169 / 716
第5幕 噂の姫乃ちゃん
32
しおりを挟む
「こんにちわ~♪ 環樹さんが来ましたよ~」
「…………」
「……アレレ? お決まり文句言ってくれないの?」
俺の目の前で手をパタパタと振るタマキ先輩。ハッとする俺に、先輩はにっこり笑い言葉を待っている。
「……お帰りなさいませ……ご主人様」
「うーん。なぁに、その気のない挨拶は。まぁ、いいけど~。来ちゃった~♡」
「……どうぞこちらへ……」
「姫乃ちゃんに案内してもらえるなんてラッキーだな♪」
タマキ先輩を席に案内し、注文を取ろうとすると「ひとりで来たし話相手してよ」と、ルールを無視し座るようにせがまれる。
「そういうサービスしていないんで……。外の看板見ていないんですか? 飲み物とお菓子、選んでください」
「看板? さぁ、見ていないね。注文したらお願い聞いてくれる? 別に構わないけどねー。君が何者かってこと、きっとみんな知りたがっていると思うし~♪」
脅迫めいた言葉を投げられ狼狽える。ホットコーヒーとクッキーを注文され、キッチンブースに行きオーダーをクラスメイトに伝える。どうしたものかと思案していると、村上が声を掛けてきた。
「先輩の相手大丈夫? 俺が行こうか?」
「いや、そういう訳にもいかなそう。まぁ、なんとかするよ」
これだけ人が居るのだ。
なにかあれば俺よりもタマキ先輩のほうが立場が悪くなる。
「ホットコーヒーです!」
「わぉっ! そんなにツンツンしないでよ~♪ 本当に怪しい者じゃないのに。じゃ、ここに座って~♪」
「立ったままじゃダメですか? ほかのお客さんに贔屓って言われるんで……」
「それじゃ内緒話できないじゃん?」
「内緒話って……ここでする内容なんですか?」
「だって君の周りにはいつも護衛が居るからね。今が話をする好機だと思うわけ」
ため息を一つ吐くと敵わないと諦め隣の椅子に腰掛ける。うんうんと頷き満足げにニコニコしている先輩の言葉を待つが、一向に話をせずに俺を眺めているだけだ。
本当になんなんだよ……。
ずっとこのままなんてことないだろうな……。
そんなことを思っていると先輩はスマホを取り出し、すっと俺の目の前に置いてきた。
「見てよこれ」
「──ッ、これっ! どうして⁉︎」
「うん♪ かぁ~いいよね~♪」
そこに写し出されていたのは、以前悠斗から見せてられた俺が窓際で頬杖をつきながら外を眺めている画像だった。
なぜ先輩が……と思ってしまう。先輩に視線を移すと口角を上げニヤリとされた。
まさか──これを撮ったのは……先輩?
悠斗は文面的に男だと言っていたはず……。
「色っぽくて凄く唆るよね~♪」
「……これ、もしかして……でもなんで!」
「なんでって? それはね~……」
コトン……っと、テーブルにお菓子のお皿が置かれる。
「タマキ先輩~♪ そろそろ姫乃ちゃん解放してもらっていいかしら?」
村上がそう言い周りを見ろと無言の抗議の声をあげる。
「あ~あぁ~、そういえばガードのひとりがここには居たよね。全く……上手く進まない。でもまぁ、いい傾向だ♪ ククッ、気になるでしょ~姫乃ちゃん♪ これ、僕の連絡先」
手のひらにメモ用紙を握らされる。
「はぁ……いや……困ります」
「君、僕に聞きたいこと……あるんじゃない?」
「…………」
「……アレレ? お決まり文句言ってくれないの?」
俺の目の前で手をパタパタと振るタマキ先輩。ハッとする俺に、先輩はにっこり笑い言葉を待っている。
「……お帰りなさいませ……ご主人様」
「うーん。なぁに、その気のない挨拶は。まぁ、いいけど~。来ちゃった~♡」
「……どうぞこちらへ……」
「姫乃ちゃんに案内してもらえるなんてラッキーだな♪」
タマキ先輩を席に案内し、注文を取ろうとすると「ひとりで来たし話相手してよ」と、ルールを無視し座るようにせがまれる。
「そういうサービスしていないんで……。外の看板見ていないんですか? 飲み物とお菓子、選んでください」
「看板? さぁ、見ていないね。注文したらお願い聞いてくれる? 別に構わないけどねー。君が何者かってこと、きっとみんな知りたがっていると思うし~♪」
脅迫めいた言葉を投げられ狼狽える。ホットコーヒーとクッキーを注文され、キッチンブースに行きオーダーをクラスメイトに伝える。どうしたものかと思案していると、村上が声を掛けてきた。
「先輩の相手大丈夫? 俺が行こうか?」
「いや、そういう訳にもいかなそう。まぁ、なんとかするよ」
これだけ人が居るのだ。
なにかあれば俺よりもタマキ先輩のほうが立場が悪くなる。
「ホットコーヒーです!」
「わぉっ! そんなにツンツンしないでよ~♪ 本当に怪しい者じゃないのに。じゃ、ここに座って~♪」
「立ったままじゃダメですか? ほかのお客さんに贔屓って言われるんで……」
「それじゃ内緒話できないじゃん?」
「内緒話って……ここでする内容なんですか?」
「だって君の周りにはいつも護衛が居るからね。今が話をする好機だと思うわけ」
ため息を一つ吐くと敵わないと諦め隣の椅子に腰掛ける。うんうんと頷き満足げにニコニコしている先輩の言葉を待つが、一向に話をせずに俺を眺めているだけだ。
本当になんなんだよ……。
ずっとこのままなんてことないだろうな……。
そんなことを思っていると先輩はスマホを取り出し、すっと俺の目の前に置いてきた。
「見てよこれ」
「──ッ、これっ! どうして⁉︎」
「うん♪ かぁ~いいよね~♪」
そこに写し出されていたのは、以前悠斗から見せてられた俺が窓際で頬杖をつきながら外を眺めている画像だった。
なぜ先輩が……と思ってしまう。先輩に視線を移すと口角を上げニヤリとされた。
まさか──これを撮ったのは……先輩?
悠斗は文面的に男だと言っていたはず……。
「色っぽくて凄く唆るよね~♪」
「……これ、もしかして……でもなんで!」
「なんでって? それはね~……」
コトン……っと、テーブルにお菓子のお皿が置かれる。
「タマキ先輩~♪ そろそろ姫乃ちゃん解放してもらっていいかしら?」
村上がそう言い周りを見ろと無言の抗議の声をあげる。
「あ~あぁ~、そういえばガードのひとりがここには居たよね。全く……上手く進まない。でもまぁ、いい傾向だ♪ ククッ、気になるでしょ~姫乃ちゃん♪ これ、僕の連絡先」
手のひらにメモ用紙を握らされる。
「はぁ……いや……困ります」
「君、僕に聞きたいこと……あるんじゃない?」
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる