王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第10幕 新学年と不良くん 〜高校二年生編〜

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***


「ほら、早く教室入って? どうかしたの?」
「……うん、いや……なんかまだ慣れないっていうか? 前までは悠斗とここで、またお昼か放課後にねって……一緒に教室に入るのが不思議なんだよ」
「そうだね。朝のお見送りも、放課後のお迎えも、あれはあれで良かったよね?」

 コクリと頷く。
 ルーティーンの送り迎えは、俺にとっては特別だった。一瞬でも自分が大事にされているよな感覚は、優越感を与えてくれていた。

「けど、やっぱり一緒のほうがもっといい」
「へへっ……喧嘩しないようにしないとだな」
「する予定あるの? 一緒の空間で瀬菜に無視されたら困るな」
「一応今のところはない……かな? まぁ、お前次第だけどな!」

 クスッと悠斗が笑うと、村上が机から手をあげていた。

「おはよ~♪ 二人とも! 今日もラブラブ登校だね」
「ラブラブ言うな! おはよ村上、多澤、三浦さん!」
「みんなおはよう。今日もラブラブだよ?」
「はよ。朝から胃もたれしそうだな」
「瀬なっち、王子おっはよ~♪」

 二年生になって一週間が経とうとしていた。まだ慣れないのもあるが、仲がいい同士でどうしても固まってしまう。周りも交友関係を広げたいが、様子窺いをしている……そんな雰囲気だ。こういうときは、積極的にこちらから声を掛けるべきだが、中々一歩が踏み出せない。

 前の席の矢田さんとはちょこちょこ話をしている。三浦さんみたいに気さくで話しやすいのもある。三浦さんも矢田さんとすっかり仲良くなったようで、休み時間やお昼は一緒に行動しているようだ。
 うしろの席の由良君は一週間の内、早々に朝遅刻などしていて、話しかけるなオーラ全開で初日に話して以来、挨拶程度でまともに会話をしていない。一匹狼的な由良君は、クラスにも特に仲がいい友達は居なそうだった。

 俺は友達もっと欲しいけど、由良君は逆に他人と関わりたくないのかな?
 でも、外見でみんなが敬遠しているなら、俺が……。

 友達がクラスにひとりも居ないのは、学校に来たくなくなる原因にも繋がる気がするのだ。それに、ポジション的にも自分が一番友達になれるチャンスがある。
 そんなことを考えていると、今日は珍しく遅刻しないで現れた由良君に、ニコリと笑顔で話し掛けてみた。

「おはよ! 由良君! ギリギリセーフだね!」
「……ああ、はよ……」

 おお、安定の一言。

 それ以上話すことはないと、どかっと椅子に座る由良君は、スマホを弄り出してしまい俺も苦笑い。そんな俺を悠斗も苦笑い気味で、静かに眺めていた。


 今日は朝からロングホームルームだった。一週間後に開催される球技大会などの種目分けをすると、担任の先生がみんなに伝えた。それと合わせて、委員長と副委員を男女で一名づつ選出してくれとのこと。
 立候補はいないかと先生が声を上げるが、中々進んで手を挙げるものはいない。推薦で決めるにしても、誰が適任か新しいクラスではやはり難しいところだ。悠斗の名前も上げられたが、生徒会メンバーは厳しいだろうと除外してもらえた。

「誰か立候補はいないのか? チャレンジだぞー」

 担任がそう言うと、照れながら手を挙げてくれる人が数人いて、そこから多数決で決めていった。
 選ばれたのは、委員長に杉山君という男子。いかにも優等生という感じで、一年生のときにも委員長をしていたらく、テキパキとクラスを纏めてくれそうだった。
 副委員長に上谷さん。初挑戦で照れながらも挑戦したいと、頑張り屋さんな感じで嫌でも応援したくなるような、フワフワした可愛らしい女の子だった。
 二人が教壇に立ち、球技大会の出場種目を決めていった。新学期早々に行う球技大会は、新しいクラスで親睦を深めるためでもあり、優勝に向けて切磋琢磨できるイベントだ。
 毎年この時期に行われる大会は、去年もずいぶん白熱した。そのときに村上達とも距離が縮まったことを思い出す。

 去年は確か……バトミントンだったな。
 今年もバトかな……ポンポンするの好き♪

 そう心の中でウキウキしていると、黒板に書かれた種目を見て首を傾げる。
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