王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第5幕 噂の姫乃ちゃん

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 頭から被せられていたマントをずらし、俺の様子を悠斗が窺うと、祐一さんの声が車内に木霊した。

「ちょちょ、ちょっと! 悠斗君! 女の子攫っちゃったの⁉︎ 誘拐じゃないよね⁉︎」
「うるさいぞ祐一! 悠斗君がそんなことする訳ないだろ。悠斗君、説明」
「佐伯さんもすみません。女の子に見えるし凄く可愛いけど……瀬菜ですよ」

 車内が一瞬にしてシーンとなるが、また興奮したように祐一さんが喋り出す。

「瀬菜君なの⁉︎ 可愛い‼︎ 写真撮りたい‼︎ でも……なんで? 文化祭まだ終わっていないし」
「実は………」


 悠斗が経緯を説明している間、俺は車のドアと背もたれに寄りかかりながら丸まり、荒い詰めた悩ましい声を上げていた。それに気付いた悠斗は俺の名前を呼ぶが、先ほどの恐怖が蘇り震えていた。

「大丈夫だよ瀬菜。ここにいるのは瀬菜の味方だし、怖いことしないよ?」

 悠斗にそっと触られビクッと身体を跳ねさせる。それ以上悠斗はなにもせずに、ジッと俺を優しい微笑みで見つめてくれた。視点が安定していく。硬直していた身体の力を緩め呟く。

「悠斗ッ、ん……ッ、抱っこ……して……っ」

 悠斗は俺をそっと膝に乗せると優しく抱きしめてくれた。フワリと爽やかな悠斗のいつもの香りに包まれて安心する。悠斗の首に鼻を寄せて匂いを吸い込むと、グッと下肢に熱が増し下半身を悠斗に擦り付けてしまう。

「ふぁ……っ、ゆうッ……もぅっ、我慢……んッ、むぃッ」
「ダメだよ? まだ我慢。部屋に着いたら瀬菜の言うこと聞くから。あと少し我慢して?」
「ふぇっ……なんれッ、おえッおひり、ちんこッ、かゆぃ……ヤダ……はぅッ、ゆうッ……たしゅけれよぉッ」
「瀬菜君、あと五分ぐらいだから辛抱して?」

 佐伯さんの声に前を向くと、祐一さんがゴクリと喉を鳴らしていた。

「ふぅ……ゆーと、いじわるぅ……ゆうぃッさん……してッ?」

 頰を赤らめながら色気を押し出し気だるげに、祐一さんにせがむ。祐一さんは真っ赤になりながら、下を向いてモジモジしだす。

「こら瀬菜。いくら薬のせいだからってそんなの許さないよ!」

 悠斗はそう言うと俺の顎を取り、思い切り唇に噛み付き口腔を蹂躙した。
 くちゅ、くちゃり……っと音を鳴らしながら舌を絡められると、一番敏感な部分ではないにしろ、舌の愛撫にビリビリと身体が跳ね快感に夢中になる。

「あぅっ……ふぁンッ……はぅッ、んんッ」
「ん、ストップ……んッ、瀬菜……」

 舌を引っ込めようとする悠斗の舌を追い掛け吸い付き、逃げないようにもっととせがむ。けれど悠斗はそれ以上は与えてくれず、俺を引き剥がしてしまう。不満な俺は下肢を悠斗に擦り付けながら、悠斗の首筋に齧り付く。

「瀬菜……んッ、積極的なのは嬉しいけど、今は本当にいい子にして。ほら、もうホテルも見えてきたよ」
「あっ、きもちぃ。おひりッ、ズポズポひてよぉ~。かゆいょぉ~っ、ゆーと」

 悠斗の制止も聞かず祐一さん達が同じ空間に居ることよりも、ただ解放したいと欲望だけしか考えられない。不満な俺は悠斗の首筋をちゅうちゅうと吸い上げ、舌で舐めてを繰り返してしまう。

「祐一、お前モジモジし過ぎだぞ。瀬菜君は薬でああなっているんだからな」
「分かっているよ! 佐伯だってチラチラバックミラー見てるじゃないか!」
「ふふっ、二人共本当に申し訳ない。でもこれで盛り上がれるんじゃないですか?」
「悠斗君! こんなときに冗談言わない! それに僕達、セックスレスじゃないよ!」
「おいおい。真っ向から受け止めるなよ祐一」



 車は緩やかにホテルの裏口に停車すると、従業員用のエレベーターに乗り祐一さんが部屋まで案内してくれた。

「本当に病院行かなくて大丈夫? どんな薬か分からないけど、水分多めに取らせて具合悪くなったらフロントか僕に連絡してね。一応月曜日までチェックインにしておくね」
「病院はその……瀬菜が正気に戻ったとき、きっと気にするので。我儘ばかりで毎回すみません」

 俺をベッドまで運びそっと降ろすと、祐一さんと悠斗はベッドルームをあとにした。
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