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第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺
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悠斗は俺の首筋に手を伸ばし、冷めた瞳で一点を見つめると、思い切りそこに齧りついてきた。
「──イタッ! バカつやめっ、悠斗っ!」
いきなりの行動にビクッと身体が跳ねると、そのままベッドに押し倒され、一点を吸い上げ舐められてしまう。悶える俺を押さえる力は強く、首筋から顎を愛撫すると、そのまま唇を塞がれた。
深い口付けに息を吸い込むのも忘れ、激しく口腔を嬲られ全身の力が抜けると、透明な糸を引きながら悠斗の唇から解放された。
「……瀬菜の馬鹿……安心? 優しい人がこんな痕を残すと思っているの? 瀬菜は能天気過ぎるよ。俺に似てるなら、優しいなら……瀬菜は俺じゃなくてもいいの? そうやってすぐに気を許すの悪い癖だよ」
「ば、馬鹿はないだろう! 俺、好きで誘拐された訳じゃない! 俺だってなにがなんだか分からなくて不安で、ッ──また……レイプされるかもってっ! 誰でもいいなんて、これっぽっちも思ったことない! 俺は……俺は悠斗がいい……悠斗じゃなきゃ嫌だ! 悠斗が好き。でも……んでっ、なんでお前は俺の気持ち疑うんだよ! 俺だって人を見るぐらいできる。悠斗はいつも俺を馬鹿にして……優しいふりしているのは悠斗だろ! そんなわからず屋な悠斗なんて、──大っ嫌いだッ!」
大きな声で叫ぶと、シーンとした室内に俺の興奮気味な、ハァハァと肩で息をする息遣いだけが響いていた。悠斗のシャツをギュッと握った手を、ハッとしながら緩めていく。
あっ、オレ……なにを……。
……ヤバイ……言い過ぎた……。
冷静になっていく自分に、サーっと血の気が引いていく。すぐに謝らなければと口を開き掛けると、先に悠斗が細い震えた声音で言葉を紡いだ。
「……せ、な……そう……だね。はは……っ、カッコ悪ッ、……少し頭冷やしてくる……」
「──ゆうっ……」
俯きすっと立ち上がる悠斗の腕を取ろうとするが、空気を掴むだけで悠斗は俺に背を向け、部屋を出て行ってしまった。
紡いだ言葉を回収することなどできない。だから言葉を選んで会話をする。怒りで染められた感情は、思ってもいない言葉を吐き出させてしまう。
俺はなんて暴言をしてしまったのだと、呆然と悠斗を追い掛けることもできずにいた。
「あらら……なんかヤバイ展開?」
「お前のせいだぞ‼」
「だって、最近の哉太ったら生き生きしてるし、兄としては気になるじゃない?」
「それでこの最悪な展開かよ。ヤナとユウを巻き込んでんじゃねぇ。俺に直接喧嘩売りやがれ!」
「哉太、お兄ちゃんには本当のこと教えてくれないじゃん。恋人の瀬菜君に聞こうと思ったけど、どうやら勘違いしちゃったみたい」
「……お前マジ沈めるぞ。その前にこの状況を鎮めろ」
遙さんは不貞腐れた様子だったが、自分で起こしたことには責任を感じているようだ。
「はいはい。僕は、瀬菜君が僕に似てるっていう悠斗君を宥めようかな。哉太は瀬菜君ね。かっこいいところ見せたら、少しは振り向いてくれるかもよ?」
「無駄口叩いてないで早く行きやがれ! ふざけんなっ!」
「ふふっ、頑張れ……弟よ」
由良りんは舌打ちをすると、ぽすんと俺の横に腰掛け頭を撫でてきた。その仕草はお兄さんにちょっと似ていて、ああ兄弟なんだなと納得してしまう。
「──イタッ! バカつやめっ、悠斗っ!」
いきなりの行動にビクッと身体が跳ねると、そのままベッドに押し倒され、一点を吸い上げ舐められてしまう。悶える俺を押さえる力は強く、首筋から顎を愛撫すると、そのまま唇を塞がれた。
深い口付けに息を吸い込むのも忘れ、激しく口腔を嬲られ全身の力が抜けると、透明な糸を引きながら悠斗の唇から解放された。
「……瀬菜の馬鹿……安心? 優しい人がこんな痕を残すと思っているの? 瀬菜は能天気過ぎるよ。俺に似てるなら、優しいなら……瀬菜は俺じゃなくてもいいの? そうやってすぐに気を許すの悪い癖だよ」
「ば、馬鹿はないだろう! 俺、好きで誘拐された訳じゃない! 俺だってなにがなんだか分からなくて不安で、ッ──また……レイプされるかもってっ! 誰でもいいなんて、これっぽっちも思ったことない! 俺は……俺は悠斗がいい……悠斗じゃなきゃ嫌だ! 悠斗が好き。でも……んでっ、なんでお前は俺の気持ち疑うんだよ! 俺だって人を見るぐらいできる。悠斗はいつも俺を馬鹿にして……優しいふりしているのは悠斗だろ! そんなわからず屋な悠斗なんて、──大っ嫌いだッ!」
大きな声で叫ぶと、シーンとした室内に俺の興奮気味な、ハァハァと肩で息をする息遣いだけが響いていた。悠斗のシャツをギュッと握った手を、ハッとしながら緩めていく。
あっ、オレ……なにを……。
……ヤバイ……言い過ぎた……。
冷静になっていく自分に、サーっと血の気が引いていく。すぐに謝らなければと口を開き掛けると、先に悠斗が細い震えた声音で言葉を紡いだ。
「……せ、な……そう……だね。はは……っ、カッコ悪ッ、……少し頭冷やしてくる……」
「──ゆうっ……」
俯きすっと立ち上がる悠斗の腕を取ろうとするが、空気を掴むだけで悠斗は俺に背を向け、部屋を出て行ってしまった。
紡いだ言葉を回収することなどできない。だから言葉を選んで会話をする。怒りで染められた感情は、思ってもいない言葉を吐き出させてしまう。
俺はなんて暴言をしてしまったのだと、呆然と悠斗を追い掛けることもできずにいた。
「あらら……なんかヤバイ展開?」
「お前のせいだぞ‼」
「だって、最近の哉太ったら生き生きしてるし、兄としては気になるじゃない?」
「それでこの最悪な展開かよ。ヤナとユウを巻き込んでんじゃねぇ。俺に直接喧嘩売りやがれ!」
「哉太、お兄ちゃんには本当のこと教えてくれないじゃん。恋人の瀬菜君に聞こうと思ったけど、どうやら勘違いしちゃったみたい」
「……お前マジ沈めるぞ。その前にこの状況を鎮めろ」
遙さんは不貞腐れた様子だったが、自分で起こしたことには責任を感じているようだ。
「はいはい。僕は、瀬菜君が僕に似てるっていう悠斗君を宥めようかな。哉太は瀬菜君ね。かっこいいところ見せたら、少しは振り向いてくれるかもよ?」
「無駄口叩いてないで早く行きやがれ! ふざけんなっ!」
「ふふっ、頑張れ……弟よ」
由良りんは舌打ちをすると、ぽすんと俺の横に腰掛け頭を撫でてきた。その仕草はお兄さんにちょっと似ていて、ああ兄弟なんだなと納得してしまう。
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