王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第5幕 噂の姫乃ちゃん

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「多澤は口悪いからね~。俺は今日は多澤に罵られまくられた。キモイオカマって!」
「それは雅臣が正しいよ村上君。それはそうと瀬菜、明日は気を付けてね? 今日だけでも姫乃ちゃん人気凄かったし、明日は一般のお客さんも来るから」
「俺そんなにビックリするほど人気じゃなかっただろ? 見慣れない格好だったし、明日は免疫付いてるんじゃないか? それに悠斗と居たから、余計に変な噂が広まったじゃんか」

 プンプンと頬を膨らませる俺を、三人は頭を抱えてダメだこりゃと口を揃えて嘆いていた。

「そういえば、どうして瀬菜は女装すること教えてくれなかったの?」
「それは……箝口令出てたし、今日午後に言うつもりだったし。なっ村上!」
「うんうん! そういうこと! 別に王子が危険人物なんて思ってないよ!」
「ははっ! まぁ大衆の面前であのデレ具合だもんな。言いたくはないわな」

 俺と村上は内心焦るが、多澤がケラケラと笑ってくれたおかげで怪しまれずに済む。

「ねぇ……俺のことそんなに常識ない危険人物に見えてるの? 俺、凄く我慢していたでしょ?」

 ジトッと俺達を見る悠斗に、三人で頭を抱えてダメだこりゃと口を揃えて嘆いた。



 明日もあるからと早々に店前で解散すると、家に戻る途中「そうだ」と、思い出したように悠斗が言った。

「明日、祐一さんと佐伯さんが来るって言っていたよ?」
「えーー! 俺、あの格好見られたくない!」
「ふふっ、なら瀬菜ってバレないようにしたら?」
「んー。頑張ってみる」
「それと瀬菜、スマホは必ず身につけていてね? 明日はスケジュール合わなそうだし、瀬菜とずっとは居れないと思うから」

 確かに今日ほど悠斗と一緒にいる時間はなさそうだ。けれど悠斗の念を押すようなもの言いに首を傾げてしまう。

「なんで? スマホ?」
「なにかあったら電話できるでしょ? 瀬菜のセクシーショットも大歓迎だよ?」
「ああ、まぁ……。夏子のセクシーショットいっぱい送るな!」
「それはなんの嫌がらせ? 送ってもいいけど即削除するよ?」
「うわー、夏子可哀想……。夏子だってよく見れば可愛いぞ?」
「よく見ても化け物でしょ。瀬菜の目を疑うな。姫乃ちゃんが可愛いのが引き立つもん。はぁ……明日もきっと可愛いだろうな」

 悠斗の頭の中にはどうやら姫乃ちゃんが居座っているらしい。

「むぅ~~! やっぱりお前は女がいいんだな! こうなったらトコトン演じてやる!」
「違うってば! 気合い入れなくてもいいよ。変な虫増えたら困るでしょ?」
「お前だって王子様で変な虫増えるだろ! お互い様だ!」
「瀬菜ってば意地悪なんだから……。そんなこと言うと今から攫っちゃうよ?」
「俺、超優しいしー♪ 明日も早いし今日はとっとと帰って寝ような!」

 ニカっと笑いごまかしてみる。

「やっぱ意地悪。はぁ……悶々としながら夜を過ごすのか……」

 ボソリとなにか不吉なことを言っている悠斗だが、突込まないほうが良さそうだ。俺は悠斗の言い分をスルーし「また明日、おやすみ!」と伝えると玄関に駆け込んだ。
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