王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第4幕 盛り沢山な夏休み

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 夏といえば、スイカにかき氷、そうめんに冷やし汁。そんな夏の風物詩は耳にしただけで涼しくなれる。夏バテにはもってこいな食べ物もいいが、奔放な高校生はやっぱりイベントである。花火大会に盆踊り、怪談なんてのも涼める一つではないだろうか。
 最近すっかり定着した四人メンバーで夏のお祭りに繰り出していた。夕涼み会で用意した浴衣に袖を通し、悠斗にキッチリと着付けしてもらった。みんなそれぞれ浴衣を羽織り、お祭りモードでいつもよりテンションが高そうだ。
 日が落ち、少し暑さが和らいだ頃、河川敷で模様される花火大会。白桜駅から電車で七つほど離れた開場近くの椿川つばきがわ駅に下り立った。
 駅は早くも賑わいをみせている。興奮気味に俺はウキウキとしながら声を上げた。

「うわぁ~凄い人! なんかお祭りって感じ♪」
「本当だね……これは帰りも大変そう……」
「そんなことより悠斗、瀬菜のことちゃんと見張っていろよ?」
「確かに、絶対迷子になる気がする。柳ちゃん、迷子のときはどうするの⁇」

 多澤と村上に来たばかりだというのに迷子の心配をされてしまう。

「確実に迷子になる予測するなよ! そうなったらひとりで先に帰るわ!」
「えっ? 帰るの⁇ 危ないから駄目だよ。もしもの場合の集合場所決めておこうね」
「それ賛成だわ。この混雑じゃ電話も繋がらなくなりそうだしな」
「んじゃ、あそこのオブジェの奥の自販機辺りでどう?」

 待ち合わせ場所を決めると、人の流れに沿って開場まで歩いて行く。お祭りは人の顔を笑顔にさせるものなのかもしれない。沢山の屋台が並び活気もある。漂う匂いにくんくんしながら歩いていると、お腹がグーグーと鳴りはじめる。

「ふふっ、瀬菜さっきからお腹鳴りっぱなし」
「へへっ、匂い嗅いでいたらお腹減っちゃって」

 お腹をさする俺にどうやらみんなも同じ様子だ。花火を見ながら食べるのも悪くないと、食べたいものを見つけてはそれぞれ購入していった。
 河原で間近に見る花火もいいが、あまりの混雑に少し離れたところに陣取ことにした。そこには俺達と同じ考えの物見客がおりカップルが多めだ。イチャイチャしている感が否めないが、揉みくちゃにされながらでは綺麗なものも綺麗に見えない。
 いくつも続く階段を登ると小さな神社がある。普段は薄気味悪い神社だが、今日ばかりは賑やかだ。上までは行かずに階段の途中に座り込み、花火が打ち上がる時間までホカホカな屋台のたこ焼きや焼きそば、イカ焼きにトウモロコシを宴会のように広げていった。

「じゃが、じゃが~、じゃがバタ~♪」

 俺の好きな屋台飯はじゃがバターである。バターが熱で溶け、蒸したじゃがいもに染み渡っている。陽気に歌いながら箸をバキンッと二つに割る。そんな俺を見ていた村上が、カップに入ったじゃがバターを覗き込み食べたそうに言ってきた。
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