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第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺
03
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なぜゲーセンで遊ぼうということになったか。由良りんはゲーセンマスターらしい。カーレースと格闘ゲームは上位に必ず入るらしく、疑いの目で見れば「なら証明する」と、こうして遊ぶことになったのだ。
店の前でウンコ座りして喋ってるイメージだけど。
上位って相当だよな……。
「まずは、証拠のお得意なやつを早速拝見!」
「なら、カーレース一緒にやろうぜ」
「えーっ、俺下手っぴなんだよな……」
「下手でもいいんだ。一緒にやるから燃えるんだろ」
以前悠斗とやったときもダメダメだった。反射神経はいいほうだと思うが、機械だとからっきし鈍くさい俺。
三……二……一……スタート!
身体に力が入り過ぎていきなり、壁にぶち当たる。由良りんにはグングン距離を離されるが、どれぐらい離れているかは操縦だけで手一杯で、左端に映るコースの全体を把握できない。
軽過ぎるハンドルが、どれぐらいの操作で作用するのか感覚が掴めない。スピンして止まってしまうことが多く、ゴールしたときにはなぜか筋肉痛になっていた。ハンドルに額にをコツンとさせて、ぐったりと疼くまった。
「お疲れ。お前、本当に下手」
「だから、言ったろ? 由良りんは……すご……ランキング三位? どんだけやったらそうなるの?」
「暇つぶしに良くゲーセン通ってたからな……てか、腕落ちてるわ……」
「うわぁー、イヤミなんですけど……」
にーっと満面に笑う由良りんは、一気に少年っぽくなる。前髪があるほうが、愛嬌がぐんとまし表情が柔らかくなる。
眉間のシワが隠れるからかな?
「……ヤナ……そんなに見つめんなよ」
耳元で囁かれ、ビクッと身体が跳ねる。無遠慮に観察し、ぼんやりしていた自分が悪いが、そんな艷やかな声で言わなくてもいいではないか。
「あっ、いや……ちょっといい?」
由良りんのサラサラな前髪を、上げたり下げたりして検証してみる。俺の挙動に目を丸くしている由良りんは、怒りもせずに無防備だ。
「やっぱり下ろしたほうが似合う!」
「……っそ、そうか?」
「うん! こっちのほうが優しい感じで俺は好き」
へらりと笑いそう言うと、由良りんはパッと俺から離れ俯く。ポリポリと鼻頭をつめ先でかき、照れくさいのか耳まで赤くしている。
「……ヤナがそう言うなら……。ま、まぁ……なんだ……つっ、つぎだ! なにする⁉」
「へへっ、もちろん由良りん自慢の格闘! あっ因みにそれも俺下手っぴだから、機械と対戦な! 俺横で見てたい!」
「一緒に来た意味ねぇじゃん」
「意味はあるよ? 今日の目的は本当に由良りんが、上位者かどうかを見るためだからね!」
今後はゲームの神様と崇めよう。指がボタンに引っついているように、技を繰り出し操作する姿に、前のめりで鼻息荒く興奮する俺。俺の熱狂ぶりに由良りんは爆笑し涙を拭っていた。
「す、凄い! 本当に達人だったんだ!」
「なんだよ……信じていなかったな? てか、ヤナ興奮し過ぎ。マジでウケる」
「だって、知ってる人の名前がこうやって載るんだぞ? 興奮するし!」
「本当にお前って、子供みたいにちょっとしたことで喜ぶよな」
「違うよ! 俺は年相応なの! 由良りんが大人っぽいからだよ」
二人で笑いながら話し込んでいると、知らない声が聞こえてきた。
「アレ……? 哉太じゃん!」
「本当だ。しばらく見かけなかったけど元気してた?」
「今までなにしてたんだ?」
近づきながら話し掛け、親しげに肩を組んでくる三人組。金髪やオレンジ色の髪で、いかにも……な雰囲気だ。その中のひとりが俺に視線を向ける。
「……コイツなに? お前の金ヅル?」
楽しい雰囲気から一転、ピリピリとした空気がその場に広がっていた。
店の前でウンコ座りして喋ってるイメージだけど。
上位って相当だよな……。
「まずは、証拠のお得意なやつを早速拝見!」
「なら、カーレース一緒にやろうぜ」
「えーっ、俺下手っぴなんだよな……」
「下手でもいいんだ。一緒にやるから燃えるんだろ」
以前悠斗とやったときもダメダメだった。反射神経はいいほうだと思うが、機械だとからっきし鈍くさい俺。
三……二……一……スタート!
身体に力が入り過ぎていきなり、壁にぶち当たる。由良りんにはグングン距離を離されるが、どれぐらい離れているかは操縦だけで手一杯で、左端に映るコースの全体を把握できない。
軽過ぎるハンドルが、どれぐらいの操作で作用するのか感覚が掴めない。スピンして止まってしまうことが多く、ゴールしたときにはなぜか筋肉痛になっていた。ハンドルに額にをコツンとさせて、ぐったりと疼くまった。
「お疲れ。お前、本当に下手」
「だから、言ったろ? 由良りんは……すご……ランキング三位? どんだけやったらそうなるの?」
「暇つぶしに良くゲーセン通ってたからな……てか、腕落ちてるわ……」
「うわぁー、イヤミなんですけど……」
にーっと満面に笑う由良りんは、一気に少年っぽくなる。前髪があるほうが、愛嬌がぐんとまし表情が柔らかくなる。
眉間のシワが隠れるからかな?
「……ヤナ……そんなに見つめんなよ」
耳元で囁かれ、ビクッと身体が跳ねる。無遠慮に観察し、ぼんやりしていた自分が悪いが、そんな艷やかな声で言わなくてもいいではないか。
「あっ、いや……ちょっといい?」
由良りんのサラサラな前髪を、上げたり下げたりして検証してみる。俺の挙動に目を丸くしている由良りんは、怒りもせずに無防備だ。
「やっぱり下ろしたほうが似合う!」
「……っそ、そうか?」
「うん! こっちのほうが優しい感じで俺は好き」
へらりと笑いそう言うと、由良りんはパッと俺から離れ俯く。ポリポリと鼻頭をつめ先でかき、照れくさいのか耳まで赤くしている。
「……ヤナがそう言うなら……。ま、まぁ……なんだ……つっ、つぎだ! なにする⁉」
「へへっ、もちろん由良りん自慢の格闘! あっ因みにそれも俺下手っぴだから、機械と対戦な! 俺横で見てたい!」
「一緒に来た意味ねぇじゃん」
「意味はあるよ? 今日の目的は本当に由良りんが、上位者かどうかを見るためだからね!」
今後はゲームの神様と崇めよう。指がボタンに引っついているように、技を繰り出し操作する姿に、前のめりで鼻息荒く興奮する俺。俺の熱狂ぶりに由良りんは爆笑し涙を拭っていた。
「す、凄い! 本当に達人だったんだ!」
「なんだよ……信じていなかったな? てか、ヤナ興奮し過ぎ。マジでウケる」
「だって、知ってる人の名前がこうやって載るんだぞ? 興奮するし!」
「本当にお前って、子供みたいにちょっとしたことで喜ぶよな」
「違うよ! 俺は年相応なの! 由良りんが大人っぽいからだよ」
二人で笑いながら話し込んでいると、知らない声が聞こえてきた。
「アレ……? 哉太じゃん!」
「本当だ。しばらく見かけなかったけど元気してた?」
「今までなにしてたんだ?」
近づきながら話し掛け、親しげに肩を組んでくる三人組。金髪やオレンジ色の髪で、いかにも……な雰囲気だ。その中のひとりが俺に視線を向ける。
「……コイツなに? お前の金ヅル?」
楽しい雰囲気から一転、ピリピリとした空気がその場に広がっていた。
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