236 / 716
第6幕 計画は入念に、愛情込めて
42
しおりを挟む***
悠斗の誕生日が目前に迫っていた。プレゼントも無事完成し、仕込みの準備も万端だ。サプライズが楽しくて堪らない。当日悠斗がどんな反応をするのか考えただけで、顔が自然と綻んでしまう。
学校に登校する途中、悠斗に「瀬菜は最近凄くご機嫌だね」と言われ、冷静を装いながら必死にいい訳を探した。ご機嫌になるに決まっている。悠斗の誕生日は俺にとっても大切で、おめでたいことなのだ。
十一月十日、午前五時三十二分──悠斗が産まれた日。
誕生日の日付は知っていたが、産まれた時刻までは知らなかった。俺の誕生日に悠斗がさらりと口にした俺が産まれた時刻。自分でも忘れていたことだ。
誕生日と一括りに言っても、その日の何時というのは結構大切なのかもしれない。一分前はその子はまだ誕生していないのだ。変に拘り過ぎかもしれないが、些細な言葉が純粋に嬉しかった。
贔屓目で見ても悠斗はやはり凄い奴だと、俺もおばさんに出生届のコピーを見せてもらったのが一ヶ月前のこと。そのとき、おばさんは懐かしむように誕生秘話を俺に教えてくれた。
産まれたばかりの悠斗は平均より小さく、ちゃんと育ってくれるのか、おじさんと二人でずいぶん心配したようだ。今はそんな心配もなく、俺よりも大きく立派に成長した。「きっと育った環境が良かったのね」と、おばさんは笑っていた。
「とうとう明日だね。こっちは俺達に任せて!」
村上がウィンクしながらニシシと笑う。
「うん、頼んだぞ!」
お昼休みに久々に村上と二人で昼食を取りながら、明日の計画をおさらいした。
明日は残念ながら木曜日で時間に限りはあるが、生徒会にもお願いし夕方の業務はお休みにしてもらった。最後の確認に仕掛け人達へメッセージを一斉送信した。なんだか今から緊張してしまう。
ひと息ついてから教室に戻ると、三浦さんから綺麗にラッピングされた包みを渡される。
「瀬菜っち明日って立花君お誕生日だよね? これ渡して欲しいな。セラゾファン同士、細やかな贈り物! あ、私のは恋愛感情とかやましい気持ちじゃないからね!」
「ありがとう……って、三浦さん自分から渡せばいいじゃん」
「うーん。分かってないな~。たぶん瀬菜っちからじゃないと、立花君受け取らないからさ」
「ん……どうして? 三浦さんからなら受け取るだろ?」
首を傾げる俺に、三浦さんは「鈍い~。鈍感受け萌え♡」と言ってくる。プレゼントは贈る人が本人に渡すことが、一番喜ばれるではないか。悠斗のことだ。きっとファンの子から、明日は沢山プレゼントを贈られるはず。分かりきっていることだ。
憂鬱になる自分を今から想像できる。それでもおめでたいこと。三浦さんは俺達の関係を知っているからか、妙に気を使っていた。
今日は村上と帰宅する。悠斗は多澤に任せ、無理矢理予定を作ってもらった。家に帰ると早速最後の仕上げをする。ラッピング袋にプレゼントを入れリボンを括る。
「……あれ? ダメだなリボン縦になっちゃう」
「柳ちゃん下手くそ~。方向が逆だよ」
村上にレクチャーしてもらい綺麗に結ぶ。
「おお! 本当だ。リボンとかネクタイってコツがあるのな」
「コスとかのリボンはちゃんとできていたじゃん! 同じでしょうが」
「上手くできるときと、できないときがあるんだよ!」
「柳ちゃんらしいけど……」
不器用な俺に村上は呆れている様子だ。
「村上も悠斗にプレゼントするのか?」
「もちろん! 俺の今回やばいよ?」
「えーーなになに⁉︎ 超気になる!」
「それは当日のお楽しみ~♪」
「あっ‼︎ てかお前まさかと思うけど……」
「フッフッフッーー。内緒ーーー♪」
「ちょっとなんだよ! 俺のときみたいなの絶対禁止!」
「王子へのプレゼントだも~ん♪」
ニヤニヤと笑う村上を白い目で見つめながら、どうか変なアダルトグッツじゃありませんようにと、村上本人ではなく神様にお願いをしておいた。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる