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第9幕 王子と王子
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「捕まえた~♪ ああ、想像以上にいい抱き心地~♪」
交わされた俺の身体を先輩は逆に捕らえていた。
うしろから覆い被さる先輩の手のひらが、太ももを撫で上げる。
「ちょっ、なにしているんだ! 俺、怒って!」
「姫乃ちゃんってお尻モチモチだね~♪」
「やめっ! 先輩! 離せよ! その冗談笑えない!」
「それじゃ、もっと笑えない冗談……言っていい?」
耳元にクツクツと笑う声が聞こえると、はっきりとした声で先輩は呟いた。
「僕と付き合ってくれる?」
なにを言っているのだろう。
今の俺にその冗談はキツ過ぎる。
「それ……本当……笑えないんだけど……」
「王子と付き合わないなら、僕の恋人になってよ」
「それは、仮定の話で……俺、悠斗のことが好きって言っただろ!」
「なら、ずっと片思いして、ずっとひとりで生きていくの?」
「それも仮定の話だ! 今そんな先のことなんて考えたくない!」
「やっぱり? 姫乃ちゃんは真っ直ぐだね。ちょっと心配で、追い詰めたくなる。そんな君だからかな……」
グルリと視界が反転しソファーに押さえ付けられると、間近に先輩の顔が迫っていた。先ほどまでのおちゃらけた雰囲気から一転、真面目な顔で微笑みながら頰を撫でられる。
「……欲しくなっちゃう。僕とセックス……してみない?」
「えっ……俺、男……」
「確かに、こんな格好だから勘違いそうけど、ちゃんと君が男だって認識はしているよ」
「先輩……そんなの……俺できない……」
瞳を大きく広げ掠れた声を震わせる。
先輩の下肢がグイッと押し付けられ、兆している様子を訴えてくる。
「経験はあるでしょ? ほら、僕の興奮してるの分かるよね? 君に欲情してちゃんと反応しているでしょ? 僕が勃起すれば問題なくできる」
「──うそ……俺、先輩とは……いやッ……やめッ」
嫌だ……冗談でもこんな……。
これじゃあのときと同じじゃないか‼
あのときは助けてくれたのに、今度は加害者になるのか⁉
必死に足掻き身を捩り、どうにか先輩を退かそうとするが、本気なのか緩まない拘束に恐怖ばかりが増していく。先輩の唇が俺の唇に触れ、深く口腔を嬲られてしまう。巧みな口付けは自分の気持ちとは裏腹に気力を奪い、されるがままになってしまう。
甘いキス、猛毒が混じり思考を停止させる情熱的な深いキス。悠斗とは違う……そう思うと涙が零れ、プツリと大切な絆が途切れてしまったような気がした。
「姫乃ちゃん……そんなだと本当に抱いちゃうよ?」
唇を離した先輩は俺の頬を撫でながら確認してきた。
「──先輩、酷いです……俺が弱ってるからって……」
「弱っているところに付け込むのは常識でしょ? それより諦めちゃうの? 僕としては、もうちょっと抵抗して欲しいんだけどな?」
「こんな……無理矢理しといて、なにをいまさら。こんなの……俺、悠斗を裏切ったみたいだ……」
ギュッと唇を噛み締め、与えられた感触を拭おうとする。
汚されてしまった。心のどこかでずっと悠斗を待っていたのに……。
「まだキスだけなのにね。君を忘れてしまった薄情な男に、まだ操を立てるの?」
「キスは誓いだ……。無理矢理なんて最低だ」
「そう? 僕は最高の気分だよ」
ニタッと笑う環樹先輩は俺をソファーに張り付け、大きく脚を開いていった。
力で勝てるならそうしている。けれど俺は非力で、抵抗する気力すらすでに削がれていた。
「……もう、好きにしてよ」
交わされた俺の身体を先輩は逆に捕らえていた。
うしろから覆い被さる先輩の手のひらが、太ももを撫で上げる。
「ちょっ、なにしているんだ! 俺、怒って!」
「姫乃ちゃんってお尻モチモチだね~♪」
「やめっ! 先輩! 離せよ! その冗談笑えない!」
「それじゃ、もっと笑えない冗談……言っていい?」
耳元にクツクツと笑う声が聞こえると、はっきりとした声で先輩は呟いた。
「僕と付き合ってくれる?」
なにを言っているのだろう。
今の俺にその冗談はキツ過ぎる。
「それ……本当……笑えないんだけど……」
「王子と付き合わないなら、僕の恋人になってよ」
「それは、仮定の話で……俺、悠斗のことが好きって言っただろ!」
「なら、ずっと片思いして、ずっとひとりで生きていくの?」
「それも仮定の話だ! 今そんな先のことなんて考えたくない!」
「やっぱり? 姫乃ちゃんは真っ直ぐだね。ちょっと心配で、追い詰めたくなる。そんな君だからかな……」
グルリと視界が反転しソファーに押さえ付けられると、間近に先輩の顔が迫っていた。先ほどまでのおちゃらけた雰囲気から一転、真面目な顔で微笑みながら頰を撫でられる。
「……欲しくなっちゃう。僕とセックス……してみない?」
「えっ……俺、男……」
「確かに、こんな格好だから勘違いそうけど、ちゃんと君が男だって認識はしているよ」
「先輩……そんなの……俺できない……」
瞳を大きく広げ掠れた声を震わせる。
先輩の下肢がグイッと押し付けられ、兆している様子を訴えてくる。
「経験はあるでしょ? ほら、僕の興奮してるの分かるよね? 君に欲情してちゃんと反応しているでしょ? 僕が勃起すれば問題なくできる」
「──うそ……俺、先輩とは……いやッ……やめッ」
嫌だ……冗談でもこんな……。
これじゃあのときと同じじゃないか‼
あのときは助けてくれたのに、今度は加害者になるのか⁉
必死に足掻き身を捩り、どうにか先輩を退かそうとするが、本気なのか緩まない拘束に恐怖ばかりが増していく。先輩の唇が俺の唇に触れ、深く口腔を嬲られてしまう。巧みな口付けは自分の気持ちとは裏腹に気力を奪い、されるがままになってしまう。
甘いキス、猛毒が混じり思考を停止させる情熱的な深いキス。悠斗とは違う……そう思うと涙が零れ、プツリと大切な絆が途切れてしまったような気がした。
「姫乃ちゃん……そんなだと本当に抱いちゃうよ?」
唇を離した先輩は俺の頬を撫でながら確認してきた。
「──先輩、酷いです……俺が弱ってるからって……」
「弱っているところに付け込むのは常識でしょ? それより諦めちゃうの? 僕としては、もうちょっと抵抗して欲しいんだけどな?」
「こんな……無理矢理しといて、なにをいまさら。こんなの……俺、悠斗を裏切ったみたいだ……」
ギュッと唇を噛み締め、与えられた感触を拭おうとする。
汚されてしまった。心のどこかでずっと悠斗を待っていたのに……。
「まだキスだけなのにね。君を忘れてしまった薄情な男に、まだ操を立てるの?」
「キスは誓いだ……。無理矢理なんて最低だ」
「そう? 僕は最高の気分だよ」
ニタッと笑う環樹先輩は俺をソファーに張り付け、大きく脚を開いていった。
力で勝てるならそうしている。けれど俺は非力で、抵抗する気力すらすでに削がれていた。
「……もう、好きにしてよ」
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