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第12幕 修学旅行はお遊びではありません
03
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東京駅まで白桜駅から電車に揺られ、朝悪戯されたことを注意しておくが、反省がまったくないようだ。ラッシュにはまだ早いが、そこそこ混んでいる電車の中で流石に騒ぐ訳にもいかない。
普段徒歩で行く通学とは異なる車内の空気は、どこかピリピリとし殺伐としていたのだ。白桜南の学生をちらほら見つけたが、朝の空気を感じ取り皆会話は控えめだが、課外授業にウキウキした雰囲気を発していた。
東京駅に着き電車から降りると、肺いっぱいに空気を吸い込む。
「……はぁ~。なんか息が詰まりそうだった」
「だね。いつもより学生多いからかな? みんな眉間にシワ刻んでたよね」
「社会人になったら毎日通勤だけで病みそう」
「これも課外授業で得られた経験だね」
大きな荷物で周りは邪魔だなと、イラッとしたに違いない。肩に掛けた荷物を背負い直すと、新幹線のホームまで向かった。
東京駅は会社員や旅行客で賑わい、ホームまで辿り着くのも一苦労だ。途切れない人の通行を縫って歩くが、荷物が何度かぶつかりヨロヨロしてしまう。まだ目的地に到着していないのに、早くも家に帰りたいと思ってしまうほどだ。
それでも見知った顔を見つければ、顔が綻んでホッとする。担任と委員長達が点呼を取ってくれており、到着したことを伝え、俺達が乗車する新幹線をまだかまだかと待ち侘びていた。
貸切の車内は朝早いからか最初こそは笑い声で賑わっていたが、一時間ほどすると数名が話し込んでいるだけで、ほとんどが眠りに就いたりスマホや読書をしている様子だった。
そんな俺も最初こそテンション高くはしゃいでいたが、富士山を見終わった辺りから、気付けば眠ってしまっていた。
「瀬菜……もうすぐ着くよ?」
「……ん?」
アレ……俺寝てた……。
って……なんか……腰の辺りに……。
「悠斗……手……」
「おはよう。グッスリだったね?」
「だから……手……」
「別に誰からも見えないからいいでしょ?」
しっかり俺に掛けられたカーデガンは、俺に巻き付いている悠斗の腕を隠していた。固定された腕のせいか、俺も悠斗の肩に頭を預けて眠ってしまっていたようだ。
現地に到着する前からこの調子だと、隙あらば悠斗は俺に触れてくるに違いない。別に触られるのが嫌という訳ではないが、周りの視線が気になってしまうのだ。
「寝ているときは素直に俺にベッタリだったのに、起きた途端に警戒するなんてショックだよ」
「ああ、そう……。朝しっかり充電しただろが」
「前にも言ったでしょ? 瀬菜が可愛いことばっかりするから、すぐに電池切れちゃうの」
「イヤ、俺寝てただけだし……」
フンとしながら窓を見れば、隣の三人席に座る多澤と村上と由良りんが、こちらを見ている姿が映っていた。
ほら、見られてるじゃないか!
そんな冷たい目で見るな!
むしろ俺被害者だからな!
悠斗の手の甲をギュッと抓ると、拘束は解かれ不満そうにする悠斗に再度釘を刺しておいた。目を覚ますには丁度いいじゃれ合いをすると、軽快な音楽と共に間もなく広島……と、到着を知らせるアナウンスが流れた。
行ったことのない土地に、どんな感動や感心が生まれるか、美味しいものをいっぱい食べ、五人で考えたプランをスムーズに辿れたらと期待に胸を弾ませた。
普段徒歩で行く通学とは異なる車内の空気は、どこかピリピリとし殺伐としていたのだ。白桜南の学生をちらほら見つけたが、朝の空気を感じ取り皆会話は控えめだが、課外授業にウキウキした雰囲気を発していた。
東京駅に着き電車から降りると、肺いっぱいに空気を吸い込む。
「……はぁ~。なんか息が詰まりそうだった」
「だね。いつもより学生多いからかな? みんな眉間にシワ刻んでたよね」
「社会人になったら毎日通勤だけで病みそう」
「これも課外授業で得られた経験だね」
大きな荷物で周りは邪魔だなと、イラッとしたに違いない。肩に掛けた荷物を背負い直すと、新幹線のホームまで向かった。
東京駅は会社員や旅行客で賑わい、ホームまで辿り着くのも一苦労だ。途切れない人の通行を縫って歩くが、荷物が何度かぶつかりヨロヨロしてしまう。まだ目的地に到着していないのに、早くも家に帰りたいと思ってしまうほどだ。
それでも見知った顔を見つければ、顔が綻んでホッとする。担任と委員長達が点呼を取ってくれており、到着したことを伝え、俺達が乗車する新幹線をまだかまだかと待ち侘びていた。
貸切の車内は朝早いからか最初こそは笑い声で賑わっていたが、一時間ほどすると数名が話し込んでいるだけで、ほとんどが眠りに就いたりスマホや読書をしている様子だった。
そんな俺も最初こそテンション高くはしゃいでいたが、富士山を見終わった辺りから、気付けば眠ってしまっていた。
「瀬菜……もうすぐ着くよ?」
「……ん?」
アレ……俺寝てた……。
って……なんか……腰の辺りに……。
「悠斗……手……」
「おはよう。グッスリだったね?」
「だから……手……」
「別に誰からも見えないからいいでしょ?」
しっかり俺に掛けられたカーデガンは、俺に巻き付いている悠斗の腕を隠していた。固定された腕のせいか、俺も悠斗の肩に頭を預けて眠ってしまっていたようだ。
現地に到着する前からこの調子だと、隙あらば悠斗は俺に触れてくるに違いない。別に触られるのが嫌という訳ではないが、周りの視線が気になってしまうのだ。
「寝ているときは素直に俺にベッタリだったのに、起きた途端に警戒するなんてショックだよ」
「ああ、そう……。朝しっかり充電しただろが」
「前にも言ったでしょ? 瀬菜が可愛いことばっかりするから、すぐに電池切れちゃうの」
「イヤ、俺寝てただけだし……」
フンとしながら窓を見れば、隣の三人席に座る多澤と村上と由良りんが、こちらを見ている姿が映っていた。
ほら、見られてるじゃないか!
そんな冷たい目で見るな!
むしろ俺被害者だからな!
悠斗の手の甲をギュッと抓ると、拘束は解かれ不満そうにする悠斗に再度釘を刺しておいた。目を覚ますには丁度いいじゃれ合いをすると、軽快な音楽と共に間もなく広島……と、到着を知らせるアナウンスが流れた。
行ったことのない土地に、どんな感動や感心が生まれるか、美味しいものをいっぱい食べ、五人で考えたプランをスムーズに辿れたらと期待に胸を弾ませた。
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