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第9幕 王子と王子
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ポツリと呟いた胸の内を、怖さが物足りないと受け取ったのか、見終わった感想を口にする悠斗。なんとなく悠斗を恋愛感情で意識し始めた頃の思い出は、つい最近のことのように思える。
「覚えていた?」
「まぁまぁね」
「へへっ……だよね。お風呂入る? てか入れる?」
「一緒に?」
「違うし……先にお客さんからだよ?」
「一緒のほうが楽しいと思うけどな。それにほら、お風呂のシーンは二回目でも怖かった」
「怖がる歳じゃないじゃん」
悠斗をお風呂場に案内して先に入ってもらう。寝間着用に用意したスエットを、お風呂から上がった悠斗が「柳君これ凄くぴったり!」と感動してる。
まぁ……そうだよね……お前のだから。
ボロが出ないうちに、交代で俺もさっとお風呂に入った。ホカホカで首にタオルを掛けて部屋に戻ると、悠斗は新しいスマホを弄ってカスタマイズしていた。
「新しいのってワクワクするよね! やっぱ凄い動作速い!」
「ふふっ……ほとんどデータ入っていないから余計にね」
カシャリと音がする。
自分にカメラが向けられたのだと気付く。
「ちょっと! 今俺撮った? 頭ビショビショなのに!」
「湯上がり美人さんだよ?」
自分がどんな風に撮られたのか気になり、見せてと覗き込むと、首から下げていたタオルを抜き取られ、ゴシゴシとタオルドライしてくれる。
これも久々だ……。
目を細め大人しくゴロゴロと、喉を撫でられた猫のようにしていた。
「柳君ってさ……付き合ってる人とか居るの?」
「えっ……なんで?」
今日も急な質問を色々してくる悠斗。
「その反応は居るってことかな?」
「今は……その、居ないかな……」
「最近まで居たの?」
「立花君、今日は一段と質問が多いね。俺がモテると思うの?」
「クスッ、柳君今日はいっぱい喋ってくれるから。それにね……この痕……朝からずっと気になっていたんだ」
タオルをパサリと取られ、多澤に付けられた噛み痕をそっと撫でられる。すっかり忘れていた俺は、ギョッと驚き言葉を詰まらせ挙動不審。
「あ、こっ、これ……痕……これは……えっと、その違くて……」
「まだ新しそう。こんなに情熱的な印、恋人ぐらいしか付けないよね? それとも柳君はもっと悪いことでもしているの?」
「本当に違うよ! そう! ふざけていたんだ! だから恋人とか、悪いことしている訳じゃないよ! と、友達‼」
「ふざけて? 相手は誰? 僕も知っている人?」
悠斗の手を払い除け、空気を変えようと立ち上がる。
「へへっ……そうだ! も、もう寝ようよ! 布団引くから! ──ちょっ、うわっ‼」
身体が浮いたと思うとバウンドする。
「面倒だし、折角ベッドが広いんだ。一緒に寝ればいいでしょ?」
「あ、あの……立花君……」
閉じていた瞼を開けると悠斗が覆い被さり、俺を囲うように腕をつき見下ろしていた。笑っているのに笑っていない顔。この顔は何度か見たことがある。納得できず疑問を感じているとき、悠斗はこの笑顔で追及してくるのだ。
「ねぇ、柳君。僕と柳君も友達なら……おふざけしてもいいよね?」
「いや、ちょ、たんまっーー! くすぐったいっ、あっ、やぁッ!」
首筋をペロリとひと舐めされると、痕を辿るように唇を寄せてくる。悠斗の毛先がサワサワと肌をくすぐり、俺は狼狽えるばかり。
抵抗するが悠斗の重みは俺をベッドに張り付ける。
「これ、血も出たでしょ。相当痛かった? 僕のは優しいでしょ?」
囁く声の振動が肌を撫でゾクゾクと粟立つ。
「……ダメッ……だってば、あ……っ、あうっ!」
「クスッ……可愛い声。ねぇ、誰? これを柳君に付けたの……教えてくれなきゃ、ずっとこのままだよ?」
久しぶりの愛撫に嫌でも身体が反応してしまう。
「覚えていた?」
「まぁまぁね」
「へへっ……だよね。お風呂入る? てか入れる?」
「一緒に?」
「違うし……先にお客さんからだよ?」
「一緒のほうが楽しいと思うけどな。それにほら、お風呂のシーンは二回目でも怖かった」
「怖がる歳じゃないじゃん」
悠斗をお風呂場に案内して先に入ってもらう。寝間着用に用意したスエットを、お風呂から上がった悠斗が「柳君これ凄くぴったり!」と感動してる。
まぁ……そうだよね……お前のだから。
ボロが出ないうちに、交代で俺もさっとお風呂に入った。ホカホカで首にタオルを掛けて部屋に戻ると、悠斗は新しいスマホを弄ってカスタマイズしていた。
「新しいのってワクワクするよね! やっぱ凄い動作速い!」
「ふふっ……ほとんどデータ入っていないから余計にね」
カシャリと音がする。
自分にカメラが向けられたのだと気付く。
「ちょっと! 今俺撮った? 頭ビショビショなのに!」
「湯上がり美人さんだよ?」
自分がどんな風に撮られたのか気になり、見せてと覗き込むと、首から下げていたタオルを抜き取られ、ゴシゴシとタオルドライしてくれる。
これも久々だ……。
目を細め大人しくゴロゴロと、喉を撫でられた猫のようにしていた。
「柳君ってさ……付き合ってる人とか居るの?」
「えっ……なんで?」
今日も急な質問を色々してくる悠斗。
「その反応は居るってことかな?」
「今は……その、居ないかな……」
「最近まで居たの?」
「立花君、今日は一段と質問が多いね。俺がモテると思うの?」
「クスッ、柳君今日はいっぱい喋ってくれるから。それにね……この痕……朝からずっと気になっていたんだ」
タオルをパサリと取られ、多澤に付けられた噛み痕をそっと撫でられる。すっかり忘れていた俺は、ギョッと驚き言葉を詰まらせ挙動不審。
「あ、こっ、これ……痕……これは……えっと、その違くて……」
「まだ新しそう。こんなに情熱的な印、恋人ぐらいしか付けないよね? それとも柳君はもっと悪いことでもしているの?」
「本当に違うよ! そう! ふざけていたんだ! だから恋人とか、悪いことしている訳じゃないよ! と、友達‼」
「ふざけて? 相手は誰? 僕も知っている人?」
悠斗の手を払い除け、空気を変えようと立ち上がる。
「へへっ……そうだ! も、もう寝ようよ! 布団引くから! ──ちょっ、うわっ‼」
身体が浮いたと思うとバウンドする。
「面倒だし、折角ベッドが広いんだ。一緒に寝ればいいでしょ?」
「あ、あの……立花君……」
閉じていた瞼を開けると悠斗が覆い被さり、俺を囲うように腕をつき見下ろしていた。笑っているのに笑っていない顔。この顔は何度か見たことがある。納得できず疑問を感じているとき、悠斗はこの笑顔で追及してくるのだ。
「ねぇ、柳君。僕と柳君も友達なら……おふざけしてもいいよね?」
「いや、ちょ、たんまっーー! くすぐったいっ、あっ、やぁッ!」
首筋をペロリとひと舐めされると、痕を辿るように唇を寄せてくる。悠斗の毛先がサワサワと肌をくすぐり、俺は狼狽えるばかり。
抵抗するが悠斗の重みは俺をベッドに張り付ける。
「これ、血も出たでしょ。相当痛かった? 僕のは優しいでしょ?」
囁く声の振動が肌を撫でゾクゾクと粟立つ。
「……ダメッ……だってば、あ……っ、あうっ!」
「クスッ……可愛い声。ねぇ、誰? これを柳君に付けたの……教えてくれなきゃ、ずっとこのままだよ?」
久しぶりの愛撫に嫌でも身体が反応してしまう。
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