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第10幕 新学年と不良くん 〜高校二年生編〜
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しおりを挟む「おおおーーーー! すげー‼ 悠斗ご飯の神様!」
「今日は瀬菜に褒められっぱなしで怖いな。みんな適当に食べて」
「王子ってば、全部作ったの?」
「マジで美味そうじゃん」
お昼になると、中庭でランチだ。四月の半ばで桜は流石に散ってしまい、花見がてらとはいかず少し残念だが、春の風は爽やかで気持ちがいい。
悠斗手製のお弁当を広げ、運動会みたいなボリュームに感激する。そういえば、今日の悠斗の荷物は少し大きかったかもと、今さらながらぼんやりと思い浮かべる。
「由良君も遠慮しないで」
「……俺もいいのか?」
居心地が悪そうにしていた由良君に悠斗は笑顔を向け、お箸と紙皿を差し出した。
「そのために誘ったんだよ?」
「遠慮していると、俺が全部食べちゃうよ?」
「瀬菜の食い意地半端ねぇからな」
「確かに~。柳ちゃん細っこいのに沢山食べるよね♪」
「あり……がと……いただきます……」
礼儀正しく感謝を述べる由良君は、躊躇いながら箸を伸ばし、唐揚げを口にした。
「……すげぇ……うまい……」
「でしょ! 誰が食べても美味しいってなるんだー♪ 悠斗、言ってよ。俺も手伝ったのに……本当、お前ってば水臭いよな!」
「ふふっ、ごめん。母さんも手伝ってくれたし、そんなに時間は掛からなかったから」
「むぅ~~……なら良いけどさ」
悠斗にしたら大したことではないかもしれないが、少しは役に立ちたい。
「次はお願いするよ。それより、瀬菜どれから食べる?」
「だし巻き! 悠斗んちのは美味いんだよな~」
「はい、あーん♡」
香りのいい黄金色が口元に運ばれると、自然と口が開いてしまう。
「……ううぅ~~、美味い‼ だしが染み込んでる~~♪」
「よかった。次はどれにする?」
「唐揚げ! ……モグモグ……はぁぁ~~美味しい……」
次から次へと口の中に入ってくる美味しい料理に、頰が緩んでホッコリしてしまう。
「柳って……いつも飯そうなの?」
「えっ? いつもって?」
「瀬菜の美味しそうにしてる顔、可愛いよね?」
「小動物だもんな。由良、気にしてると飯進まないぞ」
「そうそう、なくなっちゃうよ~」
はっ! つい悠斗に乗せられたぁ~~‼
なぜ餌付けされてる……俺‼
由良君の視線にボワっと湯気が頭から上がりそうになり、悠斗から箸を奪うと、ひとりで食べる。美味しいからつい自然と口が開いてしまった。
「由良君、違うからね! いつもはちゃんと自分で食べてるからね! 俺、子供じゃないし」
「ふーん。この間も思ったけど、柳と立花って、なんつーか……あれだな」
交互に俺と悠斗を眺める由良君に、悠斗がニコッと微笑み言う。
「ふふっ、俺と瀬菜は付き────っ!」
「つっ、つぎっ! 次の準備しないとだし、早く食べないと! 時間ないしッ!」
「──ッ瀬菜! く、苦しい……」
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