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第12幕 修学旅行はお遊びではありません
04
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一日目の宿泊先は広島駅周辺だったため、駅付近の探索に絞り込まれた。純和風の旅館に荷物を置きに行くと、部屋割りも配られた。一室四名の部屋に五人を詰め込むという節約だ。それでも十分広い部屋で、旅館は大浴場などもあり満足だ。
滅多に見ることのないチンチン電車に乗り、車と並行して走る電車に興奮してしまう。グループ行動とはいえ、同じ学校の生徒が多い。だいたい行き先は一緒だろうか。順路が異なるので分散されているが、明らかに修学旅行生丸出しだ。
お昼頃の到着だったので、先ずは腹ごしらえとサクッと麺物をチョイス。それでも人気店なのか少し並び、汁の少ない担々麺はちょっぴり辛くて、山椒がツーンと鼻を抜け癖になりそうな味だった。
「早速当たりだねー」
「美味しかった~。甘い物も食べたいけど……」
「瀬菜に付き合ってたら、食うだけで日が暮れる」
「おやつは回ってからだね」
「次、平和記念公園のほうだよな。結構ショック受けるかもな……」
暗い面持ちの由良りん。
「由良りん、広島来たことあるの?」
「ああ、中学のときも修学旅行広島だったから」
「すげぇ確率じゃん。高校もって……」
「中学は京都と奈良多いのにな」
「縁があるってことは、なにか意味があるんじゃない?」
「さぁ? まぁ……闘争心は嫌でも治る。資料館とか見ると特にな……」
由良りんが言うように向かった資料館は、心が砕けそうになってしまった。俺達は経験していないことでも、その凄まじさを実感させられる。現実とは思えないほど、悲惨な資料が残されていた。
一番にここを選んだのは正解だったかもしれない。平和記念公園は、今は綺麗に整備され緑が豊かだ。所々に当時の痛みが点在している。街頭で原爆について訴える人や当時の建物を見ると、無差別に起こった戦争に、平和というものがいかに幸せなことなのか、今の生活を噛み締めていた。
「……悲しいことだよね」
「うん。でも来て良かった」
「だな。知らなければまた繰り返す」
「ひとりでも若い世代には伝えなきゃだよね」
「ああ、今の日本が平和なのは過去があったからだしな」
俺達がこれからどう日本を平和にできるかだいそれたことは言えないけど、痛みを知れば少しは未来も変わるかもしれない。
拓けた広場で黙祷をすると、優しく風が通り過ぎる。どうか伝えてと……未来を委ねられたような気がした。
「それじゃ、気分を変えて!」
「おやつ‼」
「お前子供みてぇだな」
「それはもうちょいあとだ。先に広島城のほう行かないと閉まる」
「閉館時間早いもんね。瀬菜おやつはもう少し我慢して?」
子供をあしらうように、俺にみんなで我慢しろと言ってくる。俺だって我慢ぐらいできるわ! と若干不貞腐る。またチンチン電車で移動して街中を抜けるが、お城らしき建物は見当たらない。
下車して少し歩くと、歴史を感じる門構えが見えてきた。近代的な通りに急に現れる景色はなんとも不思議だ。
門を潜ると綺麗に整備された庭が広がる。季節の草花が庭園のように植えられ、砂利の道がタイムスリップした気分だ。歴史は詳しくないけど、武将の格好をした役者さんが、入り口付近で劇をしていた。
目当ての天守閣へ向かうと、急に現れるお城にジーンとした。石階段の下から見上げる天守閣は雅だ。圧倒的な存在感と風景が心を震わせる。
「ねぇ、上登れる?」
「もちろん。瀬菜がおやつ我慢してくれたからね」
「もう、おやつのことはいいから、早く上から景色見たい!」
上まで登るのはいい運動だった。各階には展示品の数々で足を休めながらではあったが、結構シンドイ。それでも上から眺める景色は最高だった。
滅多に見ることのないチンチン電車に乗り、車と並行して走る電車に興奮してしまう。グループ行動とはいえ、同じ学校の生徒が多い。だいたい行き先は一緒だろうか。順路が異なるので分散されているが、明らかに修学旅行生丸出しだ。
お昼頃の到着だったので、先ずは腹ごしらえとサクッと麺物をチョイス。それでも人気店なのか少し並び、汁の少ない担々麺はちょっぴり辛くて、山椒がツーンと鼻を抜け癖になりそうな味だった。
「早速当たりだねー」
「美味しかった~。甘い物も食べたいけど……」
「瀬菜に付き合ってたら、食うだけで日が暮れる」
「おやつは回ってからだね」
「次、平和記念公園のほうだよな。結構ショック受けるかもな……」
暗い面持ちの由良りん。
「由良りん、広島来たことあるの?」
「ああ、中学のときも修学旅行広島だったから」
「すげぇ確率じゃん。高校もって……」
「中学は京都と奈良多いのにな」
「縁があるってことは、なにか意味があるんじゃない?」
「さぁ? まぁ……闘争心は嫌でも治る。資料館とか見ると特にな……」
由良りんが言うように向かった資料館は、心が砕けそうになってしまった。俺達は経験していないことでも、その凄まじさを実感させられる。現実とは思えないほど、悲惨な資料が残されていた。
一番にここを選んだのは正解だったかもしれない。平和記念公園は、今は綺麗に整備され緑が豊かだ。所々に当時の痛みが点在している。街頭で原爆について訴える人や当時の建物を見ると、無差別に起こった戦争に、平和というものがいかに幸せなことなのか、今の生活を噛み締めていた。
「……悲しいことだよね」
「うん。でも来て良かった」
「だな。知らなければまた繰り返す」
「ひとりでも若い世代には伝えなきゃだよね」
「ああ、今の日本が平和なのは過去があったからだしな」
俺達がこれからどう日本を平和にできるかだいそれたことは言えないけど、痛みを知れば少しは未来も変わるかもしれない。
拓けた広場で黙祷をすると、優しく風が通り過ぎる。どうか伝えてと……未来を委ねられたような気がした。
「それじゃ、気分を変えて!」
「おやつ‼」
「お前子供みてぇだな」
「それはもうちょいあとだ。先に広島城のほう行かないと閉まる」
「閉館時間早いもんね。瀬菜おやつはもう少し我慢して?」
子供をあしらうように、俺にみんなで我慢しろと言ってくる。俺だって我慢ぐらいできるわ! と若干不貞腐る。またチンチン電車で移動して街中を抜けるが、お城らしき建物は見当たらない。
下車して少し歩くと、歴史を感じる門構えが見えてきた。近代的な通りに急に現れる景色はなんとも不思議だ。
門を潜ると綺麗に整備された庭が広がる。季節の草花が庭園のように植えられ、砂利の道がタイムスリップした気分だ。歴史は詳しくないけど、武将の格好をした役者さんが、入り口付近で劇をしていた。
目当ての天守閣へ向かうと、急に現れるお城にジーンとした。石階段の下から見上げる天守閣は雅だ。圧倒的な存在感と風景が心を震わせる。
「ねぇ、上登れる?」
「もちろん。瀬菜がおやつ我慢してくれたからね」
「もう、おやつのことはいいから、早く上から景色見たい!」
上まで登るのはいい運動だった。各階には展示品の数々で足を休めながらではあったが、結構シンドイ。それでも上から眺める景色は最高だった。
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