157 / 716
第5幕 噂の姫乃ちゃん
20
しおりを挟む
「はははっ……噂聞きつけたかな?」
「俺、逃げる準備していい?」
視線を交わさないように、顔を背けながら村上とこそこそする。大胆な行動をすればそれこそ注目の的になる。
「あー……残念。こっち見てるっぽいけど? そういえばネタばらしした?」
「いや、バレないと思って……クラスの奴らも俺って分かってないし、大丈夫だよな?」
「取り敢えず姫乃ちゃんは黙っていて。あっ、三浦さんこっち来た」
ニコニコと笑顔の三浦さんは俺たちのところに来ると、王子のご指名なので対応よろしくと丸投げだ。俺はともかく夏子はまんま村上な訳で、ご指名も納得せざるを得ない。
「お帰りなさいませ~。王子様と騎士様♪」
「やぁ、村上君。中々うちのクラスに来ないから、瀬菜を迎えに来たんだけど」
「や~ねぇ~! 私、夏子って名前よ? 村上君って誰のことかしら」
「全国の夏子さんに謝れ。そんだけ盛っても村上は村上だわな」
「うん、キモイの倍増だね。ウケ狙いならバッチリだけど」
「酷い! 人を化けものみたいに言わないでちょうだい! そんなお二方もなんとまぁ……凄い凝った感じで。よくその格好でここに来たわよねぇ。恥ずかしいのはお互い様じゃない」
悠斗は白い正装姿。詰襟であちこちに細かい刺繍が施され、両肩にはフサフサした良くある金色の装飾が付いている。裏の生地が赤く表が白いマントを付け、黒の膝上まであるブーツを履く姿はザ・王子という装いだ。
多澤は中世の聖騎士団のような白いベースの服で、胸当てをし白のブーツに腰には剣を下げている格好だ。一体どこで用意をしたのだろうかと、本格的な衣装に感心してしまう。
「悠斗はな。そりゃもう……失神する子出るほどに。抜けて来るの大変だったけどよ、ここに辿り着くまでに、何度剣を抜きたくなったことか……」
「雅臣が騎士役で良かったよ。騒ぎが大きくなる前にさっき対応してくれた執事の麗人が、部屋に入れてくれて助かったね?」
どうやら先ほどの騒ぎの原因は二人の出現によるものらしい。
「それで外が騒ついていたのね! 並んだかと思ってちょっとびっくりしたじゃない」
「そういうことだ。悠斗がよ、瀬菜と文化祭一緒に回れるのはいいけど、瀬菜の執事姿見れないと困る今から行こうって、うるさくてよ」
「思い立ったら我慢できなくて。丁度配った整理券分の撮影対応終わったからね。迎えに来てそのままうちのクラスで撮影もできるし、恥ずかしいけどこの格好で抜けて来たんだ。それで、夏子……瀬菜は?」
黙って三人の会話を静かに聞いていた俺は、少しずつ距離を開けて離れようとしていたが、悠斗の言葉にビクッとしてしまう。
「あ~~うん。柳ちゃんね~~」
とぼける村上から悠斗の視線は俺に向けられる。
「……ねぇ、君は僕の瀬菜を知らない?」
唐突に俺の手首を悠斗は掴み、目の前まで引き寄せた。スッと髪をすくい上げ訪ねてくる悠斗に首を横に振る。
「そっか、どこ行っちゃったのかな? なら瀬菜が戻るまで僕達とお話ししよ?」
「俺、逃げる準備していい?」
視線を交わさないように、顔を背けながら村上とこそこそする。大胆な行動をすればそれこそ注目の的になる。
「あー……残念。こっち見てるっぽいけど? そういえばネタばらしした?」
「いや、バレないと思って……クラスの奴らも俺って分かってないし、大丈夫だよな?」
「取り敢えず姫乃ちゃんは黙っていて。あっ、三浦さんこっち来た」
ニコニコと笑顔の三浦さんは俺たちのところに来ると、王子のご指名なので対応よろしくと丸投げだ。俺はともかく夏子はまんま村上な訳で、ご指名も納得せざるを得ない。
「お帰りなさいませ~。王子様と騎士様♪」
「やぁ、村上君。中々うちのクラスに来ないから、瀬菜を迎えに来たんだけど」
「や~ねぇ~! 私、夏子って名前よ? 村上君って誰のことかしら」
「全国の夏子さんに謝れ。そんだけ盛っても村上は村上だわな」
「うん、キモイの倍増だね。ウケ狙いならバッチリだけど」
「酷い! 人を化けものみたいに言わないでちょうだい! そんなお二方もなんとまぁ……凄い凝った感じで。よくその格好でここに来たわよねぇ。恥ずかしいのはお互い様じゃない」
悠斗は白い正装姿。詰襟であちこちに細かい刺繍が施され、両肩にはフサフサした良くある金色の装飾が付いている。裏の生地が赤く表が白いマントを付け、黒の膝上まであるブーツを履く姿はザ・王子という装いだ。
多澤は中世の聖騎士団のような白いベースの服で、胸当てをし白のブーツに腰には剣を下げている格好だ。一体どこで用意をしたのだろうかと、本格的な衣装に感心してしまう。
「悠斗はな。そりゃもう……失神する子出るほどに。抜けて来るの大変だったけどよ、ここに辿り着くまでに、何度剣を抜きたくなったことか……」
「雅臣が騎士役で良かったよ。騒ぎが大きくなる前にさっき対応してくれた執事の麗人が、部屋に入れてくれて助かったね?」
どうやら先ほどの騒ぎの原因は二人の出現によるものらしい。
「それで外が騒ついていたのね! 並んだかと思ってちょっとびっくりしたじゃない」
「そういうことだ。悠斗がよ、瀬菜と文化祭一緒に回れるのはいいけど、瀬菜の執事姿見れないと困る今から行こうって、うるさくてよ」
「思い立ったら我慢できなくて。丁度配った整理券分の撮影対応終わったからね。迎えに来てそのままうちのクラスで撮影もできるし、恥ずかしいけどこの格好で抜けて来たんだ。それで、夏子……瀬菜は?」
黙って三人の会話を静かに聞いていた俺は、少しずつ距離を開けて離れようとしていたが、悠斗の言葉にビクッとしてしまう。
「あ~~うん。柳ちゃんね~~」
とぼける村上から悠斗の視線は俺に向けられる。
「……ねぇ、君は僕の瀬菜を知らない?」
唐突に俺の手首を悠斗は掴み、目の前まで引き寄せた。スッと髪をすくい上げ訪ねてくる悠斗に首を横に振る。
「そっか、どこ行っちゃったのかな? なら瀬菜が戻るまで僕達とお話ししよ?」
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる