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第5幕 噂の姫乃ちゃん
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「俺も悠斗と同じでそれ思った! 夏休みはガラの悪い奴らと居たから不良だと思ったし、文化祭のときは変に絡んでくるしさ。俺のクラスに来たときは、意味深に俺の画像見せてくるし」
「夏休みに声を掛けたのは補導の一環だよ。夏休みパトロール中で、お家に早く帰ろうね~って役目をしてただけ。たまたま姫乃ちゃんを見かけて、ちょっと話してみようかな~って僕の好奇心♪ 夏休み前頃かな? 画像が出回りだしたの。画像で見たよりも可愛いから、ちょっと緊張しちゃった~♪」
へらへらと頬を緩ませそう言う先輩に、ウッと息を詰め愚痴を呟く。
「俺には変な不良にしか見えなかったぞ! またカツアゲされると思ったし!」
「瀬菜、だからあれはカツアゲじゃないってば。本当にわからず屋さんだね。でも、そのときに瀬菜に素性話すか、僕達のことも探ってたようだし、事情を話してくれれば良かったんじゃないですか?」
「え~~、それじゃ探偵ごっこが楽しめないじゃないか~。それに姫乃ちゃんてば単純そうだし、顔にすぐに出ちゃいそうだし? まぁ、今回の件とは別にほかにも調査したいことがあったしね♪」
おちゃらけた様子で意味深なことを言いニーっと笑うと、ひと息ついてから真面目な顔付きに変わる。
「実は彼ら、一年のときにもね……今回だけじゃないんだ。姫乃ちゃんの前にも、同じような事件が起こったんだ。そのときは発覚してから証拠もなにもなくてね。被害にあった可愛らしい男の子は、強姦されたショックと恐怖で、被害者なのに退学してしまった。前生徒会長も二度とこんな悲しい事件起こさないために、目を光らせて探っていたんだけど、中々尻尾掴めなくてね」
衝撃の事実を知る。あんな恐ろしい事件が俺の前にも、しかも俺以上の事態が起きていたなど信じられないことだ。けれど俺は未遂でもそれを経験した。どんな子だったのかは分からないが、俺は自分のことのように悲しくてならなかった。
そんな俺の気持ちとは全く異なる尖った声が放たれた。どうやら多澤が珍しく本気で怒っているようだ。
「それであんたは、瀬菜を囮に使ったってのか!」
「柳ちゃんで炙り出しって……やることちょっと最低じゃないです?」
村上も多澤と同じように、低い声で環樹先輩に睨みを効かせている。
「瀬菜を使って、もし失敗したら……そうは考えなかったんですか? 瀬菜になにかあれば、僕はあなたになにをしたか分かりませんよ?」
悠斗も穏やかな声で言いながら、身体中から怒りのオーラを発している。
気まずい空気を裂くように、先輩は笑い出す。
「ククッ……失敗? それはないよ。だって僕ってば優秀だからね! それに君達は彼を必ず守るだろ? それとも……自分達だけじゃ、守れないかもって感じたのかな?」
「夏休みに声を掛けたのは補導の一環だよ。夏休みパトロール中で、お家に早く帰ろうね~って役目をしてただけ。たまたま姫乃ちゃんを見かけて、ちょっと話してみようかな~って僕の好奇心♪ 夏休み前頃かな? 画像が出回りだしたの。画像で見たよりも可愛いから、ちょっと緊張しちゃった~♪」
へらへらと頬を緩ませそう言う先輩に、ウッと息を詰め愚痴を呟く。
「俺には変な不良にしか見えなかったぞ! またカツアゲされると思ったし!」
「瀬菜、だからあれはカツアゲじゃないってば。本当にわからず屋さんだね。でも、そのときに瀬菜に素性話すか、僕達のことも探ってたようだし、事情を話してくれれば良かったんじゃないですか?」
「え~~、それじゃ探偵ごっこが楽しめないじゃないか~。それに姫乃ちゃんてば単純そうだし、顔にすぐに出ちゃいそうだし? まぁ、今回の件とは別にほかにも調査したいことがあったしね♪」
おちゃらけた様子で意味深なことを言いニーっと笑うと、ひと息ついてから真面目な顔付きに変わる。
「実は彼ら、一年のときにもね……今回だけじゃないんだ。姫乃ちゃんの前にも、同じような事件が起こったんだ。そのときは発覚してから証拠もなにもなくてね。被害にあった可愛らしい男の子は、強姦されたショックと恐怖で、被害者なのに退学してしまった。前生徒会長も二度とこんな悲しい事件起こさないために、目を光らせて探っていたんだけど、中々尻尾掴めなくてね」
衝撃の事実を知る。あんな恐ろしい事件が俺の前にも、しかも俺以上の事態が起きていたなど信じられないことだ。けれど俺は未遂でもそれを経験した。どんな子だったのかは分からないが、俺は自分のことのように悲しくてならなかった。
そんな俺の気持ちとは全く異なる尖った声が放たれた。どうやら多澤が珍しく本気で怒っているようだ。
「それであんたは、瀬菜を囮に使ったってのか!」
「柳ちゃんで炙り出しって……やることちょっと最低じゃないです?」
村上も多澤と同じように、低い声で環樹先輩に睨みを効かせている。
「瀬菜を使って、もし失敗したら……そうは考えなかったんですか? 瀬菜になにかあれば、僕はあなたになにをしたか分かりませんよ?」
悠斗も穏やかな声で言いながら、身体中から怒りのオーラを発している。
気まずい空気を裂くように、先輩は笑い出す。
「ククッ……失敗? それはないよ。だって僕ってば優秀だからね! それに君達は彼を必ず守るだろ? それとも……自分達だけじゃ、守れないかもって感じたのかな?」
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