287 / 716
第8幕 年越し湯けむり罰ゲーム?
16
しおりを挟むゴーン……ゴーン……。
遠くからお腹に響くような鐘の音が聞こえる。
それから癒やしを誘うせせらぎ。
「気が付いた?」
「……ここ……は?」
「部屋の外湯。瀬菜、少し意識飛んでいたんだ。大丈夫?」
「うん……気持ちいい」
瞳をそっと閉じ悠斗に寄り掛かる。ぬるめのお湯が心地いい。
「聞こえる? 除夜の鐘」
「カウントダウン……行けなかった?」
みんなでお寺にお参りに行くはずだったが、この様子ではまず無理だ。
「行きたかった?」
「そりゃ、折角だし。二人には悪いことしちゃったな」
「まぁ、理解ある友人達だから。俺は瀬菜とこうして過ごす年越しも悪くないと思っているよ」
「そうだな。てか、もう年越しちゃった?」
お参りは無理でも、せめてカウントダウンぐらいはしたかった。しゅんとする俺に、悠斗はまだ年は明けていないと教えてくれる。
「除夜の鐘は今年中は百七回叩いて、年が明けたら最後の百八回目を叩くんだよ? お寺によって違うけどね?」
「そうなんだ。温泉入りながら年越しだなんて贅沢だな。もっと大人になったらさ、お酒飲みながらとかもしたいな」
「ふふっ……そうだね。今年は瀬菜と付き合えて、沢山色々して幸せだったな」
「俺も……まさか付き合うことになるなんて、去年までは想像できなかったけど……」
お互いに照れくさそうにしながら微笑み合う。
ゴーン……と鳴っていた鐘の音が途切れ、年が明けたのを知らせてくれた。
「へへっ、結局カウントダウンできなかった。なんだか年が明けたって感じしない」
「本当だね。なら、それらしく。今年もよろしくお願いします。瀬菜にとって、いい一年になりますように」
「こちらこそ、よろしく……お願いします……」
「クスッ……照れちゃってどうしたの?」
「改まってこういう挨拶するのって、なんだか照れる……へへっ」
「そう? 今年はどんな一年になるかな」
まだ見ぬ未来に悠斗は少年のようにわくわくとしている様子だ。けれどすぐにその表情は変化する。
口角を上げ濡れた瞳で俺を見つめてくる悠斗に、背筋がゾワリと震える。
「な、なにっ⁉」
「なにって……、姫始めしないとだよ?」
「姫……始め? なにそれ?」
「聞いたことないの?」
悠斗は驚いた表情で俺を見つめていた。
なにか始めるってことだよな?
姫、始める? まさか女装⁉
いや、でもここ風呂だし……俺、女装封印したし?
お正月だし、百人一首的な遊び?
ぐるぐると考えているうちに、悠斗はお湯の中で俺のお尻を持ち上げ侵入してきた。咄嗟のことに俺はおかしな声を上げてしまう。
「ひぃっ! おっ、お前ッなにしてッ、お湯……入ってッ!」
「温泉効果で、外も中もツルツルだね♡」
「ばかっ……んっふぅ、はぁはぁ……」
「これが姫始め。ああ、でも瀬菜は男の子だから、殿始めになるのかな?」
散々慣らされた内部はしっかりと悠斗を受け入れ、ギュウギュウと締め付けてしまう。掛け流しの温泉水が、浴槽から溢れバシャバシャと排水口に流れていく。
「うっ……殿って……お湯……勿体ないッ。ここっ、外……んんッ」
「瀬菜との大事な時間の始まり。新年早々エッチしておかないとね? 雅臣と村上君は今頃お寺だし、気にしないで?」
「挿れるなら、先に言えっ! ……ほかのお客さんだって……居るだろ……ッ」
「先に言ったら、瀬菜恥ずかしがって逃げるでしょ? 声は控えめにね♡」
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる