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第5幕 噂の姫乃ちゃん
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「はははっ~~♪ そんなことはないけど~♪ 君達のその協調性、凄く魅力的なんだよね~♪ まぁすぐに役職つける訳じゃないし、まずは体験ってことでどう?」
俺達の気持ちを汲んでか、ひとまず雰囲気を味わってと言う。文化祭という大イベントも終了したばかりで、しばらくはそこまで忙しくはないようだ。ただし、呼び出しには迅速にと注意をされる。
こちらとしても環樹先輩には注意をしておく必要がある。皆思っていたのか、悠斗が代表して釘を刺す。
「呼び出し……またあの変な放送は止めてくださいよ」
「だって連絡先知らないもん。個人名出したら根掘り葉掘り聞かれちゃうでしょ? 僕ってば優しいよね? あとで姫乃ちゃんに渡した連絡先にメッセージ入れておいて」
「えっ? 俺、先輩の番号知らないけど」
「ああ、エプロンのポッケに入っていたやつかな? 破いて捨てたよ?」
「流石王子……柳ちゃんの私物捨てるとかエゲツない」
「瀬菜のものは悠斗のものだからな。仕方ないんじゃね?」
「それ、なんのコントなの……。みんな今すぐスマホ出して! ふるふるするよ!」
ふるふるとスマホを一斉に振る。側から見れば異様な光景だ。無事登録を済ませるとスマホに早速メッセージが入る。よろしくねというスタンプと、今日も可愛いねという謎のメッセージ。
目が合うと変な笑顔をされ、俺はずっと感じていたことを吐き出した。
「あのさ、環樹先輩。俺、前から思っていたけど、その笑顔変だからやめたほうがいいと思うぞ?」
真顔でそう言う俺の言葉に、みんながピシャリと固まりその場が静まりかえる。環樹先輩の横にいる咲先輩は堪え切れなかったのか、口を手で押さえ肩を震わせていた。悠斗は俺の頭をポンポンとしてくる。村上はお腹を抱えながら笑い転げ、多澤は環樹先輩を見ながら勝ち誇ったようにニヤリとしていた。
ん? 俺なんか間違ったこと言ったか?
みんな違和感ないのかな……?
「ねぇ、咲ちゃん。僕ってそんなに笑顔変?」
「柳君には……ププッ、おかしく見えるんじゃないんですかね。プププッ……」
「だってさ、笑っているのに笑っていないっておかしいだろ? 悠斗も嘘くさいけど、先輩のはもっと変な感じがする」
「えっ⁉︎ 俺もなの? 瀬菜から見たら変なの⁉︎」
「お前のは他人に対していい人ぶった感じだよな。俺達に対しては自然だから言わなかったけど」
「それは……瀬菜とほかの人は別だもん。俺は聖人君子じゃないしあたり前!」
ムッとしながら悠斗は俺に反論をする。
しばらく放心していた環樹先輩は、生徒会室に響き渡る大声で笑い出した。
「あはははっっ‼︎ そっかぁ~♪ こんな直球初めてだよ。面白いなぁ~♪ 爺さんに決められたことだったけど、生徒会長のポストも悪くなかったかなぁ~♪」
先ほどまでとは違う笑顔を見せる環樹先輩の姿が、とても自然で親しみを持てた。
この人はきっと常に鎧を纏っているんだろうな……。
理事長の孫……それだけで注目を浴びて、重いものを背負っているんだ。
そんな風に思うとなんだか可哀想で、優しくしてあげたくなってしまう。先輩にふわり微笑むと、横から悠斗の手が俺の両頬をビヨーンと伸ばしてきた。
「なんらよっ! いひゃいらろっ!」
「ん? そういう顔は俺だけにして。妬けちゃうでしょ?」
「へへっ、バーカ……お前にはもっと特別な顔見せているだろ?」
「クスッ……、そうだね……」
文化祭のいざこざは嵐のように過ぎ、新しい出会いと始まりを俺達に与えたのだった。
俺達の気持ちを汲んでか、ひとまず雰囲気を味わってと言う。文化祭という大イベントも終了したばかりで、しばらくはそこまで忙しくはないようだ。ただし、呼び出しには迅速にと注意をされる。
こちらとしても環樹先輩には注意をしておく必要がある。皆思っていたのか、悠斗が代表して釘を刺す。
「呼び出し……またあの変な放送は止めてくださいよ」
「だって連絡先知らないもん。個人名出したら根掘り葉掘り聞かれちゃうでしょ? 僕ってば優しいよね? あとで姫乃ちゃんに渡した連絡先にメッセージ入れておいて」
「えっ? 俺、先輩の番号知らないけど」
「ああ、エプロンのポッケに入っていたやつかな? 破いて捨てたよ?」
「流石王子……柳ちゃんの私物捨てるとかエゲツない」
「瀬菜のものは悠斗のものだからな。仕方ないんじゃね?」
「それ、なんのコントなの……。みんな今すぐスマホ出して! ふるふるするよ!」
ふるふるとスマホを一斉に振る。側から見れば異様な光景だ。無事登録を済ませるとスマホに早速メッセージが入る。よろしくねというスタンプと、今日も可愛いねという謎のメッセージ。
目が合うと変な笑顔をされ、俺はずっと感じていたことを吐き出した。
「あのさ、環樹先輩。俺、前から思っていたけど、その笑顔変だからやめたほうがいいと思うぞ?」
真顔でそう言う俺の言葉に、みんながピシャリと固まりその場が静まりかえる。環樹先輩の横にいる咲先輩は堪え切れなかったのか、口を手で押さえ肩を震わせていた。悠斗は俺の頭をポンポンとしてくる。村上はお腹を抱えながら笑い転げ、多澤は環樹先輩を見ながら勝ち誇ったようにニヤリとしていた。
ん? 俺なんか間違ったこと言ったか?
みんな違和感ないのかな……?
「ねぇ、咲ちゃん。僕ってそんなに笑顔変?」
「柳君には……ププッ、おかしく見えるんじゃないんですかね。プププッ……」
「だってさ、笑っているのに笑っていないっておかしいだろ? 悠斗も嘘くさいけど、先輩のはもっと変な感じがする」
「えっ⁉︎ 俺もなの? 瀬菜から見たら変なの⁉︎」
「お前のは他人に対していい人ぶった感じだよな。俺達に対しては自然だから言わなかったけど」
「それは……瀬菜とほかの人は別だもん。俺は聖人君子じゃないしあたり前!」
ムッとしながら悠斗は俺に反論をする。
しばらく放心していた環樹先輩は、生徒会室に響き渡る大声で笑い出した。
「あはははっっ‼︎ そっかぁ~♪ こんな直球初めてだよ。面白いなぁ~♪ 爺さんに決められたことだったけど、生徒会長のポストも悪くなかったかなぁ~♪」
先ほどまでとは違う笑顔を見せる環樹先輩の姿が、とても自然で親しみを持てた。
この人はきっと常に鎧を纏っているんだろうな……。
理事長の孫……それだけで注目を浴びて、重いものを背負っているんだ。
そんな風に思うとなんだか可哀想で、優しくしてあげたくなってしまう。先輩にふわり微笑むと、横から悠斗の手が俺の両頬をビヨーンと伸ばしてきた。
「なんらよっ! いひゃいらろっ!」
「ん? そういう顔は俺だけにして。妬けちゃうでしょ?」
「へへっ、バーカ……お前にはもっと特別な顔見せているだろ?」
「クスッ……、そうだね……」
文化祭のいざこざは嵐のように過ぎ、新しい出会いと始まりを俺達に与えたのだった。
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