王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺

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「……ゆう、と……」

 瞼の上に唇を落とすと、何度もキスを繰り返す。悠斗の膝の上に跨がり、肩に手を置き首筋に唇を寄せる。許してと思いを乗せながら。

「……ごめん。酷いこと言って……」

 腰の辺りにぬくもりが重なると、そっと抱きしめ返してくれた。拒否されなかったことに、強張った身体からスッと力が抜けていく。

「俺のこと心配してくれたのに、俺お前にあんな……」
「……違うよ、瀬菜……。俺が悪いんだ……瀬菜をひとりにしてしまったから。不安な瀬菜に嫉妬で能天気だなんて言ったから。瀬菜の気持ちを軽率に踏み躙ったのは俺だもん。瀬菜が怒るのだって仕方ない」
「……でも、俺がもっとちゃんとしてたら、悠斗にこんな想いさせずに済んだんだ。だから、ごめん……」

 腰に回された手をギュッと抱きしめ直す悠斗は、首を横に振り俺のせいではないと訴える。

「遙さんに聞いたんだ。俺は瀬菜がどんな風に拐われたか知らずに、嫉妬だけで瀬菜を責めたんだ。そのときの状況を考えたら、きっと瀬菜じゃなくても身を守ることできなかった。自分が言った言葉が本当に最低だなって……。瀬菜にどう謝ろうか考えていた。結局瀬菜に謝らせちゃったね」
「で、でもっ──オレッ……ゆうとにっ──嫌いって……ほかにもっ」
「……瀬菜、こっち見て?」

 ブンブン首を振り嫌だとアピールすると、頰を両手で挟まれ悠斗と視線がぶつかる。顔を歪ませポロポロと溢れる涙が、顎を伝って落ちていく。

「嫌いって言った前に、なんて言ってたか覚えてる? 俺がいい、俺じゃなきゃ嫌だ、俺が好きって言ってたよ? あんなにカナちゃんに隠してたのにね。瀬菜に怒鳴られてるのに嬉しかった。ムキになって言ったんでしょ?」
「……ん。でも、言ったこと……けせなぃっ。ひぐっ……ごべんっ、ゆぅど……」
「ふふっ、瀬菜。大丈夫だよ。瀬菜がどうしても後悔で苦しいなら、その分俺にいっぱい好きをちょうだい? それで仲直りしよ? ねっ?」

 目元の涙を掬い上げるように、唇を寄せる悠斗の手のひらにスリスリとする。温かい手のひらと、擽ったいけど心地いいマシュマロみたいな悠斗の唇に癒され、涙も徐々に引いていった。

「泣いてる瀬菜も可愛いけど、俺は笑ってる瀬菜が好きだよ?」
「……うん……。えへへっ……俺、悠斗が好き。本当だよ? ここに連れて来られても、ずっと悠斗のことばっかり考えてた。悠斗のところに帰りたくて堪らなかった」
「俺も……瀬菜のところに早く行きたかった。カナちゃんには迷惑かけたけど……」
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