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第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺
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昨日俺達が帰ったあとに、遙さんに罰として手袋なしで染めさせたとか……。おかげで遼さんはまだ涼しいとはいえ、革手袋をしながら仕事をしているらしい。
「イメチェンはまぁ、遙に悪戯の見返り。殴らないだけマシだろ? それと、ヤナが前髪あったほうが似合うって、前に言ってくれただろ? やっぱ好きな奴の言うことは聞くもんだ。そうだろ? ユウ……」
「はぁ? カナちゃん吹っ切れたんじゃないの?」
「いつ俺はフラれた?」
由良りんは俺に確認をしてくる。
「嘘でしょ……瀬菜! カナちゃんにも、俺に言ったみたいに嫌いってハッキリ言ってよ!」
「それ俺どうにもできなくね? 嫌いじゃないのに言っちゃダメだもん」
「そんな……瀬菜、俺に言ったのは本気……」
ガーンとショックを隠しきれない悠斗は、魂が抜けたように白くなり、椅子にヨロヨロと座り込んで項垂れた。
「狭い世の中だぜ。こんなに周りには、ほかにも人間が居るってのによ。悠斗も執着型なら、カナちゃんもかよ……だりぃなー」
「柳ちゃんは天使だからね。みんな騙されるんだね~」
「ちょ、ちょっと村上! 俺騙していないぞ!」
「柳ちゃん無自覚だから……」
「瀬菜はイジって楽しむもんだぞ?」
「それもいいけど、俺は今は愛でたい。好きなもんはそう簡単に変わんねぇ」
「……こうなったら瀬菜は監禁するしかない」
それぞれが言いたい放題だ。
特に悠斗は恐ろしいことを言ってる。
「ユウは傲慢だよなー。ほら、いつでも俺はお前を受け止める準備はできてるぞ? 遙も言っていただろ? 俺は優良物件だって」
ああ、物件って……そういう意味か……ははは。
由良りんは無理強いする人じゃないけど……。
友達として二人で出掛けるのは許してもらえなそうだ……。
でも、今なら悠斗があんなに躊躇してたのも分かるな……。
はっ‼ 俺ってば酷い恋人じゃね⁉
ひとり百面相をしていると、またみんなが俺を弄りだす。由良りんが多澤に便乗すると、俺は反論できなくなる。この二人はタッグを組ませてはいけないかもしれない。
「も~っ! みんなして‼︎ 俺の日常だけは壊すな~‼」
それでも……この空気は壊れそうにない。悠斗を見れば目くじらを立てる訳でもなく、どこか楽しそうだ。きっと由良りんのことを、ライバルという枠だけでなく、友達としても認めているのだろう。それは俺には分からない二人にしか理解できないなにかがあるように思える。
一時は恐怖した出来事も、こうして笑いに変わっていく。新しい出会いと共に、この新しいクラスで……これからも色々なことが起きそうな気がしてならない。いいことも、悪いことも。それでも日常は波乱を起こしつつ穏やかに過ぎていった。
「イメチェンはまぁ、遙に悪戯の見返り。殴らないだけマシだろ? それと、ヤナが前髪あったほうが似合うって、前に言ってくれただろ? やっぱ好きな奴の言うことは聞くもんだ。そうだろ? ユウ……」
「はぁ? カナちゃん吹っ切れたんじゃないの?」
「いつ俺はフラれた?」
由良りんは俺に確認をしてくる。
「嘘でしょ……瀬菜! カナちゃんにも、俺に言ったみたいに嫌いってハッキリ言ってよ!」
「それ俺どうにもできなくね? 嫌いじゃないのに言っちゃダメだもん」
「そんな……瀬菜、俺に言ったのは本気……」
ガーンとショックを隠しきれない悠斗は、魂が抜けたように白くなり、椅子にヨロヨロと座り込んで項垂れた。
「狭い世の中だぜ。こんなに周りには、ほかにも人間が居るってのによ。悠斗も執着型なら、カナちゃんもかよ……だりぃなー」
「柳ちゃんは天使だからね。みんな騙されるんだね~」
「ちょ、ちょっと村上! 俺騙していないぞ!」
「柳ちゃん無自覚だから……」
「瀬菜はイジって楽しむもんだぞ?」
「それもいいけど、俺は今は愛でたい。好きなもんはそう簡単に変わんねぇ」
「……こうなったら瀬菜は監禁するしかない」
それぞれが言いたい放題だ。
特に悠斗は恐ろしいことを言ってる。
「ユウは傲慢だよなー。ほら、いつでも俺はお前を受け止める準備はできてるぞ? 遙も言っていただろ? 俺は優良物件だって」
ああ、物件って……そういう意味か……ははは。
由良りんは無理強いする人じゃないけど……。
友達として二人で出掛けるのは許してもらえなそうだ……。
でも、今なら悠斗があんなに躊躇してたのも分かるな……。
はっ‼ 俺ってば酷い恋人じゃね⁉
ひとり百面相をしていると、またみんなが俺を弄りだす。由良りんが多澤に便乗すると、俺は反論できなくなる。この二人はタッグを組ませてはいけないかもしれない。
「も~っ! みんなして‼︎ 俺の日常だけは壊すな~‼」
それでも……この空気は壊れそうにない。悠斗を見れば目くじらを立てる訳でもなく、どこか楽しそうだ。きっと由良りんのことを、ライバルという枠だけでなく、友達としても認めているのだろう。それは俺には分からない二人にしか理解できないなにかがあるように思える。
一時は恐怖した出来事も、こうして笑いに変わっていく。新しい出会いと共に、この新しいクラスで……これからも色々なことが起きそうな気がしてならない。いいことも、悪いことも。それでも日常は波乱を起こしつつ穏やかに過ぎていった。
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