王子×悪戯戯曲

そら汰★

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幕間 Piece《悠斗side》

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***


 朝はたまに一緒に登校するものの、柳君とそれ以外で会うことはなかった。

 テスト勉強……大丈夫かな?

 解らないところがあったら相談すると言っていたが、柳君から連絡が来ることはなかった。やはり俺では頼りないのだと、帰って来ればテスト勉強で気分を紛らわせた。
 最近必要以上に記憶を追いかけるのもやめていた。不安が増幅し、余計にブレーキが掛かってしまう気もしたのと、病院で無理に引き出そうとすれば、精神的に負担がかかると注意を受けたのだ。確かに無理に思い出そうとすると、頭痛に襲われ現実とイメージが混同し、なにが真実なのかあやふやになっていた。

 だからって思い出したくない訳じゃないけど……。
 あーあ……柳君に会いたいな……。
 この間抱きしめたとき、いい匂いがした。
 白い肌を舐めたとき、エロい声だったっけ……。

 あっ……うそ……やば……。

 柳君のことを少し思い出しただけで、自分の息子が元気になっていることに呆れる。
 そっと取り出し、数度擦ればすぐに射精感が込み上げてくる。

「……んっ……ッ!」

 ビクっと身体を震わせ、急いでティッシュをあてがうと、ビュッ、ビュッ……と濃い精液が溢れ出す。あまりにも早い射精に、最近全くしていなかったなと苦笑い。
 しかも自分は今、柳君で自慰をしていた。罪悪感を覚えながらも、可愛いく頰を染める柳君の顔を浮かべただけで、まだ萎えないペニスに指を絡めてしまう。

 柳君は自分でしたりするかな?
 どんな風にするかな……。

「ハッ、んっ……」

 きっと……涙目で……こうやって……。
 あの小さな手で……。

 シコシコと竿を擦り、亀頭とカリを抉りながら柳君の涙に濡れた顔を思い浮かべる。

『あっ……立花、くんッ……やぁッ! だ、ダメッ……あぅ』

 可愛い……なんであんな可愛いのかな……。
 快感に委ねる柳君は、綺麗なんだろうな……。
 どこもかしこも敏感で……。
 泣きながら……。

「イク──ッ!」

 荒い息を吐きながら、手のひらを拡げる。
 二回目だと思えない精液が指先を伝い床に落ちていく。

「……すご……ごめんね……柳君……」

 ここには居るはずのない柳君に謝罪する。性欲は衰えることはない。好きな子を思えば思うほど悪化する身体。
 自分でも気持ち悪いと思うのだ。柳君がこんなことを知れば、軽蔑されてしまう。素早く白濁を拭うと、スウェットの中にそれを仕舞い込んだ。


 ダメだ……今日はもう寝よう……。
 
 その後勉強を続けたものの、柳君を浮かべては頭を振り集中しようとするが、全く集中できず早目にベッドに潜り込み、悶々とする身体を持て余していた。


***


 柳君に会えない時間が増えると、補うように柳君で自慰をする。そんな日が何日も続いていた。罪悪感を覚えながらも止まらない。飢えている……そんな言葉がしっくりくる。
 それと同時に柳君と一緒に居るときは、真面に顔を見れなくなってしまう。朝メッセージを送り、返事がないときには迎えに行ったが、返事があるときは一緒に登校しないようにしていた。

 これは柳君不足だ……。

 テスト期間になると、ほとんど一緒に過ごす時間はなく、一生会えない不安に苛まれる。どんよりと重い空気を背中に纏い、淡々とした毎日を過ごしていた。

「なんだよ悠斗。お前、最近うざいんだけど」
「環樹先輩もだけど、みんなため息ブームなの?」
「環樹先輩もって……一緒にされたくないんだけど……」

 どうやらあちらこちらでため息が聞こえてくるらしい。
 そんなつもりはないが、勝手に口から飛び出すのだ。

「瀬菜ロスだろ……どうせ……」
「どうせって、どうせそうですよ」
「柳ちゃんは、ひとり真面目に勉強頑張っているっていうのに」
「えっ? ひとりで? 俺、最低……」

 村上君からの情報で、さらにどんよりとする。
 柳君で自慰をしていたことを深く反省したのだ。

「はぁ? お前なんかしたの?」
「王子の輝きが……薄い」
「柳君にはなにもしていないよ! ちゃんと距離だって俺なりに保っている。村上君! なにその表現……」
「王子はいつも自信に溢れてるから、輝きを失っていて新鮮~♪」
「フッ……最近特に酷いよな」
「俺だって色々考えているんだ……」

 もし自分が以前柳君にストーカーのように付き纏っていた人間だったら。もし酷いことを言って傷つけていたなら。
 柳君があまり自分に懐いてくれない理由を考えていた。実際それを知っているのは柳君で、こんなことを考えても仕方がないとはいえ、依然として埋まらない記憶に焦りを感じていた。
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