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第6幕 計画は入念に、愛情込めて
02
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材料がないことは百も承知だ。
悠斗をキッチンに立たせると、アイスとメイプルシロップがないと、多澤と村上を連れ出し買い物という名の陽動作戦へと導いた。
「急にどうしたのさ。大人数でお使いなんて、柳ちゃんらしくないけど」
「だよな。瀬菜ならひとりできるもん! ……だよな。そんで悠斗に怒られるパターン」
コンビニに向かいながら、二人は不審げに呟く。
多澤に弄られても、俺は反論もせずに焦りをみせていた。
「お、おぉーーっ、俺ってば、重大なこと思い出しちゃった‼︎」
興奮気味にそう言う俺。
そんな俺の態度に、二人はため息を吐きながらまたか……と言いたそうな顔付きをする。
「王子に内緒なの? またどうせ見つかるよ?」
「すでにこの行動で怪しんでいる気がするけどな」
「えぇっーーーー! ダメダメッ! 絶対にバレないようにしないと‼︎」
そう、バレたらいけない。
絶対に内緒だ。
でも俺、なんで今思い出したんだろ。
最悪だ……。
「いいから早くなに思い出したか言えよ! 気になるだろうが!」
「柳ちゃん俺達も居るよー。物思いに耽ってないでー」
青くなったりニヤニヤしたりする俺の百面相の切り変わり速度は凄まじく、村上と多澤はなんなんだよとやきもきしている。
「はっ‼︎ ごめん。もうすぐ! もうすぐだよっ‼︎」
「もうすぐ?」
「すぐにあるのは中間テストだよ~?」
「違くて! 悠斗のやつ! 十一月十日‼︎」
「ああ、それか……お前、今さっき思い出したのかよ……。悠斗が哀れだ」
「その日ってなにかあったっけ?」
多澤は理解している様子だが、村上は首を傾げている。
「悠斗の誕生日だよ‼ どうしよう……」
「どうするもこうするも、祝えばいいだろ? 悩むことじゃねぇだろ」
「そうだけど‼ 俺のときあんなに一生懸命お祝いしてもらったのに、なにも考えていない。テストもあるし、生徒会もあるから準備するのあんまり時間ないだろ?」
「まぁ……時間はないかもだけど、気持ちが大事だから今からでも遅くないよ」
村上が言うように確かに気持ちが一番大切だ。けれど、折角お祝いするなら悠斗には楽しんで欲しい。悠斗の親友である多澤は、なぜこんなにも冷静で居られるのか不思議でならない。
「お前、冷静だよな」
「前日に思い出した訳じねぇし、まだ余裕だろ。あぁ、いい案思いついた。瀬菜はプレゼントは『俺』で、いいんじゃねぇーの?」
「はっ! プレゼントも考えなきゃ‼ そんなプロポーズみたいなことしてみろ! 速攻教会連れて行かれるわ!」
「教会ってっあはは……けど王子ならあり得るーー! でもなにか用意するにしても、ベッタリ王子は引き剝がさないと動きにくいよね?」
最近の悠斗は俺に常にベッタリで、内緒にするにはまずそこからどうにかしなければならない。鋭い悠斗にバレないようにするには……勉強で酷使した頭をさらに回転させる。湯気が立ちそうになるが、必死で考えを巡らせる。
ああ……一体どうしたらいいんだ……。
悠斗をキッチンに立たせると、アイスとメイプルシロップがないと、多澤と村上を連れ出し買い物という名の陽動作戦へと導いた。
「急にどうしたのさ。大人数でお使いなんて、柳ちゃんらしくないけど」
「だよな。瀬菜ならひとりできるもん! ……だよな。そんで悠斗に怒られるパターン」
コンビニに向かいながら、二人は不審げに呟く。
多澤に弄られても、俺は反論もせずに焦りをみせていた。
「お、おぉーーっ、俺ってば、重大なこと思い出しちゃった‼︎」
興奮気味にそう言う俺。
そんな俺の態度に、二人はため息を吐きながらまたか……と言いたそうな顔付きをする。
「王子に内緒なの? またどうせ見つかるよ?」
「すでにこの行動で怪しんでいる気がするけどな」
「えぇっーーーー! ダメダメッ! 絶対にバレないようにしないと‼︎」
そう、バレたらいけない。
絶対に内緒だ。
でも俺、なんで今思い出したんだろ。
最悪だ……。
「いいから早くなに思い出したか言えよ! 気になるだろうが!」
「柳ちゃん俺達も居るよー。物思いに耽ってないでー」
青くなったりニヤニヤしたりする俺の百面相の切り変わり速度は凄まじく、村上と多澤はなんなんだよとやきもきしている。
「はっ‼︎ ごめん。もうすぐ! もうすぐだよっ‼︎」
「もうすぐ?」
「すぐにあるのは中間テストだよ~?」
「違くて! 悠斗のやつ! 十一月十日‼︎」
「ああ、それか……お前、今さっき思い出したのかよ……。悠斗が哀れだ」
「その日ってなにかあったっけ?」
多澤は理解している様子だが、村上は首を傾げている。
「悠斗の誕生日だよ‼ どうしよう……」
「どうするもこうするも、祝えばいいだろ? 悩むことじゃねぇだろ」
「そうだけど‼ 俺のときあんなに一生懸命お祝いしてもらったのに、なにも考えていない。テストもあるし、生徒会もあるから準備するのあんまり時間ないだろ?」
「まぁ……時間はないかもだけど、気持ちが大事だから今からでも遅くないよ」
村上が言うように確かに気持ちが一番大切だ。けれど、折角お祝いするなら悠斗には楽しんで欲しい。悠斗の親友である多澤は、なぜこんなにも冷静で居られるのか不思議でならない。
「お前、冷静だよな」
「前日に思い出した訳じねぇし、まだ余裕だろ。あぁ、いい案思いついた。瀬菜はプレゼントは『俺』で、いいんじゃねぇーの?」
「はっ! プレゼントも考えなきゃ‼ そんなプロポーズみたいなことしてみろ! 速攻教会連れて行かれるわ!」
「教会ってっあはは……けど王子ならあり得るーー! でもなにか用意するにしても、ベッタリ王子は引き剝がさないと動きにくいよね?」
最近の悠斗は俺に常にベッタリで、内緒にするにはまずそこからどうにかしなければならない。鋭い悠斗にバレないようにするには……勉強で酷使した頭をさらに回転させる。湯気が立ちそうになるが、必死で考えを巡らせる。
ああ……一体どうしたらいいんだ……。
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