王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
245 / 716
第6幕 計画は入念に、愛情込めて

51

しおりを挟む
「ちょっと……もうヤダ!」
「うるせぇ……黙っていろ」
「なんでこの間より短いんだよ!」
「だ、ま、れ! 悠斗のため……だろ? ほらこっち向け」

 多澤は俺の顎をグイッと持ち上げると、綺麗に化粧を施していく。口が悪いがアートな男だ。手先が器用な芸術肌な多澤は、綺麗にアイライナーを引き、唇にはナチュラルなピンクベージュを乗せ、オッドアイで青と緑のカラコンを装着させられる。それからあちらこちらに真っ赤なリボンを巻付けていった。
 俺そのものがプレゼントとでもいうような仕上がりに、多澤は下から上まで確認し最終チェックをする。最近どうにも俺はみんなの着せ替え人形だ。

 短い黒パンツにニーハイソックス。ヘソ出しに胸の開いた白いシャツ。黒の短いベスト。ふんわり髪の長い三つ編みに、うさぎの耳。
 そう、お馴染みになりつつある悠斗のお気に入り、セラゾのナギコスだ。ただし二度ほど着たときよりも、短パンがやけに短い。

 これ……パンツ出ちゃうじゃん!

「んー、ダメだな……。瀬菜、脱げ。そしてこれに履き替えろ」

 目の前に一枚の可愛らしい布切れが差し出される。

「それって……ひ、紐………」
「ノーパンと、どっちがいい」
「どっちも嫌じゃ‼」

 多澤の横暴に俺は抵抗するものの、敵うはずもなく渋々紐パンツをまた履く羽目になった。もちろんちゃんと着替えるときは部屋から出て行って貰い、先にリビングに戻るように二人を追いやった。


 俺、単なる変態じゃね?
 このパンツ……多澤買ったのか?
 そりゃ悠斗の誕生日だけど、悠斗を喜ばせたいけど……。
 あはは、悲しい……。

 着替えをし、意を決してみんなの居るリビングに向かう。まだ食べていないケーキも食べたい。それに部屋に籠もっていれば悠斗か多澤が迎えに来てしまう。
 深呼吸をして扉を開けるとみんなの視線が一斉に自分のほうへと向けられた。俺の姿に一瞬室内が静まる。やはりこんな姿は場違いだろうか。けれどすぐにその場が湧いた。

「瀬菜君可愛いわね~。おばさん興奮しちゃう♪」
「うちの未来のお嫁さんは凄いね母さん!」
「せっちゃんギュってしたくなっちゃう! 悠くんの気持ちがなんだか分かるわ♪」
「これって、さっき村上君が悠斗君にプレゼントしてたパネルのコスの格好だよね! 実際に見ると本当に可愛い~~♪ うちにも写真飾りたい~♪」

 どうやら食事を終え、みんなそれぞれ持ち寄ったプレゼントを渡しているところだった。その中には大きめなパネルに俺のコス姿を納めた写真もあった。村上のとっておきは変なグッツではなくホッとするものの、自分の姿というのはなんとも複雑だ。

「悠斗これ、俺からのプレゼント」
「へっ⁉ ちょっ、ちょっと待て‼」

 多澤がとんでもないことを言い、悠斗の前に差し出された俺。悠斗は惚けた様子で、俺を上から下まで舐めるように視線を流している。

「いつから俺は多澤の所有物になった⁉」
「違うわ! 悠斗に殺されるような言葉吐くんじゃねぇよ! 俺のプレゼントは外側だけだぞ。中身はとっくに悠斗のもんだしな」
「はっ‼ 凄く嬉しい♡ ヤバ……前よりもバージョンアップしてる。雅臣は俺のこと良く理解しているね! このコス衣装貰っていいの?」
「ああ、もちろんだ。お前の脳みそは大体瀬菜で埋め尽くされているからな。三浦さんに型紙貰って作ったから、汚してもいいぞ。まぁ、あとでたっぷり楽しめ」

 多澤は俺の顔を見てニヤッと笑う。多澤の含みのある言い方と表情に、背中にザワッと寒気が走る。悠斗はだらしない顔付きで「美味しそう」と訳の分からない不吉なことを呟いていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...