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幕間 君は僕のお姫様《悠斗side》
05
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母さんが昔言ってた意味が、少しは理解できたけど、男の子を好きになっていいものなのか……幼い自分には、とても大きな壁に思えた。
現実を受け入れざるを得なかった瀬菜は、わんわんと泣き出していた。そんな瀬菜をそっと抱きしめ、もう少し大人になるまでは、友達として君を守るから……どうか僕のことで泣かないでと心の中で呟いていた。
***
この街に来て今ではすっかり街にも溶け込んでいた。小中学共に白桜町の学校に通い、瀬菜と一緒に成長した。高校は将来を考え、レベルの高い高校に進学しようとも思ったが、どうしても瀬菜と離れることが想像できなかった。
それとなく瀬菜に進学のことを聞かれ、自分もそこを受験すると即答していた。施設も整った私立白桜南高等学校は、少しレベルは下がるが悪いところではない。
将来を考えるなら、この選択は間違っているのかもしれない。けれど瀬菜が隣に居ない日々は、自分にとってもっと将来的に問題なのだ。
「なぁ悠斗、俺っていつからお前のこと、悠斗って呼んでいるっけ?」
「ん? どうしたの急に……」
朝のいつも通りの登校。
瀬菜を起こしに行き、支度を手伝いながら並んで学校へと向かう。毎日同じことの繰り返しのようでいて、毎日が新鮮。
瀬菜は昔から積極的に話をしてくれる。恋愛事情は聞かないが、まだ誰かに恋をしたことはないのだろう。悩み相談は幼馴染で親友の俺の特権だが、彼女ができたなど聞いたとき、俺はおそらく平常では居られない。
「今日夢見てさ……いつからだったかなーって考えていた」
「ふふっ……忘れちゃったの?」
「えっ? お前、覚えているの?」
「もちろん、そのときは少しショックだったし……」
俺が男だとわかると、『ゆうちゃん』から『悠斗』に次の日には変わっていた。ただ、たまにゆうちゃんに変わるときがあった。それは瀬菜が寂しいとき。おばさんもおじさんも居なくて心細いときだけは、甘えるようにゆうちゃん、ゆうちゃんと言ってくれた。
「俺、そんな酷いことしたっけ?」
「それはね? まぁ……曖昧かな……ほら、今日も寝惚けてゆうちゃんって言っていたし」
「ゆうちゃんは俺の中で無敵なんだもん。これからはまた、ゆうちゃんに戻そうかな?」
それもまぁ瀬菜が言えば可愛いので悪くはない。
けれど幼い頃の自分に嫉妬してしまいそうだ。
「それは……勘弁かな……」
「えーー、なんで⁉」
「さぁ、なんでだと思う?」
そう問いかけると瀬菜は眉を寄せ考え込んでいる。それから閃いたとばかりに笑顔を見せる。
「分かったぞ! 王子のイメージ崩れるのが嫌なんだろ!」
「違うよ。瀬菜には一生解けないかもね?」
隣で膨れる瀬菜に、鈍感だしまだもう少し無理かと……ため息をそっと吐いて微笑むと、親友という役を演じた。
高校生になっても君は可愛いままだ。
いつかきっと俺の気持ちに気付いてくれるまで……。
幼い頃の想いと共に、今も変わらず君の側で……君をそっと守らせて?
君は俺だけの……。
愛しい愛しいお姫様なのだから──。
現実を受け入れざるを得なかった瀬菜は、わんわんと泣き出していた。そんな瀬菜をそっと抱きしめ、もう少し大人になるまでは、友達として君を守るから……どうか僕のことで泣かないでと心の中で呟いていた。
***
この街に来て今ではすっかり街にも溶け込んでいた。小中学共に白桜町の学校に通い、瀬菜と一緒に成長した。高校は将来を考え、レベルの高い高校に進学しようとも思ったが、どうしても瀬菜と離れることが想像できなかった。
それとなく瀬菜に進学のことを聞かれ、自分もそこを受験すると即答していた。施設も整った私立白桜南高等学校は、少しレベルは下がるが悪いところではない。
将来を考えるなら、この選択は間違っているのかもしれない。けれど瀬菜が隣に居ない日々は、自分にとってもっと将来的に問題なのだ。
「なぁ悠斗、俺っていつからお前のこと、悠斗って呼んでいるっけ?」
「ん? どうしたの急に……」
朝のいつも通りの登校。
瀬菜を起こしに行き、支度を手伝いながら並んで学校へと向かう。毎日同じことの繰り返しのようでいて、毎日が新鮮。
瀬菜は昔から積極的に話をしてくれる。恋愛事情は聞かないが、まだ誰かに恋をしたことはないのだろう。悩み相談は幼馴染で親友の俺の特権だが、彼女ができたなど聞いたとき、俺はおそらく平常では居られない。
「今日夢見てさ……いつからだったかなーって考えていた」
「ふふっ……忘れちゃったの?」
「えっ? お前、覚えているの?」
「もちろん、そのときは少しショックだったし……」
俺が男だとわかると、『ゆうちゃん』から『悠斗』に次の日には変わっていた。ただ、たまにゆうちゃんに変わるときがあった。それは瀬菜が寂しいとき。おばさんもおじさんも居なくて心細いときだけは、甘えるようにゆうちゃん、ゆうちゃんと言ってくれた。
「俺、そんな酷いことしたっけ?」
「それはね? まぁ……曖昧かな……ほら、今日も寝惚けてゆうちゃんって言っていたし」
「ゆうちゃんは俺の中で無敵なんだもん。これからはまた、ゆうちゃんに戻そうかな?」
それもまぁ瀬菜が言えば可愛いので悪くはない。
けれど幼い頃の自分に嫉妬してしまいそうだ。
「それは……勘弁かな……」
「えーー、なんで⁉」
「さぁ、なんでだと思う?」
そう問いかけると瀬菜は眉を寄せ考え込んでいる。それから閃いたとばかりに笑顔を見せる。
「分かったぞ! 王子のイメージ崩れるのが嫌なんだろ!」
「違うよ。瀬菜には一生解けないかもね?」
隣で膨れる瀬菜に、鈍感だしまだもう少し無理かと……ため息をそっと吐いて微笑むと、親友という役を演じた。
高校生になっても君は可愛いままだ。
いつかきっと俺の気持ちに気付いてくれるまで……。
幼い頃の想いと共に、今も変わらず君の側で……君をそっと守らせて?
君は俺だけの……。
愛しい愛しいお姫様なのだから──。
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