王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
196 / 716
第6幕 計画は入念に、愛情込めて

02

しおりを挟む
 材料がないことは百も承知だ。
 悠斗をキッチンに立たせると、アイスとメイプルシロップがないと、多澤と村上を連れ出し買い物という名の陽動作戦へと導いた。

「急にどうしたのさ。大人数でお使いなんて、柳ちゃんらしくないけど」
「だよな。瀬菜ならひとりできるもん! ……だよな。そんで悠斗に怒られるパターン」

 コンビニに向かいながら、二人は不審げに呟く。
 多澤に弄られても、俺は反論もせずに焦りをみせていた。

「お、おぉーーっ、俺ってば、重大なこと思い出しちゃった‼︎」

 興奮気味にそう言う俺。
 そんな俺の態度に、二人はため息を吐きながらまたか……と言いたそうな顔付きをする。

「王子に内緒なの? またどうせ見つかるよ?」
「すでにこの行動で怪しんでいる気がするけどな」
「えぇっーーーー! ダメダメッ! 絶対にバレないようにしないと‼︎」

 そう、バレたらいけない。
 絶対に内緒だ。
 でも俺、なんで今思い出したんだろ。
 最悪だ……。

「いいから早くなに思い出したか言えよ! 気になるだろうが!」
「柳ちゃん俺達も居るよー。物思いに耽ってないでー」

 青くなったりニヤニヤしたりする俺の百面相の切り変わり速度は凄まじく、村上と多澤はなんなんだよとやきもきしている。

「はっ‼︎ ごめん。もうすぐ! もうすぐだよっ‼︎」
「もうすぐ?」
「すぐにあるのは中間テストだよ~?」
「違くて! 悠斗のやつ! 十一月十日‼︎」
「ああ、それか……お前、今さっき思い出したのかよ……。悠斗が哀れだ」
「その日ってなにかあったっけ?」

 多澤は理解している様子だが、村上は首を傾げている。

「悠斗の誕生日だよ‼ どうしよう……」
「どうするもこうするも、祝えばいいだろ? 悩むことじゃねぇだろ」
「そうだけど‼ 俺のときあんなに一生懸命お祝いしてもらったのに、なにも考えていない。テストもあるし、生徒会もあるから準備するのあんまり時間ないだろ?」
「まぁ……時間はないかもだけど、気持ちが大事だから今からでも遅くないよ」

 村上が言うように確かに気持ちが一番大切だ。けれど、折角お祝いするなら悠斗には楽しんで欲しい。悠斗の親友である多澤は、なぜこんなにも冷静で居られるのか不思議でならない。

「お前、冷静だよな」
「前日に思い出した訳じねぇし、まだ余裕だろ。あぁ、いい案思いついた。瀬菜はプレゼントは『俺』で、いいんじゃねぇーの?」
「はっ! プレゼントも考えなきゃ‼ そんなプロポーズみたいなことしてみろ! 速攻教会連れて行かれるわ!」
「教会ってっあはは……けど王子ならあり得るーー! でもなにか用意するにしても、ベッタリ王子は引き剝がさないと動きにくいよね?」

 最近の悠斗は俺に常にベッタリで、内緒にするにはまずそこからどうにかしなければならない。鋭い悠斗にバレないようにするには……勉強で酷使した頭をさらに回転させる。湯気が立ちそうになるが、必死で考えを巡らせる。

 ああ……一体どうしたらいいんだ……。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...