王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第5幕 噂の姫乃ちゃん

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「こんにちわ~♪ 環樹さんが来ましたよ~」
「…………」
「……アレレ? お決まり文句言ってくれないの?」

 俺の目の前で手をパタパタと振るタマキ先輩。ハッとする俺に、先輩はにっこり笑い言葉を待っている。

「……お帰りなさいませ……ご主人様」
「うーん。なぁに、その気のない挨拶は。まぁ、いいけど~。来ちゃった~♡」
「……どうぞこちらへ……」
「姫乃ちゃんに案内してもらえるなんてラッキーだな♪」

 タマキ先輩を席に案内し、注文を取ろうとすると「ひとりで来たし話相手してよ」と、ルールを無視し座るようにせがまれる。

「そういうサービスしていないんで……。外の看板見ていないんですか? 飲み物とお菓子、選んでください」
「看板? さぁ、見ていないね。注文したらお願い聞いてくれる? 別に構わないけどねー。君が何者かってこと、きっとみんな知りたがっていると思うし~♪」

 脅迫めいた言葉を投げられ狼狽える。ホットコーヒーとクッキーを注文され、キッチンブースに行きオーダーをクラスメイトに伝える。どうしたものかと思案していると、村上が声を掛けてきた。

「先輩の相手大丈夫? 俺が行こうか?」
「いや、そういう訳にもいかなそう。まぁ、なんとかするよ」

 これだけ人が居るのだ。
 なにかあれば俺よりもタマキ先輩のほうが立場が悪くなる。

「ホットコーヒーです!」
「わぉっ! そんなにツンツンしないでよ~♪ 本当に怪しい者じゃないのに。じゃ、ここに座って~♪」
「立ったままじゃダメですか? ほかのお客さんに贔屓って言われるんで……」
「それじゃ内緒話できないじゃん?」
「内緒話って……ここでする内容なんですか?」
「だって君の周りにはいつも護衛が居るからね。今が話をする好機だと思うわけ」

 ため息を一つ吐くと敵わないと諦め隣の椅子に腰掛ける。うんうんと頷き満足げにニコニコしている先輩の言葉を待つが、一向に話をせずに俺を眺めているだけだ。

 本当になんなんだよ……。
 ずっとこのままなんてことないだろうな……。

 そんなことを思っていると先輩はスマホを取り出し、すっと俺の目の前に置いてきた。

「見てよこれ」
「──ッ、これっ! どうして⁉︎」
「うん♪ かぁ~いいよね~♪」

 そこに写し出されていたのは、以前悠斗から見せてられた俺が窓際で頬杖をつきながら外を眺めている画像だった。
 なぜ先輩が……と思ってしまう。先輩に視線を移すと口角を上げニヤリとされた。

 まさか──これを撮ったのは……先輩?
 悠斗は文面的に男だと言っていたはず……。

「色っぽくて凄く唆るよね~♪」
「……これ、もしかして……でもなんで!」
「なんでって? それはね~……」

 コトン……っと、テーブルにお菓子のお皿が置かれる。

「タマキ先輩~♪ そろそろ姫乃ちゃん解放してもらっていいかしら?」

 村上がそう言い周りを見ろと無言の抗議の声をあげる。

「あ~あぁ~、そういえばガードのひとりがここには居たよね。全く……上手く進まない。でもまぁ、いい傾向だ♪ ククッ、気になるでしょ~姫乃ちゃん♪ これ、僕の連絡先」

 手のひらにメモ用紙を握らされる。

「はぁ……いや……困ります」
「君、僕に聞きたいこと……あるんじゃない?」
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