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第5幕 噂の姫乃ちゃん
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悠斗は俺に駆け寄ると、躊躇いながらそっと抱きしめてくれる。
「──瀬菜、遅くなってごめんね……」
「……悠斗……イヤッ……んッ、さわら──っ、ないでぇッ、んッふぅ……っ」
抱きしめられてホッとするものの、敏感になり過ぎている身体には刺激が強い。荒い呼吸で悠斗を押しやると、拒絶の言葉を口にしてしまう。
「ヤダッ、はなれてッ‼ やめてッ‼」
「──ッ、瀬菜……もう、大丈夫だから……怖がらないで。今瀬菜に触れてるのは俺だけだよ」
俺の拒絶がレイプされそうになった恐怖から来るものだと勘違いした悠斗は、哀しそうな顔をしながら、両手を拘束している布を解いていく。暴れたせいで布で擦れ赤く色付く肌に、悠斗はそっとキスをする。眉間に皺を寄せ鼻を引くつかせる悠斗は、俺の拳をゆっくりと開いていった。
「瀬菜、どうしてこんな……」
その手のひらには悠斗から贈られたブレスレット。
ブレスに血を滲ませ、肌には傷を残していた。
「……へいきッ、だよッ。汚し……っ、ちゃった……ッ。ごめんな……っ」
額に汗を浮かべながらヘラリと無理矢理笑顔を作る。悠斗は息を詰め瞳を潤ませると、慈しむキスをそこに落とした。けれど今の俺には些細なキスも、痛みでさえ劇薬のように感じてしまう。ビクビクと熱を伴う痺れと痒みが全身に駆け巡り、喘ぎ声を漏らしながら震えてしまう。
ギリリっと唇を噛み締める悠斗は俺の様子を確認すると、スマホを操作し電話をかけ始めた。
「悠斗です。祐一さん今どこです?」
スピーカーから祐一さんの声がする。
『悠斗君! 今君のクラスに来たけど居ないから丁度連絡しようと思ってたとこ!』
「すみません。来てもらって早々申し訳ないのですが……車、出してもらえますか?」
『いいけど……なにかあったの? どこに付ければいい?』
「体育館側の裏門の辺りでお願いします。できれば至急で……」
悠斗は通話を切りため息を漏らすと、着ていたマントを外してそっと俺に掛けてくれる。荒い息を吐く俺を刺激しないような、優しい声で呼び掛けてくれる。心地いい声にギュッと悠斗の腕を掴むと、そっと抱きしめられる。
「もう少し我慢できる?」
ゆるくコクリと頷くと、マントで俺を覆いお姫様抱っこで誰にも見えないようにしてくれた。そのまま倉庫をあとにすると、体育館の裏へと向かっていった。
「悠斗君ー! こっちこっち!」
「祐一さんすみません。ちょっとトラブルで……」
「ううん。いいよ! それにしても悠斗君、凄い格好だね! それに……これって……お人形?」
「話は乗ってからでいいですか? できればホテルの部屋、一室お借りしても?」
祐一さんが車の後部座席のドアを開けると、悠斗がぐたりとしている俺を先に入れてくれる。みんな乗り込んだところで祐一さんは「フィオーレに戻って」と、佐伯さんに伝え車はゆっくりと発進した。
「──瀬菜、遅くなってごめんね……」
「……悠斗……イヤッ……んッ、さわら──っ、ないでぇッ、んッふぅ……っ」
抱きしめられてホッとするものの、敏感になり過ぎている身体には刺激が強い。荒い呼吸で悠斗を押しやると、拒絶の言葉を口にしてしまう。
「ヤダッ、はなれてッ‼ やめてッ‼」
「──ッ、瀬菜……もう、大丈夫だから……怖がらないで。今瀬菜に触れてるのは俺だけだよ」
俺の拒絶がレイプされそうになった恐怖から来るものだと勘違いした悠斗は、哀しそうな顔をしながら、両手を拘束している布を解いていく。暴れたせいで布で擦れ赤く色付く肌に、悠斗はそっとキスをする。眉間に皺を寄せ鼻を引くつかせる悠斗は、俺の拳をゆっくりと開いていった。
「瀬菜、どうしてこんな……」
その手のひらには悠斗から贈られたブレスレット。
ブレスに血を滲ませ、肌には傷を残していた。
「……へいきッ、だよッ。汚し……っ、ちゃった……ッ。ごめんな……っ」
額に汗を浮かべながらヘラリと無理矢理笑顔を作る。悠斗は息を詰め瞳を潤ませると、慈しむキスをそこに落とした。けれど今の俺には些細なキスも、痛みでさえ劇薬のように感じてしまう。ビクビクと熱を伴う痺れと痒みが全身に駆け巡り、喘ぎ声を漏らしながら震えてしまう。
ギリリっと唇を噛み締める悠斗は俺の様子を確認すると、スマホを操作し電話をかけ始めた。
「悠斗です。祐一さん今どこです?」
スピーカーから祐一さんの声がする。
『悠斗君! 今君のクラスに来たけど居ないから丁度連絡しようと思ってたとこ!』
「すみません。来てもらって早々申し訳ないのですが……車、出してもらえますか?」
『いいけど……なにかあったの? どこに付ければいい?』
「体育館側の裏門の辺りでお願いします。できれば至急で……」
悠斗は通話を切りため息を漏らすと、着ていたマントを外してそっと俺に掛けてくれる。荒い息を吐く俺を刺激しないような、優しい声で呼び掛けてくれる。心地いい声にギュッと悠斗の腕を掴むと、そっと抱きしめられる。
「もう少し我慢できる?」
ゆるくコクリと頷くと、マントで俺を覆いお姫様抱っこで誰にも見えないようにしてくれた。そのまま倉庫をあとにすると、体育館の裏へと向かっていった。
「悠斗君ー! こっちこっち!」
「祐一さんすみません。ちょっとトラブルで……」
「ううん。いいよ! それにしても悠斗君、凄い格好だね! それに……これって……お人形?」
「話は乗ってからでいいですか? できればホテルの部屋、一室お借りしても?」
祐一さんが車の後部座席のドアを開けると、悠斗がぐたりとしている俺を先に入れてくれる。みんな乗り込んだところで祐一さんは「フィオーレに戻って」と、佐伯さんに伝え車はゆっくりと発進した。
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