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第3幕 溢れる疑惑
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「初デートって!」
「あはは。二人共仲良しだね。じゃ、お会計でいいかな?」
悠斗と店員のお兄さんがどんどん話を進めていき、レジで会計をする悠斗に焦りながら、ひとりでワタワタと挙動不審になってしまう。
デートって言っちゃっていいのか?
お兄さんスルーだけど……。
本当に貰ってしまっていいのだろうかと、鏡をもう一度確認すると自分の視線と合う。ずいぶん顔が真っ赤になっている。気休めに手のひらをパタパタさせ風を送る。
「瀬菜? 顔がよく見えるようになったね。ふふっ、可愛い顔しちゃって」
「かっ……可愛くねぇし……。でも……ありがとう……大切にする」
「うん。少しカフェで休憩してから家帰ろうか」
オシャレなオープンカフェに入り、先ほどのお礼にと自分が支払う。
テラス席の端にある大きな木の日陰の席に座り、冷たいアイスティーを飲むと、喉が意外と渇いていたのを実感する。そんな俺とは対照的に、アイスコーヒーと睨めっこをする悠斗が不思議でならない。
「なぁ、飲まないの?」
「瀬菜に奢って貰ったから、なんか勿体なくて飲めない……」
真面目な顔でそう言う悠斗に呆れてしまう。
「お前バカなのか? 氷溶けてコーヒー薄まっちゃうだろ! 逆に勿体ないわ!」
正論をぶつけると、それもそうだねと言いやっとこ飲み始めた。
こいつ頭はいいのに本当なんつーか……暑いからなのか?
いや、単に俺に対してバカっていうか……。
そんなところも愛おしいなと思う自分も同類かと、苦笑いを漏らす。
「お買い物デート楽しかったね。ウサギーデートも楽しみだね♡」
「おう! なんか恋人っぽいよな!」
「ぽいじゃなくて恋人でしょ? 瀬菜は中々自覚してくれないね」
「へへっ。幼馴染が長いから、恋人ってどうしたらいいのか分からなくて」
「クスッ……もっと甘えて、ドキドキして。それからエッチにおねだりして?」
「おいおい、最後おかしいだろ」
「おかしくないよ。求められるのは、愛されているってことだし。なにかをしてあげたいって思うのも、愛があるからできることでしょ? 愛してるからドキドキもするし、触りたくもなっちゃう。瀬菜は違う?」
悠斗に言われ納得するものの、中々行動に移すのは難しい。
「……違くない……悠斗に触れたいし甘えたい。でもさ、恥かしいんだよ。俺は誰かと付き合うのだって初めてで、お前みたいに余裕ねぇし。常にドキドキしっぱなしなんだぞ……」
急に立ち上がる悠斗を見上げると、ゆっくりと顔が近付いてくる。なにかゴミでも付いているのだろうか。じっとしていると、悠斗は躊躇いなく口付けをしてきた。
放心していると、ちゅっ、くちゅと口腔を舌で愛撫される。
ちょ、ちょ、ちょっとッ! ここ外ーー!
し、舌ッ──入れるなッ‼︎
み、み、見られる‼︎
「ふふっ、焦ってる。大丈夫だよ。ほら、誰も見ていないし、人通りも少ないでしょ? まぁ……見られても俺は構わないけど♡」
「きゅ、きゅ、急になんだよ!」
「ん? 瀬菜が可愛いから、ついムラっとね。我慢できなくなっちゃった♡」
「──ッ! もう、お前知らねッ!」
顔を真っ赤にしながら腕で口を抑えて店を出る俺を、悠斗はうしろからクスクス笑い追いかける。夏の暑さのせいか、悠斗の予想できない行動のせいか、終始頬を赤らめ駅まで向かった。
電車に乗ると人の少ない車内で、恥ずかしがる俺の手を買い物袋で隠し、そっと手のひらを重ね宥めてくる。荷物で隠されているものの、背徳感に苛まれる。そんな俺に構わず悠斗は指を絡め微笑み、俺をさらに赤く染めあげていった。
「あはは。二人共仲良しだね。じゃ、お会計でいいかな?」
悠斗と店員のお兄さんがどんどん話を進めていき、レジで会計をする悠斗に焦りながら、ひとりでワタワタと挙動不審になってしまう。
デートって言っちゃっていいのか?
お兄さんスルーだけど……。
本当に貰ってしまっていいのだろうかと、鏡をもう一度確認すると自分の視線と合う。ずいぶん顔が真っ赤になっている。気休めに手のひらをパタパタさせ風を送る。
「瀬菜? 顔がよく見えるようになったね。ふふっ、可愛い顔しちゃって」
「かっ……可愛くねぇし……。でも……ありがとう……大切にする」
「うん。少しカフェで休憩してから家帰ろうか」
オシャレなオープンカフェに入り、先ほどのお礼にと自分が支払う。
テラス席の端にある大きな木の日陰の席に座り、冷たいアイスティーを飲むと、喉が意外と渇いていたのを実感する。そんな俺とは対照的に、アイスコーヒーと睨めっこをする悠斗が不思議でならない。
「なぁ、飲まないの?」
「瀬菜に奢って貰ったから、なんか勿体なくて飲めない……」
真面目な顔でそう言う悠斗に呆れてしまう。
「お前バカなのか? 氷溶けてコーヒー薄まっちゃうだろ! 逆に勿体ないわ!」
正論をぶつけると、それもそうだねと言いやっとこ飲み始めた。
こいつ頭はいいのに本当なんつーか……暑いからなのか?
いや、単に俺に対してバカっていうか……。
そんなところも愛おしいなと思う自分も同類かと、苦笑いを漏らす。
「お買い物デート楽しかったね。ウサギーデートも楽しみだね♡」
「おう! なんか恋人っぽいよな!」
「ぽいじゃなくて恋人でしょ? 瀬菜は中々自覚してくれないね」
「へへっ。幼馴染が長いから、恋人ってどうしたらいいのか分からなくて」
「クスッ……もっと甘えて、ドキドキして。それからエッチにおねだりして?」
「おいおい、最後おかしいだろ」
「おかしくないよ。求められるのは、愛されているってことだし。なにかをしてあげたいって思うのも、愛があるからできることでしょ? 愛してるからドキドキもするし、触りたくもなっちゃう。瀬菜は違う?」
悠斗に言われ納得するものの、中々行動に移すのは難しい。
「……違くない……悠斗に触れたいし甘えたい。でもさ、恥かしいんだよ。俺は誰かと付き合うのだって初めてで、お前みたいに余裕ねぇし。常にドキドキしっぱなしなんだぞ……」
急に立ち上がる悠斗を見上げると、ゆっくりと顔が近付いてくる。なにかゴミでも付いているのだろうか。じっとしていると、悠斗は躊躇いなく口付けをしてきた。
放心していると、ちゅっ、くちゅと口腔を舌で愛撫される。
ちょ、ちょ、ちょっとッ! ここ外ーー!
し、舌ッ──入れるなッ‼︎
み、み、見られる‼︎
「ふふっ、焦ってる。大丈夫だよ。ほら、誰も見ていないし、人通りも少ないでしょ? まぁ……見られても俺は構わないけど♡」
「きゅ、きゅ、急になんだよ!」
「ん? 瀬菜が可愛いから、ついムラっとね。我慢できなくなっちゃった♡」
「──ッ! もう、お前知らねッ!」
顔を真っ赤にしながら腕で口を抑えて店を出る俺を、悠斗はうしろからクスクス笑い追いかける。夏の暑さのせいか、悠斗の予想できない行動のせいか、終始頬を赤らめ駅まで向かった。
電車に乗ると人の少ない車内で、恥ずかしがる俺の手を買い物袋で隠し、そっと手のひらを重ね宥めてくる。荷物で隠されているものの、背徳感に苛まれる。そんな俺に構わず悠斗は指を絡め微笑み、俺をさらに赤く染めあげていった。
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