからかな……」
「さぁ、王子たまに抱え込むから。あとで甘えてみたら?」
「うん……」
悠斗の背中に視線を向けると、あとを追うように小走りで駆け寄った。
宮島へ到着するとフェリー乗り場へと向かう。先生曰く宮島は一日でも足りないらしい。夜は学校側でナイトクルーズを組んでくれたので、また違った景色も見れる楽しみもあった。
干潮と満潮で全然景色が変わると有名な厳島神社の方面へと歩いていく。通り道には商店街があったが、朝早いためかまだシャッターが閉められていた。鹿もどこからともなく現れて、人懐っこさに驚く。
フェリーからも見えた大鳥居の下まで行くことができ、下から見上げる朱色と空の青い色が美しいとひと言で片付けるのが勿体無いほどだ。満潮の名残りか地面は水で濡れ、緑の百草が覆っている。太陽で干された百草はフワフワと不思議な感覚で、雪の上を歩くのともまた違っていた。
一頻り大鳥居の下で遊ぶと、厳島神社へと参拝に向かった。大鳥居と同じように朱色で鮮やかな神社は幻想的で気が引き締まる。ここが水の中に浮かぶとは思えないが、満潮の美しい姿にみな息を飲むらしい。
なんの神様が祀られているかは俺には分からなかったが、一応神様にはお願いをする。ちゃんとお参りしないと、あとで痛い目に合うのは経験済み。
無事に帰れますように……。
重要なことです。はい。
参拝を終えるとお昼頃になっていた。ロープウェイに行くのもいいが、かなり時間的が掛かるので昼食を取ることにした。先生もお昼を食べたらきっとどこか違う班に行ってくれるだろう。
名物の牡蠣料理を楽しめる牡蠣専門のお店へと行き、なぜか先生をおもてなしする。
「お前ら結構真面目だなー。まぁこれが高校生らしいのか」
「先生……俺らのことどういう目で見ているんだよ」
「てか、本気でお昼まで一緒とか思わなかった」
「でも、先生のおかげで色々知らないこと教えてもらえたし、良かったじゃん」
「先生も意外と真面目だったんですね?」
「お前ら……俺を置いていくつもりか?」
「げっ! 本当に一緒に行くのかよ!」
襟を掴まれた俺は人質です。
「げっ、とはなんだ。抜き打ち同行だ。まぁ、おおかた宮島に向かうから監視も兼ねてだ」
「別に俺達と一緒じゃなくてもいいだろ? てか手離せよー!」
「ビッチちゃんが狼の群れに襲われないように、俺が付き添ってやるんだ。喜べよ」
「俺はビッチじゃない! てか襲う奴こん中に……まぁ居なくはないけど!」
悠斗は佐上先生から俺を救出しながら、呆れた様子で言った。
「はぁ……先生。瀬菜をからかわないでください。早く行きますよ」
悠斗がピシャリと言うと、佐上先生は「王子にお供いたします」と冗談を言いながらついて来る。
いつもの悠斗らしくもあるが、やはり俺達と居るときの悠斗らしくはない。佐上先生に付き合っていたら日が暮れてしまうので、悠斗の進言は間違ってはいないとも思う。
村上のシャツの袖をチョイチョイと引っ張り耳打ちをする。
「ねぇ、村上、悠斗さ昨日からなんか変じゃない?」
「そうかな……。柳ちゃんとイチャイチャするの抑えてるからじゃない? 王子なりに心の中で葛藤してる気もするけど」
「そうか? ならいいんだけど……」
「きっとね。夜も何度か起きてたっぽいし……」
俺はグッスリで気付かなかったが、大人数で眠れなかったのだろうか。
「新幹線で俺が怒ったからかな……」
「さぁ、王子たまに抱え込むから。あとで甘えてみたら?」
「うん……」
悠斗の背中に視線を向けると、あとを追うように小走りで駆け寄った。
宮島へ到着するとフェリー乗り場へと向かう。先生曰く宮島は一日でも足りないらしい。夜は学校側でナイトクルーズを組んでくれたので、また違った景色も見れる楽しみもあった。
干潮と満潮で全然景色が変わると有名な厳島神社の方面へと歩いていく。通り道には商店街があったが、朝早いためかまだシャッターが閉められていた。鹿もどこからともなく現れて、人懐っこさに驚く。
フェリーからも見えた大鳥居の下まで行くことができ、下から見上げる朱色と空の青い色が美しいとひと言で片付けるのが勿体無いほどだ。満潮の名残りか地面は水で濡れ、緑の百草が覆っている。太陽で干された百草はフワフワと不思議な感覚で、雪の上を歩くのともまた違っていた。
一頻り大鳥居の下で遊ぶと、厳島神社へと参拝に向かった。大鳥居と同じように朱色で鮮やかな神社は幻想的で気が引き締まる。ここが水の中に浮かぶとは思えないが、満潮の美しい姿にみな息を飲むらしい。
なんの神様が祀られているかは俺には分からなかったが、一応神様にはお願いをする。ちゃんとお参りしないと、あとで痛い目に合うのは経験済み。
無事に帰れますように……。
重要なことです。はい。
参拝を終えるとお昼頃になっていた。ロープウェイに行くのもいいが、かなり時間的が掛かるので昼食を取ることにした。先生もお昼を食べたらきっとどこか違う班に行ってくれるだろう。
名物の牡蠣料理を楽しめる牡蠣専門のお店へと行き、なぜか先生をおもてなしする。
「お前ら結構真面目だなー。まぁこれが高校生らしいのか」
「先生……俺らのことどういう目で見ているんだよ」
「てか、本気でお昼まで一緒とか思わなかった」
「でも、先生のおかげで色々知らないこと教えてもらえたし、良かったじゃん」
「先生も意外と真面目だったんですね?」
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