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第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺
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あの……悠斗君。
これ、言いたいことじゃないけど……。
唇に唇が触れる感触。
「……これじゃしたいことじゃん」
「クスッ、暗いしいいでしょ? でも、これじゃ足りない。早く帰ってセックスしよ」
「ばっ、馬鹿っ‼ そんな大声で叫ぶなッ!」
日差しが降り注ぐ中ではできないが、夜に紛れれば怖くない。見られたからといっても、俺達の気持ちは変わることはない。
由良りんにあんなに隠す必要も、本当はなかったのかもしれない。でも、できるなら穏やかに、トラブルを避けたいのが人間なのだ。
いつか日が燦々と注ぐ明るい場所でも、こうして手を繋げたら嬉しい。周りなんて気にしないで、強い気持ちで。
絡めた指先に力を込めると、指を這わせて撫で返される。いやらしいものではなく、優しく頭を撫でるような感覚と少し似ていた。そんな悠斗の優しいところに俺はまた、心から悠斗が好きだなと再確認させられるのだった。
***
フワフワとして心地いい。優しいぬくもりは幸せ過ぎて抜け出したくない。
「瀬菜……起きて」
「ん……もうちょい……」
「ふふっ……いつもの瀬菜だ」
「むぅぅ……擽ったい……」
背中に這わされた手のひらが、怪しくなりだす。
「もう分かっているでしょ? 起きないとどうなるか」
「んー……でも眠い……」
眠気に負け俺は悠斗を手のひらではね退けた。
「ふーん。なら遠慮なく……いただきます♡」
悠斗の手のひらが服を割って忍び込んで来る気配に、ゾワっと肌が粟立つ。流石に危機を感じると、頭もクリアになっていく。コロコロとベッドの端まで転がり床に足をつくと、悠斗がつまらなそうに俺を見つめていた。
「学校へ行こう!」
「……その変わり身なんだろう。もうちょっと甘く過ごせないの?」
「昨日十分甘い時間は過ごした! ほらお前も起きて支度しろよ?」
いつもの日常はこんなものだ。遅刻したらきっと由良りんも心配する。リビングに向かえばおふくろが朝食を用意してくれており、三人で久々に団欒をして学校へと向かった。
教室に入ると俺と悠斗は呆然とした。何度も何度も見返して見慣れない景色に、ただ口を開けてあんぐり状態だ。俺達の姿を先に来ていた多澤と村上が、面白そうにケラケラ笑っていた。
「……よう……てか、なんか言えよ……」
ムスッとしながら由良りんが声を掛けてくる。
「……い、いや……カナちゃん、これが精一杯の心の呟きだよ」
「……う、うん。それどうしたの……」
俺達のタジタジな反応に、多澤が机に肘をつきいつも通りに言う。
「俺は結構いいと思う。年相応じゃね?」
「そうそう、近寄り難くなくなったよー♪」
「クスッ、もしかして反省の意味も込めてるの? それとも乙女思考なのかな?」
「……そういうつもりじゃねぇけど……」
「へへっ、確かに怖い感じないし、前髪はやっぱりあったほうが俺は好きだな!」
「瀬菜! その言い方勘違いするでしょ⁉」
由良りんはトレンドマークの金髪から一転、黒髮にチェンジして前髪も下ろされていた。自然な黒ではないところは違和感を感じるが、決して悪くはない。高校生らしく、見た目も優しい雰囲気なのだ。
これ、言いたいことじゃないけど……。
唇に唇が触れる感触。
「……これじゃしたいことじゃん」
「クスッ、暗いしいいでしょ? でも、これじゃ足りない。早く帰ってセックスしよ」
「ばっ、馬鹿っ‼ そんな大声で叫ぶなッ!」
日差しが降り注ぐ中ではできないが、夜に紛れれば怖くない。見られたからといっても、俺達の気持ちは変わることはない。
由良りんにあんなに隠す必要も、本当はなかったのかもしれない。でも、できるなら穏やかに、トラブルを避けたいのが人間なのだ。
いつか日が燦々と注ぐ明るい場所でも、こうして手を繋げたら嬉しい。周りなんて気にしないで、強い気持ちで。
絡めた指先に力を込めると、指を這わせて撫で返される。いやらしいものではなく、優しく頭を撫でるような感覚と少し似ていた。そんな悠斗の優しいところに俺はまた、心から悠斗が好きだなと再確認させられるのだった。
***
フワフワとして心地いい。優しいぬくもりは幸せ過ぎて抜け出したくない。
「瀬菜……起きて」
「ん……もうちょい……」
「ふふっ……いつもの瀬菜だ」
「むぅぅ……擽ったい……」
背中に這わされた手のひらが、怪しくなりだす。
「もう分かっているでしょ? 起きないとどうなるか」
「んー……でも眠い……」
眠気に負け俺は悠斗を手のひらではね退けた。
「ふーん。なら遠慮なく……いただきます♡」
悠斗の手のひらが服を割って忍び込んで来る気配に、ゾワっと肌が粟立つ。流石に危機を感じると、頭もクリアになっていく。コロコロとベッドの端まで転がり床に足をつくと、悠斗がつまらなそうに俺を見つめていた。
「学校へ行こう!」
「……その変わり身なんだろう。もうちょっと甘く過ごせないの?」
「昨日十分甘い時間は過ごした! ほらお前も起きて支度しろよ?」
いつもの日常はこんなものだ。遅刻したらきっと由良りんも心配する。リビングに向かえばおふくろが朝食を用意してくれており、三人で久々に団欒をして学校へと向かった。
教室に入ると俺と悠斗は呆然とした。何度も何度も見返して見慣れない景色に、ただ口を開けてあんぐり状態だ。俺達の姿を先に来ていた多澤と村上が、面白そうにケラケラ笑っていた。
「……よう……てか、なんか言えよ……」
ムスッとしながら由良りんが声を掛けてくる。
「……い、いや……カナちゃん、これが精一杯の心の呟きだよ」
「……う、うん。それどうしたの……」
俺達のタジタジな反応に、多澤が机に肘をつきいつも通りに言う。
「俺は結構いいと思う。年相応じゃね?」
「そうそう、近寄り難くなくなったよー♪」
「クスッ、もしかして反省の意味も込めてるの? それとも乙女思考なのかな?」
「……そういうつもりじゃねぇけど……」
「へへっ、確かに怖い感じないし、前髪はやっぱりあったほうが俺は好きだな!」
「瀬菜! その言い方勘違いするでしょ⁉」
由良りんはトレンドマークの金髪から一転、黒髮にチェンジして前髪も下ろされていた。自然な黒ではないところは違和感を感じるが、決して悪くはない。高校生らしく、見た目も優しい雰囲気なのだ。
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