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第9幕 王子と王子
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しおりを挟む新年が明け冬休みもあっという間に終わると、三学期が始まった。久し振りの登校に休みボケが抜けない俺は、朝から大奮闘だ。
悠斗に手伝ってもらいながら支度を終えると、二人で家を飛び出し猛ダッシュ。息を切らせながら教室に駆け込み、ギリギリセーフ。
ドタバタな初日も悠斗に教室まで送り届けられ、いつもの日常へと戻っていった。
「あーあ。冬休み終わっちゃった」
「楽しかったから余計に、だよねー」
村上と冬休みの思い出に浸りながら、早くも現実逃避をする。
「温泉に戻りたい……」
「でもほら、三学期は意外と短いし、あっという間にこのクラスともお別れだよ」
「だよな……二年になっても村上と同じクラスがいいなぁ~」
「柳ちゃん……俺、感激して涙出そう……」
今にも泣きそうに瞳をうるうるさせる村上。
「大げさだな……」
本心を言ったまでだが、感動を示す村上に素直になれない俺は、照れ隠しに苦笑いでごまかした。
ついこの間入学したばかりと思えば、もう一年が終わる。三年生の卒業式も間近に控え、生徒会も忙しくなっていくだろう。
休み明けは特に大きな行事もなく、休みの日に悠斗とプチデートをするぐらいで、淡々と日々が過ぎていった。
大きな事件といえば、三浦さんが冬コミでかなりの部数を売り上げたらしく、めでたく完売でビックリするモデル料を貰ったことだ。悠斗にコス本を見せるのを忘れていた俺は、その後もう一度ナギコスをしてとせがまれ、大変な思いをした。
***
寒さも厳しくなり、今年は地元でも雪を見ることができた。
一月後半辺りから卒業式と入学式に向け、生徒会も慌ただしくなり始めていた。
卒業式とは別に送る会という模様しの企画と、各生徒への指示や、新入生向けの会報作りなど盛り沢山な資料の山達にげんなりしていた。
まさか…生徒会がこんなに忙しいなんて……。
甘くみていたな……。
優雅にお茶を飲みながら、環樹先輩と会話をしている時間が懐かしい。あまりの激務に魂が抜けたような俺の脳みそに、激怒の大声が轟いた。
「会長! 休んでいないで仕事してくださいよ! 当日間に合わなかったじゃ洒落になりませんよ!」
ここ何日かが山場だと、橋口先輩は猫の手も借りたいと、機敏に動きながらも中々動かない環樹先輩の尻を叩き怒鳴りつけている。
「はいはい~やりますよ~。本当に生徒でこれだけのこと準備しなきゃいけないなんて、先生方も鬼だよね~♪ そう思わない姫乃ちゃん」
「鬼ですか……豆撒きにはまだ早いですよね……」
「わぁ~~! 橋口~~! 僕の姫乃ちゃんが壊れた~~!」
「あんたが仕事しないからでしょ‼」
普段穏和な人が怒るとやっぱり怖え……と、俺もできることを手伝っていた。
毎日授業が終わると、生徒会室に行き酷いときにはお昼も赴き、片手にパンやおにぎりを持ちながら作業をする日もあった。そんな激動の日々はあっという間で、山場が過ぎ落ち着いて来たころには二月を過ぎていた。
学校中の女子生徒がソワソワとし、キャッキャと弾んだ声を上げ、なんとも不思議な空気を醸し出している光景を何度も目撃していた。
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