王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第7幕 ドキドキ☆クリスマス

09

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 名前を呼ばれ顔を向けると、悠斗の顔が間近にあった。驚く俺の口元をペロリと舐められ、真っ赤になってしまう。わなわなとしている俺に爽やか笑顔を返す悠斗。

「クリーム付いてたよ?」
「あ、ありがとう……?」
「ふふっ、なんかいいなぁ~。瀬菜とこうして人目も気にせずにできるの」
「ちょっとは気にしろよ……。俺さっきから周りの視線が痛い」
「今日はイブだもん。瀬菜凄く可愛いから、俺のってアピール♡」
「馬鹿……そんなのしなくても……俺は……」

 声が尻蕾で小さくなってしまう。「お前に夢中だよ」という最後の声は、悠斗には聞こえなかったようだ。終始イチャイチャしている馬鹿ップル全開だが、こんなにオープンに接するのは初めてで、今日頑張って女装をした甲斐があったというものだ。
 そんな俺の気持ちを読み取ったのか、悠斗は俺に提案をしてきた。

「たまには俺も女装しようか?」
「いや、それは大丈夫。きっと綺麗な長身のモデルさんみたいになる。それに、小さい俺とバランス取れないだろう?」
「そう? でも瀬菜、女装好きじゃないでしょ?」
「好きじゃないけど……でも悠斗とくっ付けるから、たまにはいいかなって思った」
「クスッ……可愛い……ありがとう瀬菜」

 悠斗は立ち上がり手を差し出すと、俺をエスコートするように立ち上がらせた。

「アシカのショーが始まるから行こ」
「うん!」

 それから時間ぴったりで、アシカのショーを間近で堪能する。飼育のお姉さんに魚を受け取り、アシカに直接餌をあげると、お礼にアシカからキスしをてもらえた。


「もう、俺滅茶苦茶恥ずかしかった! アシカに説教ってなんだよ」
「だって、アシカのくせに瀬菜のほっぺにキスするとかあり得ない!」
「減るもんじゃないだろうが!」
「減るよ! あとで俺もいっぱいするからね!」
「アシカに対抗するなよ……。しかもあのアシカ、メスだってお姉さん言っていたぞ」
「メスとかオスとか関係ないの!」

 流石に疲れてきた……。
 アシカでこれでは人間なんて死刑ものだ。

「機嫌治せよ……。大方回ったし、約束してたクリスマスプレゼント、お土産屋さんに選びに行こうよ!」
「そうだね。ちゅうは取り敢えずあとにして、行こうか♪」
「まだ言うか! 全くお前って奴は……」

 悠斗が人前で暴走を始める前に、お土産屋さんに向かう。誕生日も過ぎたばかりだし、クリスマスプレゼントは事前に打ち合わせ済みだ。悩まないように、水族館でなにか思い出になるものを選ぼうという話をしていた。
 お土産売り場には、沢山のぬいぐるみやクリスマス限定のお菓子や小物で溢れていた。

「俺は……これにする。おしゃれで可愛い」
「ならさ、色違いで買わないか?」

 悠斗が手にしたのはペンギンのマグカップ。色は二種類あるようだ。

「うん、いいかも。それじゃ、うちに来たとき瀬菜専用にしよ?」
「へへっ、俺専用とか嬉しい♪」
「ほかに欲しいものある? 瀬菜の気に入ったのプレゼントしたい」
「う~ん。なら、これ。綺麗だなって……」
「スノードームだね。クリスマス限定だし、いいと思うよ」
「ペンギンが雪の中泳いでるみたいで、ボーッとできるし、なんだか和む!」

 一通りショップの中を見て回り、気に入ったものを選んだ。俺へのプレゼントが多い気がしたが、クリスマス限定という言葉に唆られてしまった。
 こういうところはどうしてか気持ちが大きくなってしまう。普段はそんなに欲しいと思わないが、無性にペンギンのぬいぐるみが気になってしまう。手を伸ばそうとしたが、グッと堪えて我慢する。

「これぐらいにしよう!」
「確かに見ていると欲しくなっちゃうよね」
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