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第10幕 新学年と不良くん 〜高校二年生編〜
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いやいや、まずは飯だ!
チャーハンとなれば手早くできる。同時進行で隣で悠斗がスープを作ってくれる。今日は良く動いたし腹ペコだ。まだ完成していないうちから、匂いが鼻を突いて食欲が増幅されていく。
食卓テーブルに並べ、「いただきます」と二人で言い食べ始める。
スープは黄色の溶き卵と、トマトの赤、それに小さく切られたピーマンの緑が、色とりどりにプカプカ浮いている。お酢とトマトの酸味、卵の甘さ、ピーマンの苦味が絶妙で、悠斗が作る料理の中でも上位を維持する俺の好物だ。
「由良君とはどんな話ししたの?」
「どんな? うーん普通に家族構成とか? ああ見えて三人兄弟の末っ子なんだって! あとは、えっと……彼女居るとか、不良に間違えられるとか?」
「へぇー、ひとりっ子だと思っていた。それに、不良そのものなの間違えられるって可笑しい」
「だよね? 笑っちゃった。金髪で前髪上げてるからかな? ムッとすると眉間のシワが良く見えるんだ。無表情だと強面だし!」
「クスッ、確かに……眉間のシワは俺も良く見るかも」
会話が少ない分、相手の表情を読み取ろうとする。不機嫌そうに見られるのは、由良君にも問題がある。
「でもね、俺今日レア顔見ちゃった! 初めて笑ってくれたんだ! ちょっと得した気分だった」
「そう、笑顔ね……。俺も見てみたいな」
「悠斗と由良君身長同じぐらいだし、俺より間近で見れるんじゃん?」
「うん。きっと同じぐらいだね? そっか、彼女居るのか……」
「えー、そこに戻るの? ……あっ、悠斗! お前また突拍子もないこと考えたな⁉」
お椀を傾かせひと口飲みながら、じとりと悠斗を睨む。
「ふふっ、そりゃね? 瀬菜は可愛いから、恋人としては気が気じゃないの。彼女が居るなら一応心配はないでしょ?」
「だから、みんながそんな目で見る訳ないだろ? 俺男だし。悠斗だってクラスの子、目がハートじゃん! 一部の男子もそんな目したヤツ居たぞ!」
「ん? 瀬菜が不安なら、俺はいつでもオープンにするけど?」
「いや……それは困る!」
プクリと頰を膨らませると、頬っぺたを包まれて「そんなに怒らないで?」と言われる。
「瀬菜だけだよ? 俺が心を寄せるのは。どんなに言い寄られたって、瀬菜だけ」
「俺だって……悠斗だけだもん。負けてないもん……」
そう言うと、悠斗は「なんの勝負?」と笑っていた。
「明日は練習、瀬菜も体育館だよね? 逃げ回る瀬菜を見て、癒されようかな」
「それよりも、ボールキャッチする方法教えてよ」
「俺が教えると優しくなっちゃうから、雅臣辺りがいいかもね?」
「うわっ! それマジじゃん……あいつ絶対楽しみながらイジメるからヤダ」
「雅臣はジャレているだけだから。指先で取ると怪我するから、胸で抱えて取る感じじゃないかな?」
「おお! 今のシックリきた!」
悠斗の説明は言葉だけでも想像でき、身体にすっと馴染んでくれる。ほんの少しのアドバイスで、自分ができたように思えるから凄い。実際にやってみようという気になるのだ。
ご飯を食べ終わり、片付けを二人で済ませると、悠斗は部屋にも寄らずに帰り支度を始めた。
「瀬菜、今日は帰るね?」
「えっ……もう帰るの?」
「疲れた顔してるし眠そうだよ? ゆっくり休んで?」
「うん……」
チュッと頰に一つキスを落とし、抱擁されると「また明日の朝ね」と帰ってしまった。
俺そんなに疲れていた?
まぁ……筋肉痛は酷い……。
でも、なんだかモヤっと……。
悠斗も疲れていたのかな?
今日は珍しくおふくろも早めに帰ると言っていた。悠斗なりに、気を使ってくれたのかもしれない。けれど俺は充足感が足りない。もう少し、恋人らしい時間を過ごしたかったと、悶々とする俺だった。
チャーハンとなれば手早くできる。同時進行で隣で悠斗がスープを作ってくれる。今日は良く動いたし腹ペコだ。まだ完成していないうちから、匂いが鼻を突いて食欲が増幅されていく。
食卓テーブルに並べ、「いただきます」と二人で言い食べ始める。
スープは黄色の溶き卵と、トマトの赤、それに小さく切られたピーマンの緑が、色とりどりにプカプカ浮いている。お酢とトマトの酸味、卵の甘さ、ピーマンの苦味が絶妙で、悠斗が作る料理の中でも上位を維持する俺の好物だ。
「由良君とはどんな話ししたの?」
「どんな? うーん普通に家族構成とか? ああ見えて三人兄弟の末っ子なんだって! あとは、えっと……彼女居るとか、不良に間違えられるとか?」
「へぇー、ひとりっ子だと思っていた。それに、不良そのものなの間違えられるって可笑しい」
「だよね? 笑っちゃった。金髪で前髪上げてるからかな? ムッとすると眉間のシワが良く見えるんだ。無表情だと強面だし!」
「クスッ、確かに……眉間のシワは俺も良く見るかも」
会話が少ない分、相手の表情を読み取ろうとする。不機嫌そうに見られるのは、由良君にも問題がある。
「でもね、俺今日レア顔見ちゃった! 初めて笑ってくれたんだ! ちょっと得した気分だった」
「そう、笑顔ね……。俺も見てみたいな」
「悠斗と由良君身長同じぐらいだし、俺より間近で見れるんじゃん?」
「うん。きっと同じぐらいだね? そっか、彼女居るのか……」
「えー、そこに戻るの? ……あっ、悠斗! お前また突拍子もないこと考えたな⁉」
お椀を傾かせひと口飲みながら、じとりと悠斗を睨む。
「ふふっ、そりゃね? 瀬菜は可愛いから、恋人としては気が気じゃないの。彼女が居るなら一応心配はないでしょ?」
「だから、みんながそんな目で見る訳ないだろ? 俺男だし。悠斗だってクラスの子、目がハートじゃん! 一部の男子もそんな目したヤツ居たぞ!」
「ん? 瀬菜が不安なら、俺はいつでもオープンにするけど?」
「いや……それは困る!」
プクリと頰を膨らませると、頬っぺたを包まれて「そんなに怒らないで?」と言われる。
「瀬菜だけだよ? 俺が心を寄せるのは。どんなに言い寄られたって、瀬菜だけ」
「俺だって……悠斗だけだもん。負けてないもん……」
そう言うと、悠斗は「なんの勝負?」と笑っていた。
「明日は練習、瀬菜も体育館だよね? 逃げ回る瀬菜を見て、癒されようかな」
「それよりも、ボールキャッチする方法教えてよ」
「俺が教えると優しくなっちゃうから、雅臣辺りがいいかもね?」
「うわっ! それマジじゃん……あいつ絶対楽しみながらイジメるからヤダ」
「雅臣はジャレているだけだから。指先で取ると怪我するから、胸で抱えて取る感じじゃないかな?」
「おお! 今のシックリきた!」
悠斗の説明は言葉だけでも想像でき、身体にすっと馴染んでくれる。ほんの少しのアドバイスで、自分ができたように思えるから凄い。実際にやってみようという気になるのだ。
ご飯を食べ終わり、片付けを二人で済ませると、悠斗は部屋にも寄らずに帰り支度を始めた。
「瀬菜、今日は帰るね?」
「えっ……もう帰るの?」
「疲れた顔してるし眠そうだよ? ゆっくり休んで?」
「うん……」
チュッと頰に一つキスを落とし、抱擁されると「また明日の朝ね」と帰ってしまった。
俺そんなに疲れていた?
まぁ……筋肉痛は酷い……。
でも、なんだかモヤっと……。
悠斗も疲れていたのかな?
今日は珍しくおふくろも早めに帰ると言っていた。悠斗なりに、気を使ってくれたのかもしれない。けれど俺は充足感が足りない。もう少し、恋人らしい時間を過ごしたかったと、悶々とする俺だった。
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