王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第5幕 噂の姫乃ちゃん

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「はははっ……噂聞きつけたかな?」
「俺、逃げる準備していい?」

 視線を交わさないように、顔を背けながら村上とこそこそする。大胆な行動をすればそれこそ注目の的になる。

「あー……残念。こっち見てるっぽいけど? そういえばネタばらしした?」
「いや、バレないと思って……クラスの奴らも俺って分かってないし、大丈夫だよな?」
「取り敢えず姫乃ちゃんは黙っていて。あっ、三浦さんこっち来た」

 ニコニコと笑顔の三浦さんは俺たちのところに来ると、王子のご指名なので対応よろしくと丸投げだ。俺はともかく夏子はまんま村上な訳で、ご指名も納得せざるを得ない。

「お帰りなさいませ~。王子様と騎士様♪」
「やぁ、村上君。中々うちのクラスに来ないから、瀬菜を迎えに来たんだけど」
「や~ねぇ~! 私、夏子って名前よ? 村上君って誰のことかしら」
「全国の夏子さんに謝れ。そんだけ盛っても村上は村上だわな」
「うん、キモイの倍増だね。ウケ狙いならバッチリだけど」
「酷い! 人を化けものみたいに言わないでちょうだい! そんなお二方もなんとまぁ……凄い凝った感じで。よくその格好でここに来たわよねぇ。恥ずかしいのはお互い様じゃない」
 
 悠斗は白い正装姿。詰襟であちこちに細かい刺繍が施され、両肩にはフサフサした良くある金色の装飾が付いている。裏の生地が赤く表が白いマントを付け、黒の膝上まであるブーツを履く姿はザ・王子という装いだ。
 多澤は中世の聖騎士団のような白いベースの服で、胸当てをし白のブーツに腰には剣を下げている格好だ。一体どこで用意をしたのだろうかと、本格的な衣装に感心してしまう。

「悠斗はな。そりゃもう……失神する子出るほどに。抜けて来るの大変だったけどよ、ここに辿り着くまでに、何度剣を抜きたくなったことか……」
「雅臣が騎士役で良かったよ。騒ぎが大きくなる前にさっき対応してくれた執事の麗人が、部屋に入れてくれて助かったね?」

 どうやら先ほどの騒ぎの原因は二人の出現によるものらしい。

「それで外が騒ついていたのね! 並んだかと思ってちょっとびっくりしたじゃない」
「そういうことだ。悠斗がよ、瀬菜と文化祭一緒に回れるのはいいけど、瀬菜の執事姿見れないと困る今から行こうって、うるさくてよ」
「思い立ったら我慢できなくて。丁度配った整理券分の撮影対応終わったからね。迎えに来てそのままうちのクラスで撮影もできるし、恥ずかしいけどこの格好で抜けて来たんだ。それで、夏子……瀬菜は?」

 黙って三人の会話を静かに聞いていた俺は、少しずつ距離を開けて離れようとしていたが、悠斗の言葉にビクッとしてしまう。

「あ~~うん。柳ちゃんね~~」

 とぼける村上から悠斗の視線は俺に向けられる。

「……ねぇ、君は僕の瀬菜を知らない?」

 唐突に俺の手首を悠斗は掴み、目の前まで引き寄せた。スッと髪をすくい上げ訪ねてくる悠斗に首を横に振る。

「そっか、どこ行っちゃったのかな? なら瀬菜が戻るまで僕達とお話ししよ?」
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