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第5幕 噂の姫乃ちゃん
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その声にパッと視線を向けると、いつの間にか増えていた沢山のギャラリーに驚きに目を丸める。羞恥心に慌てて悠斗から降り、立ち上がると小声で悠斗に伝える。
「もう十分だろ! 着替えて色々観に行くぞ!」
「姫乃ちゃんはそのままだよ? そのほうが都合がいいし」
ニヤリと笑う悠斗が怖い。
これは逆らわないほうが良さそうだ。
「王子と姫乃ちゃん、いけない関係っぽくて絵になるわー。カメラマンが鼻息荒くしながら、カシャカシャ撮っていたよー」
「ギャラリー増えたし、そろそろ着替えてほか行こうぜ」
騒つくスタジオからそのまま裏に回ると、悠斗と多澤はテキパキと衣装を脱いで制服に着替えていく。
「村上、俺も着替えたい……」
「無理でしょ! 王子にも言われたでしょ? まぁクラスの宣伝にもなるしいいじゃない。私も付き合うわよ」
「なんか俺、色んなものを失っている気がする……」
「大丈夫よ! 私はもっと失っているわ!」
昼食がてら外の屋台に向かい、たこ焼きとお好み焼き、焼きそばを購入してから中庭のベンチで食べようということになった。
その間も悠斗はずっと俺の手を握っている。そのおかげで通りすがる度に、女子から「あの子誰なの!」「イヤーー立花くんとうとう彼女できたの!」などなど嫉妬を含んだ落胆の声が溢れていた。
「悠斗! 俺ってバレたときどうするんだよ!」
「別にバレても瀬菜は俺の恋人だから、なんとも思わないけど? はい、あーん♡」
「なぁ……昼飯なんで粉もんばっかり買ったんだよ。俺、胃もたれしそう」
「学生は食欲旺盛だからね~。腹持ちいいし、ソースの匂いでつい~」
いつも通りの昼食の風景だが、俺も村上もメイドの格好だ。
そんな訳で悠斗は大胆に密着してくる。
「しかし、姫乃ちゃん人気も凄いな。ここに来るまでに男共のデレデレ具合といったら」
「うちの看板娘だもの♪ 多澤もキュンキュンしたんじゃないの?」
「アホか。馬子にも衣装ってな。しかし……」
冷めた目で多澤が俺達を見てくる。
「瀬菜、ソース付いてる……ちゅっ♡ もっと食べる?」
「舐めるな! もう要らない……エプロン結構苦しい。悠斗アイス!」
「仕方ないね。じゃ、買って来るからいい子で待っていてね?」
「やった~! 俺、イチゴ味がいい~♪」
「ここにも居たわ……デレデレしてる奴」
「本当……王子が一番キュンキュンしちゃってるわよね……」
粉物ばかりでサッパリとしたものが欲しくておねだりすると、悠斗はすぐに買いに行ってくれた。
みんなで待っていると、どこかで見た覚えのある男子学生が近付いて来る。その学生は俺達の前で立ち止まると、無表情に一人ひとりの顔を窺ってきた。
行動がどうにも不審過ぎやしないだろうか。視線を合わせないようにしていると、俺の頬を両手で包みずいっと顔を近付けニイーと不気味に笑いかけてきた。
「もう十分だろ! 着替えて色々観に行くぞ!」
「姫乃ちゃんはそのままだよ? そのほうが都合がいいし」
ニヤリと笑う悠斗が怖い。
これは逆らわないほうが良さそうだ。
「王子と姫乃ちゃん、いけない関係っぽくて絵になるわー。カメラマンが鼻息荒くしながら、カシャカシャ撮っていたよー」
「ギャラリー増えたし、そろそろ着替えてほか行こうぜ」
騒つくスタジオからそのまま裏に回ると、悠斗と多澤はテキパキと衣装を脱いで制服に着替えていく。
「村上、俺も着替えたい……」
「無理でしょ! 王子にも言われたでしょ? まぁクラスの宣伝にもなるしいいじゃない。私も付き合うわよ」
「なんか俺、色んなものを失っている気がする……」
「大丈夫よ! 私はもっと失っているわ!」
昼食がてら外の屋台に向かい、たこ焼きとお好み焼き、焼きそばを購入してから中庭のベンチで食べようということになった。
その間も悠斗はずっと俺の手を握っている。そのおかげで通りすがる度に、女子から「あの子誰なの!」「イヤーー立花くんとうとう彼女できたの!」などなど嫉妬を含んだ落胆の声が溢れていた。
「悠斗! 俺ってバレたときどうするんだよ!」
「別にバレても瀬菜は俺の恋人だから、なんとも思わないけど? はい、あーん♡」
「なぁ……昼飯なんで粉もんばっかり買ったんだよ。俺、胃もたれしそう」
「学生は食欲旺盛だからね~。腹持ちいいし、ソースの匂いでつい~」
いつも通りの昼食の風景だが、俺も村上もメイドの格好だ。
そんな訳で悠斗は大胆に密着してくる。
「しかし、姫乃ちゃん人気も凄いな。ここに来るまでに男共のデレデレ具合といったら」
「うちの看板娘だもの♪ 多澤もキュンキュンしたんじゃないの?」
「アホか。馬子にも衣装ってな。しかし……」
冷めた目で多澤が俺達を見てくる。
「瀬菜、ソース付いてる……ちゅっ♡ もっと食べる?」
「舐めるな! もう要らない……エプロン結構苦しい。悠斗アイス!」
「仕方ないね。じゃ、買って来るからいい子で待っていてね?」
「やった~! 俺、イチゴ味がいい~♪」
「ここにも居たわ……デレデレしてる奴」
「本当……王子が一番キュンキュンしちゃってるわよね……」
粉物ばかりでサッパリとしたものが欲しくておねだりすると、悠斗はすぐに買いに行ってくれた。
みんなで待っていると、どこかで見た覚えのある男子学生が近付いて来る。その学生は俺達の前で立ち止まると、無表情に一人ひとりの顔を窺ってきた。
行動がどうにも不審過ぎやしないだろうか。視線を合わせないようにしていると、俺の頬を両手で包みずいっと顔を近付けニイーと不気味に笑いかけてきた。
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