354 / 716
幕間 Piece《悠斗side》
15
しおりを挟む
背中越しに先輩はそう言ってきた。
その含みを持たせた言葉には、刺々しさを感じる。
「……秘密?」
首を傾げ秘密とは一体なんなのだろうと思案するが、生憎人に隠すような秘密など持ち合わせていない。
「その前に、先輩のお名前を教えてくれませんか?」
柔らかな笑顔でそう言うと、先輩はチラリとこちらに視線を寄越し一笑した。
「フッ……女性慣れしているのね? そうやってみんなを騙しているのかしら。そうね……フェアじゃないから教えてあげる。私は二年の高崎よ」
ずいぶん攻撃的だ。ようやく確認できた表情も険があり、目が据わっている。嫌な予感はしていたが、自分は彼女になにかしてしまったのだろうか。
考えたところで、高崎先輩とは今日が初対面。いくら自分が目立つ人間だとしても、恨みを持たれるような行いはしていないはずだ。
「知っているのよ? 柳瀬菜……確か、姫乃ちゃんだったかしら? あなたと柳瀬菜、付き合っているんでしょ?」
これは大変よろしくない。
なにがといえば、先輩は俺だけではなく、瀬菜に対しても悪意を持っている。呼び出されたのが俺で良かったが、ここで食い止めなければ、いずれ瀬菜にも危害が及ぶ。
「ええ……瀬菜は確かに僕の恋人ですけど、そのことでなにか問題でもあるんですか?」
姫乃ちゃんに関しても、一部の人間しか知らないことだ。それをなぜ先輩が知っているのか。
「──ッ! 問題? 大アリよ‼」
これは少し長引きそうだな。
瀬菜が心配するな……。
スマホを取り出し遅くなることを伝えようとすると、横から伸びてきた腕に遮られた。
「なにしているのよ! あなたは私と話をしているのよ!」
ヒステリックに高崎先輩は怒鳴り、俺のスマホを奪っていた。
「あの……返してくれませんか? 遅くなる連絡を……」
「連絡? 仲間を呼ぶつもりなの⁉ それとも彼? ああ、彼女かしら? どう見てもあっちが受ける側よね? うわっ! なんなのこれッ!」
顔を歪め俺のスマホを勝手に操作する先輩。
まるで汚いものでも見るような顔付きだ。
「クスッ……可愛さが分からないなら見ないでくださいよ。あぁ、いや違くて……返してもらえます? 個人情報ですよ? というか……呼び出した理由を……」
先輩の手からスマホを取ろうとすると、さっと避けられてしまう。画面を見ながら先輩は、弱点を握ったとでもいうように挑発してきた。
「このデータ広めてあげるわ! 拡散させて……そしたら、あなた達も学校に居られなくなる!」
「広めてくれるなんて光栄だな……公認になったら悪い虫もつかなくなる」
ニコッと微笑み大した脅迫ではないと思いながら、高崎先輩の言葉に引っかかりを感じた。
けど、広まったら先生から呼び出しかな?
でもまぁ……家族公認だし問題ないかな。
それより男もイケるって、広まるのは厄介か。
それにしても……あなた達もってどういうことだ?
「──クッ、なによ……馬鹿にして……私の幸せを壊したくせに」
「幸せ? あっ、ちょ、ちょっと‼」
考え込んでいたせいで行動が遅れてしまう。スマホを大きく掲げ鬼のような形相の先輩の姿。
「あなた達も壊れてしまえッ‼」
あっ……っと思ったときには追いかけていた。
これは……ヤバイかも……?
ギリギリ踏ん張ろうとしたが、重力に逆らえずにスローモションのように、ゆっくりと身体が宙に浮き落ちていく。時間にすると数秒の出来事。
その含みを持たせた言葉には、刺々しさを感じる。
「……秘密?」
首を傾げ秘密とは一体なんなのだろうと思案するが、生憎人に隠すような秘密など持ち合わせていない。
「その前に、先輩のお名前を教えてくれませんか?」
柔らかな笑顔でそう言うと、先輩はチラリとこちらに視線を寄越し一笑した。
「フッ……女性慣れしているのね? そうやってみんなを騙しているのかしら。そうね……フェアじゃないから教えてあげる。私は二年の高崎よ」
ずいぶん攻撃的だ。ようやく確認できた表情も険があり、目が据わっている。嫌な予感はしていたが、自分は彼女になにかしてしまったのだろうか。
考えたところで、高崎先輩とは今日が初対面。いくら自分が目立つ人間だとしても、恨みを持たれるような行いはしていないはずだ。
「知っているのよ? 柳瀬菜……確か、姫乃ちゃんだったかしら? あなたと柳瀬菜、付き合っているんでしょ?」
これは大変よろしくない。
なにがといえば、先輩は俺だけではなく、瀬菜に対しても悪意を持っている。呼び出されたのが俺で良かったが、ここで食い止めなければ、いずれ瀬菜にも危害が及ぶ。
「ええ……瀬菜は確かに僕の恋人ですけど、そのことでなにか問題でもあるんですか?」
姫乃ちゃんに関しても、一部の人間しか知らないことだ。それをなぜ先輩が知っているのか。
「──ッ! 問題? 大アリよ‼」
これは少し長引きそうだな。
瀬菜が心配するな……。
スマホを取り出し遅くなることを伝えようとすると、横から伸びてきた腕に遮られた。
「なにしているのよ! あなたは私と話をしているのよ!」
ヒステリックに高崎先輩は怒鳴り、俺のスマホを奪っていた。
「あの……返してくれませんか? 遅くなる連絡を……」
「連絡? 仲間を呼ぶつもりなの⁉ それとも彼? ああ、彼女かしら? どう見てもあっちが受ける側よね? うわっ! なんなのこれッ!」
顔を歪め俺のスマホを勝手に操作する先輩。
まるで汚いものでも見るような顔付きだ。
「クスッ……可愛さが分からないなら見ないでくださいよ。あぁ、いや違くて……返してもらえます? 個人情報ですよ? というか……呼び出した理由を……」
先輩の手からスマホを取ろうとすると、さっと避けられてしまう。画面を見ながら先輩は、弱点を握ったとでもいうように挑発してきた。
「このデータ広めてあげるわ! 拡散させて……そしたら、あなた達も学校に居られなくなる!」
「広めてくれるなんて光栄だな……公認になったら悪い虫もつかなくなる」
ニコッと微笑み大した脅迫ではないと思いながら、高崎先輩の言葉に引っかかりを感じた。
けど、広まったら先生から呼び出しかな?
でもまぁ……家族公認だし問題ないかな。
それより男もイケるって、広まるのは厄介か。
それにしても……あなた達もってどういうことだ?
「──クッ、なによ……馬鹿にして……私の幸せを壊したくせに」
「幸せ? あっ、ちょ、ちょっと‼」
考え込んでいたせいで行動が遅れてしまう。スマホを大きく掲げ鬼のような形相の先輩の姿。
「あなた達も壊れてしまえッ‼」
あっ……っと思ったときには追いかけていた。
これは……ヤバイかも……?
ギリギリ踏ん張ろうとしたが、重力に逆らえずにスローモションのように、ゆっくりと身体が宙に浮き落ちていく。時間にすると数秒の出来事。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる